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朝鮮学校は「スパイ養成的なところも」ラジオ発言で番組削除、BPO申立へ 「ヘイトクライム煽動」の懸念も

問題視されているのは、ゲストだった経済評論家の上念司氏が北朝鮮のミサイル問題に関して触れる際の発言。関係者は在日コリアンを狙ったヘイトクライムが相次いでいるなか、こうした発言が「攻撃を煽動」すると批判している。

MBSラジオ(大阪市)で2月に放送された番組内で、朝鮮学校に対して「スパイ養成的なところもあった」などという発言があったことが、わかった。

MBS側は在日本朝鮮人人権協会側の抗議を受けて、サイト上と放送内でお詫び。PodcastやYouTubeに配信されている番組も16日までに削除されたという。

一方、協会側は、「深刻化しているヘイトクライムをさらに扇動する危険がある」と指摘しており、今後、放送倫理・番組向上機構(BPO)にも人権侵害の申し立てをする方針としている。

問題となったのは2月21日の『上泉雄一のええなぁ!』の番組内における発言。

ゲストだった経済評論家の上念司氏が北朝鮮のミサイル問題に関して触れる際、朝鮮総連の「締め付け」の必要性を強調しながら、朝鮮学校の教育方針などにも言及。そのなかで、以下のように述べている。

「公的助成なんてとんでもない話だし。さらにここのOBがね、日本人の拉致に関わってたりとかするわけですよ、スパイ養成的なところもあったりとか、こういうの、やっぱガチで査察を入れたりとかね」

これに対し、弁護士ら専門家や研究者でつくる「在日本朝鮮人人権協会」の関西地方の組織が3月3日、MBSに質問状を送付。

「在特会」による「朝鮮学校襲撃事件」の民事裁判(京都地裁判決)で、「ここは北朝鮮のスパイ養成機関」という同様の発言が「社会的評価たる名誉を著しく損なう不法行為」と認定されたことにも言及し、以下のように非難した。

「朝鮮学校に通う生徒をはじめ在日朝鮮人の人権を脅かし、またそれを扇動するような、到底看過できない発言であり、ましてそれが個人ではなく公共性の高い民間放送局の番組においてなされたことは、その社会的影響から極めて重大な問題がある」

これを受け、MBS側は3月10日の放送でお詫び。同日中に以下のようなお詫び文がサイトに掲載されたほか、PodcastやYouTubeの配信からも「スパイ養成的なところもあったり」という発言部分が削除された。

「朝鮮学校に現在通学されている児童・生徒の皆さんに対する 配慮の足りない表現がありました。 リスナーの皆さんに誤解を招くような表現となっていましたので、その点につきまして、 児童・生徒の皆さん、リスナーの皆さんにお詫びを申し上げます」

また、MBS側は協会の質問文に対し、「当社といたしましては、上念氏の当該発言は『子どもたちの人権を守ること、子どもたちを巻き込まないことが重要』という論旨においてなされたと捉えております」と3月14日に文章で釈明。

そのうえで、「『過去にそういう側面があった』という趣旨での発言だったと理解している一方で、現在もそのような要素があると受け取られかねない、誤解を招く発言であった」「一部配慮が欠ける表現」などともした。

相次ぐ「ヘイトクライム」への懸念も

こうした回答について、人権協会側は3月15日付の文章で、「主張は到底首肯しうるものではない」「対応として不誠実かつ不十分なもの」と批判している。

在日コリアンを狙ったヘイトクライムは、相次いでいる。昨年には、北朝鮮のミサイル発射問題と関連し、朝鮮学校への嫌がらせや生徒への暴行事件も発生。

また、京都府宇治市のウトロ地区や名古屋市の韓国学校、大阪府茨城市コリア国際学園を狙った狙った放火事件なども連続して起きている。

在日本朝鮮人大阪人権協会の文時弘事務局長はBuzzFeed Newsの取材に対し、こうした「攻撃を煽動するもの」と、番組中の発言を批判した。

「在日朝鮮人に対する攻撃や差別・ヘイトを扇動する、犬笛のような内容と受け取らざるを得ない。ヘイトクライムがどんどん深刻化しているなかで、こうした放送がされれば、さらに子どもたちがターゲットとされる危険もある。悪い影響が非常に大きい」

「社として明確な謝罪があったわけでもなく、今後繰り返すことになってはいけないので、BPOに人権侵害の申し立てをし、審議いただきたいと考えています。MBSに対しても、誠実な対応を求めていきたい」

一方、MBSの広報担当は「ヘイトには当たらないとは考えているか、誤解を招き配慮に欠けたという認識でお詫びしました。今後もていねいに対応していきたい」とコメント。

なお、お詫び文は10日深夜にサイト上から「子どもたちや関係者への二次被害を防ぐため」に削除されたが、「まだ十分周知されていないと考え」として改めて掲載されたという。

また、当初は当該発言部分だけの削除だったが、その後16日までに、番組そのものを配信先から削除されたという。

UPDATE

見出しおよび前文の発言抜粋部分を修正いたしました。