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批判越え、世界的な観光地に進化していく沖縄 翁長知事が語る夢

沖縄は歴史的にもアジアを結ぶ地だった。知事が描くその将来。

日本を守る要として過酷な地上戦の舞台となり、戦後は米軍基地を引き受けてきた沖縄。それにも関わらず、米軍の事故が起きれば「自作自演」、基地に反対すれば「反日」とバッシングを受ける沖縄。

その島には、どんな未来があるのか。

BuzzFeed Newsの取材に応じた翁長雄志知事は、沖縄の世代の変化と、将来を見据えた夢を語った。

基地への関心が薄れる若い世代

「若い人たちは、圧政的だった米軍統治下も知らない。また、経済的にもある程度生きていけるという状況に生まれている。『なぜ基地があるのか』と考える機会も、だんだんと薄れているのでしょう」

12月中旬、東京都内でBuzzFeed Newsの単独取材に応じた翁長知事は、そう現状を分析した。

実際に、BuzzFeed Newsが現地の20代を取材したところ、基地問題について関心があまりなかったり、「あきらめ」を感じていたりする声が聞かれた。

たとえば、「あってもなくても、別に」「どちらかと言えば嫌だけれど…仕方ない」などといった具合に、だ。

また、政界関係者や報道関係者も、「若い人たちは、基地への関心は薄い」という声で一致していた。

「世代交代の時かもしれない」

「団塊の世代より少し下の世代までは、祖父母から自然に戦争の話を聞き、共有されて生きてきた。そうしたことを通じて、なぜ沖縄に米軍基地が多いのか、と考えていくことがあった」

「沖縄の歴史は、若者にはいつも重いんですね。時が経つにつれて、その共有はだんだんと薄れていくことになる。基地の存在そのものは変わらなかったとしても、です」

若い世代に関心を持ってもらうよう、身近である経済的な側面から「基地は経済発展の最大の阻害要因である」というフレーズを多用している翁長知事。

相次ぐデマや誹謗中傷にも、県側から対抗の情報を発信して、少しでもそれらを防ごうとしている。

ただ、基地問題への意識の低下そのものに対しては、「ある意味で、良いことだとも言えますよね」とも語った。

なぜか。これは、上の世代が抱えていた「基地問題」や「沖縄差別」に対するコンプレックスを、若者が抱えなくなったことの裏返しだと見ているからだ。

背景には、安室奈美恵さんなどの沖縄出身の若い世代の活躍や、観光産業を中心にした経済の伸びがあるという。

「負の遺産を背負わないで、沖縄がこれから発展をしていく、世代交代の時なのかもしれません。だからこそ、基地問題は僕らが解決しないといけない」

知事が目指す沖縄の姿

そんな翁長知事が基地問題解決の先に目指すのは、「グローバルな沖縄」だ。

琉球王朝時代、中継貿易国家として日本や中国、台湾、さらには東南アジアとの関係を築き上げてきた。それこそが、「沖縄の良さ」だと翁長知事は言う。

「僕らの世代が基地問題などを克服し、沖縄の良さを生かしてアジアと日本の架け橋になっていきたいと考えているのです」

成果も出ている。観光インフラ整備に伴い、アジアを中心に海外からの観光客が増加。4年連続過去最高となり、2017年では900万人越えも確実視されている。

近く、観光客数で「ハワイ超え」する勢いすらも見せているのだ。

「沖縄は日本国民の一員であるだけではなく、台湾はお隣で、中国とは600年の付き合いがある。みんなと仲良くしていかないといけない。だからこそ、架け橋になることもできる」

「そうして、アジアの様々な国の人が行き来をできるような沖縄になれば良い。どこかの国が戦争をしようとしても、自国民がいるから戦争できない、というような。平和の緩衝地帯、そんな場所にできたら良いと考えているのです」

「最後の世代」になるために

そうした理想を追い求めるなかで、米軍基地の負担に加え、浴びせられる心無いデマやバッシングがある。

翁長知事がこれまでのインタビュー(下記参照)で指摘してきたような、基地問題に対する「本土の無関心」や、経済的に基地に依存しているといった誤解など「溝の広がり」は深刻だ。

だからこそ、翁長知事はひたすらに想いを訴えていくという。

沖縄が基地に苦しめられている現状を伝え、一人でも多くの人たちが安全保障の問題を自分ごととして考えてくれるように。そうして沖縄の負担を少しでも減らし、さらなる発展と「アジアの架け橋」を目指すために、だ。

「どうやって沖縄の現状を、若い世代を含む日本国民全体に理解してもらえるのか、考えています。沖縄だけで発信しても、限界はあるかもしれない。それでも、僕らの世代がいなくなったら、こういうことをできる人たちはいなくなる」

「これからも困難は多いが、ピエロになってでも、やっていくしかありません。問題意識を持って、『誇りある豊かさを』と訴えていく。こうした“心”は、今の若い人たちにも、残せるのではないかと思っているんです」