籠池氏、8ヶ月もの長期勾留に「人質司法」との批判も

    あの証人喚問から、1年が経った。

    学校法人・森友学園への国有地売却をめぐる、財務省の決裁文書改ざん問題。

    学園の元理事長・籠池泰典被告の証人喚問からちょうど1年の3月23日、野党議員が籠池被告に大阪拘置所で接見した。

    2017年7月末以来、「異例の長期勾留」が続いている籠池被告。その口から8ヶ月ぶりに飛び出した言葉は何だったのか。

    籠池・元理事長が語ってきたこと

    籠池被告は、2017年3月の証人喚問や会見などで、土地取引をめぐる「財務官僚による忖度」の存在を指摘していた。

    土地取引について相談していた当時の安倍昭恵夫人秘書・谷査恵子氏から「財務省に問い合わせし、昭恵夫人にも報告した」とのFAXが送られてきて以降、土地取引がスムーズに進むようになったと主張し、「神風」と表現している。

    「非常に瞬間風速のはやい神風が吹きました。このFAXがあったことによって、次の土地の関係取得の方向がなんとなく進んでいった気がしております」

    「安倍首相あるいは昭恵夫人の心を忖度して、財務省の官僚の方々が動いてきたのではなかろうかなと思っております。ただ、忖度は悪いことではない」

    そのほか、自らを「安倍総理の大ファン、大熱望者」としながら、「安倍首相から100万円の寄付を受け取った」とも繰り返し訴えてきた。

    しかし、7月31日に補助金を不正受給した疑いで詐欺容疑で逮捕、その後起訴された。籠池被告は逮捕前、これを「トカゲの尻尾切り」「国策捜査」と批判している。

    長期勾留の問題点は

    それから、8ヶ月近く。弁護人以外は、家族も接見ができない「異例の長期勾留」が続いている。そのため、夫妻の様子や発言は一切、伝えられていない。

    こうした状況には、識者らから「人質司法」との指摘もあがっている。

    犯罪を否認する被告を、「証拠隠滅のおそれ」などを理由に、勾留し続ける方法。日本の司法制度の問題点として、かねてから批判されてきた。

    元検事の郷原信郎弁護士は自身のブログで、その問題点を簡潔に解説している。

    日本では、犯罪事実を認めた者は身柄を拘束されないか、拘束されても早期に釈放されるが、犯罪事実を否認する者、無罪主張をする者は、勾留が長期化し、保釈も認められず、長期間にわたって身柄拘束が続くという「人質司法」が、当然のようにまかり通ってきた。

    起訴されたら、検察官の主張を丸ごと認めない限り、自由の身にはなれない。そのため、意に反して自白し、事実を認めざるを得ない、無罪主張を行うこともできない、ということになり、それが、多くの冤罪事件を生んできた。

    野党側は、公文書改ざんなどの新事実が明らかになったことを踏まえ、当事者である籠池被告の主張を聞き取りたい、として接見を求めてきた。

    拘置所前では、籠池被告の早期解放を求める抗議活動も開かれていたこの日。議員たちに許された接見時間は、45分間だった。

    その口から出たことは…?

    この日、接見を終えて会見した野党議員によると、籠池被告は「元気そうなようす」だったという。

    そのうえで、土地取引について「貸付のときも含めて、逐一、昭恵夫人には状況の報告をしていた」と語ったほか、「(小学校の)棟上げ式にも必ず行きますからね、という話はいただいてた」と述べたという。

    また、改ざん前の決裁文書に、籠池被告の言葉を引用して昭恵夫人の発言として書かれていた「いい土地だから前に進めてください」という言葉についても、「たしかにそうおっしゃっていた。間違いない」と答えたという。

    接見した希望の党の今井雅人議員は、「籠池さんの話がどれほど事実かも含めて、昭恵夫人に話を聞かなければいけない。また、当然(夫人秘書だった)谷さんとも密接に連絡をしていたので、お話を伺いたい」と述べた。

    一方で新事実については「収穫はあった」とし、詳細は明かさなかった。

    野党議員による接見は、3月26日にも予定されている。翌27日に国会で開かれる佐川氏の証人喚問を皮切りに、追及を強めようとしている野党は、昭恵夫人のほか、今井尚哉首相秘書官の証人喚問も求めている。


    BuzzFeed Newsでは【逮捕された籠池氏がこれまで語ってきた7つのこと】という記事も配信しています。