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最悪の結果を招いた民進党の前原代表が語ったこと

民進党は消滅し、政権交代どころか、自民党は圧勝した。その決断は、最悪の結果を招いた。

安倍政権を倒すはずの決断は、最悪の結果で終わった。

東京・永田町の民進党本部、10月23日午前0時15分。投票が締め切られて4時間ほどすぎ、前原誠司代表の会見は始まった。

報道席には、空席が目立つ。硬い表情の前原代表から冒頭発言はなかった。記者からの「責任の取り方は」という質問から会見は始まった。

「投げ出すことは簡単だ」

そもそも、前原代表は「安倍政権の一強体制ではなく、二大政党制」を目指す立場から、小池百合子都知事が立ち上げた「希望の党」との合流を決断した。

候補者は希望の党に一本化。前原代表は無所属として出馬し、参議院議員がいるために民進党の組織は残すーー。そんな構想だった。

民進党議員の両院議員総会でその案が了承された9月28日には、その顔には笑みと安堵感が浮かんでいた。

しかし、希望は長くは続かなかった。

小池知事が民進党出身者を「安全保障や憲法観」で選別し、「リベラル派を排除する」と発言。民進党内だけでなく、支持母体の連合からも非難の声が上がり、傲慢だと一気に逆風が吹いた

そして、枝野幸男氏が「リベラル派」の受け皿をつくるべく「立憲民主党」を立ち上げ、「筋を通した」という評価はこちらに集まった。

小池知事の発言はその後も尾を引いた。民進党から希望の党へ合流した議員は落選があいついだ。希望の党は政権交代どころか、立憲民主党を下回り、野党第1党にもなれなかった。

会見では、そうした一連の責任を問う声が相次いだ。前原代表を「戦犯」と指摘する厳しい表現を使った記者もいたほどだ。

「非常に厳しい結果だと思いますし、真摯に受け止めたい。そのうえで、身を投げ出すことは私の責務ではないと考えている」

「投げ出すことは簡単だ。私はずっと居座ろうとは思っていません。辞任をするということは当然。今すぐ辞めるではなく、民進党の新たな方向性を決め、責任を取る」

「再来年の参議院議員選挙をどう乗り越え、どう次の衆院選につながる足がかりにできるのか。反省、責任を痛感しながらも、一定の方向をつくることが民進党代表としての役割だと考えています」

今後の民進党の方向性を決めてから辞める。そう明言した。

潮目はどこにあったのか

今回の敗因は、どこにあったのか。前原代表は「一時期は期待が高まっていたが、いくつかの潮目が変わることがあった」と説明した。潮目とは何か。

「ひとつは、まず、事実でない、誰が候補者から外れるかというリストが流れたこと。これが疑心暗鬼を極めて大きくした」

「それと同時に、政策協定書に『踏み絵』という言葉が使われたが、これは希望の党側から言われた原案だった。安保法制については修正し、(民進党が掲げる社会政策)『All for All』の項目を設けたが、原案があたかも小池さんが示したもののようなイメージが定着したのも、大きな要因だった」

イメージが問題だったという分析だ。

「排除」や「踏み絵」という強烈な言葉が拡散し、「一強体制からの政権交代を」「外交安全政策は現実主義、内政は自民党とは違う考え方を」という訴えは霞んだ。

設立したばかりの希望の党は、民進党の150億円とも言える政党交付金に目をつけたのではないか。小池知事に「騙された」のではないかーー。

そんな質問も飛び出したが、前原代表はこう否定した。

「お金についてはこれから、どうしていくかということは議論をしていく。小池さん側は『一切協力はいらない』とおっしゃっている。今後のことについても、政党助成金についての話をしていることは全くない」

「『排除』についても騙されたわけではない。口裏合わせでもなく、私の努力不足。力不足です」

「新たな選択肢」は諦めない

反省と責任を強調しつつ、選択が「間違っていた」とは語らなかった。

「解散になったときに、どういう選択肢があるのか、悩みに悩みました。人生のなかでこれほど悩んだことがないほど、悩みました」

「共産党との野党共闘に対する反対の声は多く、それを選べば民進党が空中分解する可能性があった。離党者も相次ぐ中で、私がとったのは希望の党への合流だった」

「この世界には『たられば』はありません。突っ込んだときには、間違いないと思っていた。今回は新たな展開、党名ではない『希望』に賭けたのです」

前原代表が会見で強調したことが、もう一つある。以前から訴えてきたことだ。自民党・安倍政権を倒す。それを諦めるわけではない、という。

だが、構想は大きく変える必要がある。こう語った。

「私が従来申し上げてきた、『希望の党を中心にした大きな塊』は見直さないといけない。それでも、一強多弱をどう打ち破るか、二大政党制にチャレンジしていく。どういう形が一番良いのか、いろいろな話を伺いながら方向性を定めていきたい」

希望の党を安倍政権を倒す勢力の中心とする。その構想はあっさりと崩れた。

この日、フランス・パリに出張中だった小池知事とは電話し、自身の希望の党への合流と「二大政党制を作るために頑張っていく」ことを再確認したという。

希望の党は厳しい船出となったが、民進党勢力を再結集することは「有権者を愚弄することになる」と否定した。

「新たな選択肢をつくるということは批判があっても、揶揄をされても、この道は進んでいきたい。民進党が希望、立憲民主、無所属のグループに分かれたなかで、ベストなやり方を考えていきたい」

そのために、参議院の民進党議員や地方組織、支援者の声を集めていくという。

今回は「チャレンジ」だった

選挙の直前に野党第一党が解体され、それまで違う主張を唱えていた政治家たちが離合集散を繰り返す。こうした一連の流れが、政治への失望を招くのではないだろうか。

BuzzFeed Newsの質問に、前原代表はこう答えた。

「新たなものにチャレンジするというのは、いろいろな作用・反作用があると思います。うまくいく時もあれば、うまくいかない時もある」

「それを恐れて何もチャレンジしなかったら、民進党のままで野党共闘で突っ込んでいったら、空中分解していた」

「したがって、この道を選んだ。しかしそのことによって、新党が短期間でできて、候補から漏れた方もいるという、有権者にとってどう受け止めていいかわからないことが起きてしまった。こうした結果の責任は、重く受け止たい」

では、そうした有権者や支持者たちの信頼を、どう回復するのか。

「賛否両論はあるが、一強多弱を壊す、二大政党制をつくるという大きな流れには理解をしている方はいる。私は立ち止まらない。行動でしかすべて見せられませんから、そういう姿勢を見せていく」

「あらたな日本の民主主義、緊張感をもたせるための、二大政党制にチャレンジしていくことを、これからも目指していきたい」

その顔に、ひと月前の笑顔と高揚感は見えなかった。