Updated on 2019年11月19日. Posted on 2019年11月19日

    児童手当は「大人のおこづかい」だから見直し?政府のミスをブログが指摘、その経緯は

    「財政制度等審議会」で、財務省が提出した資料に間違いが見つかった。きっかけは、日経新聞の報道を受けたネット上の指摘だ。もとをたどると厚労省の資料が誤っていたことが明らかになったが…?

    子育て世帯に配られている「児童手当」をめぐり、政府の資料に誤りがあったことが話題を呼んでいる。

    間違っていたのは、国の予算のあり方などを提言するための会議に提出されていたデータ。高所得者であればあるほど、児童手当を「大人のお小遣い」として使っていることが多いとされ、「廃止も含む見直し」の根拠にされていた。

    これに対しネット上で疑問の声が相次ぎ、結果として誤りが判明した。いったい何が起きたのだろうか?

    Yuji_karaki / Getty Images

    前提として、児童手当とは、0歳から中学校卒業までの子どもを育てている人に支給されるもの。

    3歳未満は一人あたり月額1万5000円、3歳以上は1万円(3歳から小学生までの第3子以降は1万5000円)だ。所得制限額以上の人は、特例給付として5000円が支給される。

    今回、誤りが見つかったのは財務大臣の諮問機関である「財政制度等審議会」(10月9日)の「財政制度分科会」でで、財務省が提出した資料。

    来年度の予算に関する建議を取りまとめるなかで、高所得者への児童手当廃止を含めた見直し案を提示する際、引用されていたデータだ。

    「厚生労働省の調査では、世帯年収が高いほど、児童手当が『大人のお小遣い・遊興費』などに費消される傾向がある」として、以下のようなグラフが使われていた。

    財務省はこうしたデータを根拠に、以下のような「高所得者への児童手当の給付廃止を含めた見直し」という改革の方向性の案を示していた。

    教育・保育などへの現物給付が充実していく中で、必ずしも子どものために充てられるとは限らない児童手当(現金給付)については、政策効果や公平性の観点から、使途等の実態を踏まえた所得基準や給付額見直しを検討すべき。特に、所得基準を超える者への特例給付については、廃止を含めた見直しを行うべき。

    こうした内容について、11月11日に日経新聞が高所得者の児童手当、廃止含む見直し要請 財務省と報道。

    「大人の小遣いに充てる」「使わずに残っている」の双方を合算したデータを「世帯の所得が高いほど子育てに使われていない実態が浮かび上がった」などと紹介している。

    ネット上の指摘から誤りが発覚

    児童手当を「大人の小遣いに充てる」「使わずに残っている」人は年収600万~1000万円未満で39%、1000万円以上では49%。財務省は高所得者への児童手当廃止を含めた見直しを要請します。 https://t.co/DaXygJy841

    この報道を受け、「使わないのではなく貯金では」「大人の小遣い・遊興費に当てている人があまりにも多すぎる」として、疑問や批判の声が相次いだ。あわせてネット上では、データの誤りを指摘する声も広がった。

    この資料で引用されているデータは、厚生労働省が7年前(2012年度)に行った調査の報告書をもとにしている。

    同じ資料のなかにも関わらず、表のデータの一部が文中と巻末(資料編)の2種類の表で入れ替わってしまっていたのだ。

    文中の表が正しいとすれば、たとえば世帯年収1千万円以上で児童手当を「大人の小遣いや遊興費」に充てる人たちの割合は32%から0.9%、600〜1000万円でも26.7%から0.6%と一気に少なくなる。これはほかの年収層でも同様だ。

    政府に連絡する人も

    mhlw.go.jp

    のちに修正された表(左)。誤っている表(右)と項目が入れ替わってしまっていることがわかる

    こうした点を、政府に直接連絡する人も現れた。

    ブログで一連の問題点をわかりやすく指摘し、TwitterやFacebookで1万以上シェア(BuzzSumoの計測による)されたエントリ児童手当使途の調査報告書が間違っているようなので、厚生労働省に電話しましたを書いた、おたまさんもそのひとりだ。

    「日経新聞の報道に違和感を持ち、『どのようなアンケートをとったらこんな結果になるんだろう?』という純粋な疑問を持ちました」

    都内で働く2児の母であるおたまさんは、BuzzFeed Newsの取材にそう語る。

    Twitterのフォロワーの人たちとともに、厚労省のデータに誤りがあることをまとめ、現在の児童手当の所管である内閣府に直接その点を説明したのだ。

    「これは大変な間違いなのではないか、厚労省に教えてあげないといけない、と感じました。こんなに明確なミスが報告書内にあるとは想像していなかったので、とても驚きました。一方で、国家公務員の働き方について報道や自分の友人たちから様々な形で見聞きし、このようなミスが起こること自体は理解できました」

    「厚労省が報告書のミスを見逃したことは仕方ない面もあると思いましたが、これを資料に引用した財務省、報道した日経新聞については、この数値に違和感を持つ人が誰一人いなかったのだろうか、と不思議に思いました。自分の欲しい情報(児童手当の削減・廃止という方向性)に使いやすい数字だったから、そのまま確認せずに引用してしまったのだろうか、とも感じました」

    資料は修正されたが…

    時事通信

    財務省(右)

    内閣府子ども子育て本部の担当者によると、おたまさんのような連絡は11月13日ごろから相次いでいたという。

    連絡を受け、資料はその後すぐに精査され、誤りであることが発覚。修正された。ただし、原因については「かなり古いものでもあり、原因を調べるのはなかなか難しい」(担当者)としている。

    おたまさんの元にも内閣府からお礼の連絡があったという。また、この件は財務省にも伝わり、11月15日に開かれた財政制度等審議会では改めて、修正された資料が配布された。

    新しい資料ではたしかに、「大人のお小遣い・遊興費」という項目が消えている。

    その分、もとからあった「使う必要がなく残っている」とともに、新たに「子どものためとは限定しない貯蓄・保険料」が加わっていることがわかる。

    また、説明部分も「厚生労働省による児童手当の使途についての調査では、世帯年収が高いほど、『使う必要がなく残っている』等の 回答が多い」と正しく差し代わっている。

    データは変わったのに結論は変わらず…?

    しかし、結論部分の「所得基準を超える者への特例給付については、廃止を含めた見直しを行うべき」という改革の方向性案には変更はない。

    財務省の資料で新たに強調されている「使う必要がなく残っている」という回答は、もともとの厚労省による調査では「支給後から1月末日の調査期間が終了した時点で1円以上残金がある人」を指す。

    しかも、「将来的に使う予定がある場合を含む」という括弧付きだ。厚労省はそうした人たちに対し、今後の使い道の予定についても聞いており、以下のような回答も掲載されている。

    使う必要がなく「1円以上」が残っているからとはいえ、子どものために使われていない、というわけではないことがわかるはずだ。

    おたまさんは「迅速かつ丁寧な対応に感動しています」としつつ、こう指摘する。

    「アンケートの回答者も、自分の『まだ使っていない』という回答が、将来的にこんな風に使われてしまうとは思っていなかったのではないかと感じます。議論には正確な数字と正確な表現を使っていただきたいのです」

    今後の議論は…?

    Yuji_karaki / Getty Images

    なぜ、「大人の小遣い」に充てていたという元のデータが大きく違っても、本来的な意味とは少し異なる「使う必要がなく残っている」というところ強調して「見直し」の結論を保ったままにしているのだろうか。

    財務省主計局厚生労働係の担当者はBuzzFeed Newsの取材にこう語る。

    「もともと、このデータだけを元に議論をしていたわけではありません。そもそも高所得者に対しては特例給付とされているなどの論点もあり、色々な調査報告書に書いてあるデータをもとに議論してきた経緯があります」

    「とはいえ、データが大きく変わったことは受け止めないといけない。きちんと審議の場でも説明をしました。あくまでこれは事務方の提案ですので、当然財政審で修正に応じて適切に審議されることを期待しています」

    財政審の建議は、例年11月中に取りまとめされている。誤り発見のきっかけとなったブログを書いたおたまさんは、議論に際し、こう釘を刺した。

    「今後の議論にあたっては、こうした表現の違いも丁寧に委員に説明し、扶養控除廃止や消費税増税等の環境変化も考慮にいれ、議論を進めていただきたいです」

    「財務省が基本的には高所得者向けの児童手当を廃止したいという方向性については理解していますが、その方向性に沿う数値や一部表現をつまみ食いして議論したり、それを報道させたりするのはやめてほしいと思っています」


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