【熊本地震】伝わらない被災地のいま このVR動画があなたの心を動かす

    傷ついた故郷のために。

    熊本地震が発生して、2カ月半。まだまだ「復興」していない故郷を助けたい。そして、知ってもらいたい。

    でも、どうやって?

    周囲360度の風景を映し出し、まるで、自分が現場に立っているかのように感じる「VR」。その技術を使って被災地を様子を伝えようと、ひとりのプロデューサーが立ち上がった。

    VRだからこそ伝わるもの

    「VRだから、臨場感が全然違います。現状もしっかり伝わります。『え、こんなにひどい状況なの?』と思ってもらえるはずです」

    そう説明するのは、熊本出身の企画プロデューサー北川義樹さん(31)だ。

    北川さんが発案したのは「VR Donation」。被災地で撮影した360°動画をVRキットで見てもらい、さらに募金もしてもらう、というプロジェクトだ。

    仕組みは簡単だ。スマホで横にあるQRコードで動画を読み込み、専用の簡易キットに差し込んで再生するだけ。

    「たとえばフェスなどでブースを借りて、そこにキットを並べるイメージですね。自分が見た被災地区を支援できるよう、募金先も動画ごとに変えていくことができればと思っています。募金も確実に増えるはずです」

    これを

    こうする

    伝わっていないもどかしさ

    北川さんがVRを使って、被災地を伝えようとする理由。それは、変わり果てたふるさとが「伝わっていない」という、もどかしさにあった。

    7歳から22歳まで過ごした熊本を久しぶりに訪れたのは、震災の2カ月あと。6月に入ってからだ。

    東京で見聞きしていた被災地とはまるで違う、「街全体が破壊されてしまった」状況に唖然とした。「復興なんてしていないじゃないか、ぜんぜん報道されていないじゃないか」。そんな思いが募った。

    「想像以上の破壊状況を見て、少しでも熊本の外の人に、報道や数字だけじゃわからない本当の状況を伝えようと思ったんです」

    ちょうど360°動画を活用し始めていたばかりだった。プロデューサーの自分にできることは、伝えることしかない。すぐ、撮影を始めることにした。

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    興味を、関わりに変える

    「動画はバズったし、シェアもされて、多くの人に被災地の状況を知ってもらえたと感じています」

    2度の震度7に見舞われた益城町を撮影した動画は、Facebookで再生回数が30万回を超えるなど、大きな反響を呼んだ。

    「でも、興味を持った人たちの多くは、その後の関わり方がわからないはず。だったら、今度はその次のステップをつくらないといけないと思ったんです」

    そこで考えついたのが、動画を使ったVRと募金のコラボレーションだ。

    募金を呼びかけるとき、問題を訴えるパネルやチラシはあったとしても、それって本当に伝わっているのだろうか?もっともっと、募金する側が「関わりたい」と思えるような仕組みって、つくれないんだろうか。

    アイデアの根底にあったのは、北川さんが前々から抱えていたそんな問題意識だった。

    何をしていいか、わからない人たちへ

    「熊本地震だけではなく、どんな募金活動にも活用できるパッケージだと思っています」

    そう話す北川さんは、「被災地のいま」をできる限り記録しておこうと、熊本と東京を往復する日々を送っている。

    国重要文化財の楼門が倒壊した阿蘇神社を支援することも決まり、すでに撮影が終わっている。同じように大きな被害を受けた熊本城とも連携できないか、熊本市などと話し合いを進めているという。

    「熊本は遠くてなかなかいけない、何かしたいけど何をしていいかわからない。そんな人たちが『VR donation』を通じて被災地の現状を知って、募金という形でも、関わりを持ってもらえればと思っています」