日本の子どもの貧困の「先進国として恥ずかしい現状」。対策に向け「こども宅食議連」が設立

    「こども宅食」はいわゆる「アウトリーチ型」の福祉支援。低所得世帯の子どもたちの家に直接、無料で食料を届ける仕組みだ。日本の子どもの7人に1人が相対的貧困という状況のなか、新たなセーフティネットとして期待されている。

    NPOが中心に実施してきた貧困世帯の子どもたちの家庭に食料を直接届ける「こども宅食」。その推進を目指す議員連盟が8月27日、自民党の有志64人によって設立された。

    2021年度予算での関連費の増額を目指す方針。この日、参議院議員会館で設立総会が開かれ、会長となった自民党の稲田朋美衆議院議員が「恒久的な制度にしていきたい」と語った。

    日本の子どもの相対的貧困率(2018年)は13.5%、7人に1人で、ひとり親世帯の貧困率は48.1%とさらに高い。新型コロナウイルスの影響で「こども食堂」における支援が難しくなっている現状もあることから、対策を急ぐ考えだ。

    「こども宅食」はいわゆる「アウトリーチ型」の福祉支援。その名の通り、低所得世帯の子どもたちの家に直接、無料で食料を届ける仕組みだ。

    生活必需品の食料を直接届ける支援であるゆえ、実態がわからず支援の届きにくかった「見えない貧困世帯」(グレーゾーン世帯)とつながることができるほか、そうした世帯の状況を直接把握し、適切かつ継続的な支援を講じる糸口にもなることから注目されてきた。

    プロジェクト自体は2017年、東京都文京区ではじまった。認定NPO法人フローレンスやNPO法人キッズドア、村上財団、文京区などの7団体がコンソーシアム(共同事業体)としてその運営を担っている。

    文京区では、児童扶養手当や就学援助、子どものいる生活保護受給世帯を対象に食料を2ヶ月に1回、届けてきた。ふるさと納税を主な財源にしており、協力団体から提供された飲料や米、レトルト食品、お菓子などを配送してきた。

    この取り組みは全国に拡大しており、2020年8月4日時点では宮城や京都、新潟や熊本、沖縄など全国13地域で運用が始まっている。

    「新たなセーフティネット」にまた、今年度の二次補正予算でも「支援対象児童等見守り強化事業」として31億円が計上された。議連では制度の恒久化や拡大のため、来年度の本予算で増額を目指していく方針だ。

    「新たなセーフティネット」に

    議連は稲田議員と木村弥生衆議院議員、長島昭久衆議院議員らが発起人となって設立。

    その趣意書では、児童虐待の相談件数が増えていることに加え、「ひとり親の貧困率はOECD33か国中最下位」であることを「先進国として恥ずかしい現状」と指摘。

    新型コロナウイルスの影響で「こども食堂」のような通所型支援が難しくなっており、こども宅食のようなアウトリーチ型の支援が重要であるとして、「制度を推進し、日本の子育て家庭のための新たなセーフティネットの木を育てていく」としている。

    この日の総会では、稲田議員が新型コロナウイルス感染拡大の影響でひとり親などが影響を受けていることに触れながら、「議連をつくることで、本格的な、恒久的な制度にしていくため、地方議員や首長とも連携をしていきたい。地方地方にあったこども宅食のやりかたを模索していく」と語った。

    また、稲田議員とともに発起人となった木村議員は「ご飯を届けることで終わりではなく、見守りをすることで児童虐待のリスクや若年妊娠、精神疾患などの状況を把握し、より適切な自立支援をするのが最終的な目標」と述べた。

    NPOフローレンスの駒崎弘樹代表理事は講演で、こども宅食の課題でもある点として「予算の確保」を第一にあげ、さらに「食品ロスなどの寄付を企業がしやすくする法律」や「政府の備蓄米をセーフティネットとして活用」が有効であるとも訴えた。

    また、配達先の家庭の問題に対応を柔軟にしていくために、「民間団体、自治体・児童相談所などの情報連携」がより必要になると訴えた。

    総会には文京区の成澤廣修区長も参加し、運用自治体として、ふるさと納税を用いたその実施事例を報告。駒崎理事とともに、参加した議員らと「なぜこうした支援が必要なのか」という背景や課題についてディスカッションを交わしていた。議連では今後、勉強会を開催し、提言をまとめていく方針だ。


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