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「カップ麺は水でつくれる」警視庁の防災ツイートはなぜバズる? “中の人”が明かした熱い思い

災害時に役立つさまざまな「防災ライフハック」を親しみやすい語り口で発信し、たびたび話題を呼んでいる警視庁警備部災害対策課のTwitter。開設のきっかけは、東日本大震災で広がったデマにあった。その狙いと、日々の苦労を「中の人」に聞いた。

サラダ油を使った簡易ランプ、乾パンなどの非常食を使ったレシピ、さらには「缶切りを使わない缶詰の開け方」までーー。

災害時に役立つさまざまな「防災ライフハック」を親しみやすい語り口で発信し、たびたび話題を呼んでいる警視庁警備部災害対策課のTwitter。そのフォロワーは86万にのぼる。

開設のきっかけは、東日本大震災で広がったデマにあった。その狙いと、日々の苦労を「中の人」に聞いた。

皆さん、お持ちの非常持ち出し袋に懐中電灯は入っていますよね?一工夫してランタンに替える活用術。懐中電灯の上に水を入れたペットボトルを乗せるだけで、光が乱反射して周りを照らすことができますよ。

東日本大震災などの災害現場で木材等の撤去作業時にトゲが刺さったことがあります。そんな時に、トゲを抜く方法として五円玉などを利用しました。五円玉の穴を患部に強く押し当て、トゲを浮き出しトゲ抜きで抜くだけです。

「みなさん」と呼びかけたり、災害現場における部員らの経験を語ったり……。公的機関らしからぬ投稿は、1万リツイートを超えるなど大きな話題を呼ぶことも少なくない。

「警察は硬いイメージがありますよね。ですから、できるかぎり柔らかい、親しみのあるツイートを心がけています。ギャップが受けるところでもあると思うので……」

そう、BuzzFeed Newsの取材に語るのは、2017年から「中の人」を務める災害警備情報係長の村田尚徳警部だ。

アカウントの運用が始まったのは、2013年1月。これまでのツイートは計2500以上にのぼる。「防災意識を少しでも高めることになれば」と、身近な生活防災の知識を発信してきた。

平日は1日1ツイートを目指しており、そのために課員30人ほどで手分けをしている。20〜50代の男女という多様なメンバーが、自らの経験をもとにしたり、実際に家庭で試したりして、「ネタ探し」に努めてきた。

「たとえば、ペット飼ってる人もいますし、料理が好きな人もいれば、旅行好きもいる。子どもさんが小さい人も、親御さんの介護の経験がある人もいる。いろいろなメンバーでやっているころからこそ、多くの切り口で防災に関するツイートができるのだと思います」

ヒット作の背景に「現場経験」

数万リツイートを超えるヒット作も多い。たとえば、「水でカップ麺作りに挑戦」というツイートは3万8000リツイートされるなど拡散した。

災害時を想定して一度やってみようと思っていた『水でカップ麺作り』に挑戦!麺に味がついたカップ麺を用意し、水を注いで15分。麺は少しかためでしたが、スープもちゃんとしみ出して味もイイ感じ(驚)!試食した息子たちから「冷やしラーメンみたいでありだよ、あり!」と感想が出ました!

実はこのツイートは、機動隊員の経験に基づいたものだ。

「伊豆大島の風水害で現地に派遣された機動隊員が実際に食べていたのを参考にしたということです。西日本豪雨のときに広島県下で活動した際にも、夏で高温だったことから、水でカップそばをつくって、その状況をツイートしたことがあります」

災害現場への派遣経験のあるメンバーも多く、投稿には実体験が色濃く反映されている。たとえばこれも、そのひとつだ。

ペットボトルを使った簡易シャワーは、皆さんもご存知だと思います。今回私は画鋲を使って作成し、実際に洗髪に使ってみました。(…)取扱いが簡単で災害時に重宝し、平時は植物への水差しとしても使える優れものです。

「水道が使えないような災害現場で限られた水をできる限り有効に使うため、災害対策課の特殊救助隊員や機動隊員が実際に手洗いや洗髪用として使ったものを紹介しました」

村田さん自身も機動隊時代に熊本地震の現場や西日本豪雨の現場を踏んでいる。生の知識がユーザーに共有されるのも、警視庁災害対策課のアカウントならではの特徴と言えるだろう。

もし、デマが広がったら

こうした戦略が奏功し、村田さんが担当してからの4年で、フォロワーは4倍以上になった。目下、100万人を目指している。

「フォロワーが多ければ多いほど、情報は拡散しやすくなります。有事の発信ツールとして『武器』にできるよう、もっとフォロワーを増やしていきたい。そのために、平時に防災情報の発信を続けてるんです」

アカウント開設のきっかけは、東日本大震災でSNSや「チェーンメール」を通じたデマなど、不正確な情報が多く飛び交い、混乱を招いたことだった。

「災害が発生した時に、警察として必要な情報、正しい情報をタイムリーに送り届けたい。そこで、災害発生時においても比較的通信が容易とされるSNSの中で、特に拡散力のあるツイッターを選びました」

災害時にデマが拡散する例は、枚挙に暇がない。2016年の熊本地震では、「ライオンが動物園から逃げた」というデマが不安を広げた。

今年2月に東北地方を襲った最大震度6強の地震でも、在日コリアンが「井戸に毒を入れている」などとする、関東大震災時を彷彿とさせるような差別的なデマが散見された。

このような現状を村田さんも問題視しており、仮に首都を大きな災害が襲った場合には、デマ拡散を防ぐためにも、公式Twitterを活用したいと考えている。平時の防災情報の発信は、いわばそのための備えとも言えるのだ。

「震災のときにはどうしても誤った情報、デマ情報が流れてしまう。そうしたものに振り回される人を減らすために、警視庁が持っている情報で打ち消すことができれば、と思っています」

「情報の備え」のススメ

災害時に誤情報に翻弄されないために、どうしたら良いのだろうか? 村田さんはこうアドバイスする。

「災害の混乱のなかでも、情報の発信元や真偽を確認するなど、冷静な行動に努めることが大切です」

「平素から情報収集方法について準備しておくと良いと思います。いざ地震などの災害が起きたときにいろいろ検索するよりも、事前に関係機関をブックマークしておけば、必要な情報を集めやすくなります」

防災アプリのインストールや、緊急情報に関するプッシュ通知の確認、さらに停電時や外出先での被災に備えたモバイルバッテリーの準備も大切だという。

最後に、村田さんは「Twitterの運用に苦労はしてるんですけれども、ある意味楽しんでいるところもある。課員やその家族らの力作ぞろいいですので、ぜひ気軽に読んでいただき、少しでも役に立つものがあれば大変ありがたいです。いいねやリツイート、フォローは励みになります」と話した。

警視庁のサイトには、過去の「ベストツイート集」がまとめられている。「生活・暮らし」「健康・医療」「グルメ・食品」などの分野別に整理されているので、もしもの時にも参考になる。

普段からチェックしておくことで、村田さんが強調する「情報の備え」を心がけたい。

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