北朝鮮の脅威は…? ノーベル平和賞の推薦めぐり、安倍首相とトランプ氏の認識に違い

    発言をめぐっては、様々な憶測が広がっていた。

    トランプ大統領の「安倍晋三首相からノーベル平和賞に推薦された」という発言について、安倍首相は2月18日の衆議院予算委員会で「ノーベル委員会の方針に則り、コメントを差し控える」と答えた。事実を否定はしなかった。

    トランプ大統領は推薦された理由について、自らの北朝鮮との交渉によって日本人が「安心安全を感じている」ためと述べていた。

    安倍首相はこの点についての見解を問われ、「安全になったという認識はまったくない」と答えた。自らの「手柄」をアピールしたいトランプ氏と、北朝鮮の脅威が続くことを強調したい安倍氏の立場の違いが浮き彫りとなったかたちだ。

    まず、経緯を振り返る

    トランプ大統領は2月15日の会見で「安倍首相の発言」に言及。

    ノーベル賞選考委員への5枚にわたる推薦状の写しを受け取ったといい、「最も美しい手紙」と評した。安倍首相が「日本を代表し、敬意を込めて推薦した」と述べたとも紹介。トランプ大統領は謝意を伝えたという。

    そのうえで「おそらく受賞はしない。それでも構わない」としながら、推薦理由について「日本上空をロケットやミサイルが飛び、警報が鳴っていた。いまでは突如として、彼らは安心安全を感じている。私がしたことだ」と述べた。

    朝日新聞は2月17日、「首相が米政府から非公式に依頼を受け、昨秋ごろノーベル賞関係者にトランプ氏を推薦した」という日本政府関係者の話を伝えている。

    読売新聞も18日、同様の報道をしており、「外交の舞台では、依頼を受けて平和賞の推薦を出すことは珍しくない」とする政府関係者のコメントを盛り込んでいる。

    安倍首相は推薦を否定せず

    2月18日の衆議院予算委員会で国民民主党の玉木雄一郎代表にノーベル平和賞の推薦について問われた安倍首相は、「ノーベル委員会は推薦者、被推薦者を50年間明らかにしないこととしていることを踏まえ、私からはコメントを差し控えたい」としながら、否定はしなかった。

    また、トランプ大統領が推薦理由を「(日本人が)安心を実感している」としたことについて、立憲民主党の長妻昭氏が「北朝鮮の核開発は続き、ミサイルも持っている。間違ったメッセージを大統領が発信されている」などと問いただすと、安倍首相はこう答えた。

    「トランプ大統領が米朝首脳会談を初めて歴史的に行った。お互いに疑念の殻を打ち破ってお互いが話し合いを始めたことは評価している。同時に、いま安全になったという認識はまったくなく、北朝鮮の脅威は依然として存在していることに変わりはない」

    ノーベル財団によると、2019年のノーベル平和賞の候補は304。うち219が個人で、85が組織だ。発表は10月にされる。