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北朝鮮ミサイル発射で中学生に因縁、電車内で暴行…「日本から出ていけ」と電話も、朝鮮学校にヘイト被害相次ぐ。法務省に対策を緊急要請

在日コリアンへのヘイトクライムは、各地で相次いでいる。京都や大阪、名古屋ではウトロ地区や韓国学校などを狙った放火事件が発生。東京朝鮮学校ちかくのJR赤羽駅では差別・脅迫落書きも見つかっていた。北朝鮮のミサイル発射後には嫌がらせや脅迫、暴行事件も起きたという。

在日コリアンに対する憎悪感情をもとにした「ヘイトクライム」が相次いで起きていることを受け、専門家や当事者らが10月18日、法務省に被害を訴え、声明の発出や啓発などを含めた具体的行動を起こすよう緊急要請した。

2021年から今年にかけ、各地で在日コリアンを狙った放火事件などが連続して起きたほか、今月の北朝鮮による弾道ミサイル発射後には、朝鮮学校への嫌がらせや生徒への暴行事件も発生した。

法務省の担当者からは「差別を許さない気持ちは同じ。対応を検討します」との話があったという。面会後に開かれた会見では、実際の被害や実態などの状況が伝えられた。

(注:事件の実相を伝えるため、この記事には差別表現が含まれます)

在日コリアンへのヘイトクライムは、各地で相次いでいる。

昨年7〜8月には犯行当時22歳の男が京都府宇治市のウトロ地区や、名古屋市の韓国学校などで連続放火事件を起こした(京都地裁で懲役4年の実刑判決が確定)。

さらに今年3月には大阪府茨木市のインターナショナルスクール「コリア国際学園」でも、犯行当時29歳の男が放火事件を起こしている。

双方の事件とも、在日コリアンへの嫌悪感を根底に、その排除を煽ろうとした「ヘイトクライム」であることが明らかになっている。

また、10月4日の北朝鮮による弾道ミサイル発射と「Jアラート」発令後には、ネット上でのヘイト書き込みや、朝鮮学校への嫌がらせ電話、生徒への暴行・暴言が相次いで起きた。

外国人人権法連絡会の調査では、Twitterには「朝鮮人を迫害しろ」「強制送還な」「在日朝鮮人を人柱に吊るし晒しておけ」などという書き込みが確認されたという。

電車内で因縁、暴行も

全国朝鮮学校校長会の集計では、東京をはじめとする全国6つの朝鮮学校で、11件の暴行・暴言・脅迫事件が発生。すでに警察に相談、被害届を提出した事案もあるという。

その報告によると、発射当日の夜には、JR埼京線車内で東京朝鮮学校の中級部生徒が「お前、朝鮮学校の生徒だろ」と50代とみられる男性に因縁をつけられた。

生徒が無視をすると「答えろよ」と足を踏む暴行を加えながら、「日本にミサイルを飛ばす国が高校無償化とか言ってんじゃねーよ」などと暴言を吐かれたという。その後、警察に被害届を提出した。

また、同じ日、神戸の朝鮮学校には「あんたの国、何してくれてんねん。日本から出ていけ」「日本で法が整備されたらお前らの施設を破壊したる」という脅迫電話があった。

ほかの学校にもミサイルに関する抗議電話や嫌がらせが寄せられたケースがあったという。

東京では、東京朝鮮中高級学校近くのJR赤羽駅で9月9日、「朝鮮人コロス会」という差別的脅迫の落書きが見つかった。高校3年の男子生徒が発見した。

「ただらぬ恐怖を感じた」

この日の要請では、朝鮮学校関係者や弁護士ら専門家でつくる「外国人人権法連絡会」のメンバー、支援者らが法務省人権擁護局の担当者に面会。前述の調査結果や報告を提出した。

そのうえで、「さらなるヘイトクライムが現実に起こりうる危険な状態で、子どもたちは恐怖にさられています」などとして、国や地方公共団体による声明の発出や啓発、具体的行動を強く求めた。

また、赤羽駅で落書きを見つけた生徒の「誰かが本当に自分の命を狙っているのかもしれないと、ただならぬ恐怖を感じた」などと思いをつづった手記の一部も法務省の担当者に提出した。手記には、こうも書かれていた。

「生まれた頃から在日朝鮮人としていろんな差別を受けてきたし、迫害を受けてきたが、このようにコロスという字を自分の目で見るのは初めてだった。今までとは比べ物にならないくらいの恐怖感を抱いた」

面会後の会見では、要請に参加した東京朝鮮学校中高級部教員の鄭燦吉さんが「私たちがいま心配しているのは、児童生徒の身辺、命です」と思いを語った。

鄭さんによると、2017年の弾道ミサイル発射時にも、駅で生徒の背中が押される事案や、嫌がらせ電話が相次いぎ、警察に相談をしたことがあったという。

ネットの書き込み、暴力に直結

今回は暴行事案も起きたこと、各地でもヘイトクライムが相次いでいることを受け、これ以上の「エスカレート」を防ぐためにも、法務省への緊急の要請に至った。

提出された全国朝鮮学校長会の報告では「児童・生徒たちの日常の教育、生活とは、一切関係のない事柄に対し、攻撃を受けることは、筋の通らない理不尽な腹いせでしかありません」としている。

この日の要請では、ネット上のヘイト書き込みに対する対策も、同様に要請したという。

ウトロなど連続放火事件や、コリア国際学園を狙った事件では、それぞれ犯人の男がネットを情報源とし、デマなどを信じ込んで犯行に及んだことが明らかになっている。

外国人人権法連絡会の師岡康子弁護士は「ネット上には露骨に差別を扇動する書き込みが相次いでおり、暴力に直結しているケースもある。法務省のTwitterで発信するなどの対応もぜひとってもらいたい」と述べた。

師岡弁護士によると、法務省の担当者からは「差別を許さない気持ちは同じ。十分に受け止め、対応を検討します」との話があったという。