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「このままじゃ息子が死んでしまう」1歳児が“クッキー”で窒息、母親はパニックに… もしものときの応急処置とは?

食べ物やおもちゃなどを誤嚥し、窒息してしまう死亡事故は、小さな子どもに多い。もしもの時、どのような対処をすれば良いのか。ある女性の体験談から、窒息のサイン、そして「背部叩打法」や「腹部突き上げ法」などの応急処置を紹介する。

節分のシーズンになると毎年注意喚起される、子どもの誤飲・誤嚥による窒息事故。

14歳以下に限ってみると、過去5年で125件の死亡事故が起きており、決して珍しい出来事ではない。

「いつ、誰に起きてもおかしくない」。1歳の子どもが窒息し、なんとか助かった事故を経験した女性に、話を聞いた。

「本当にあと少し遅かったら、息子は死んでしまっていたんじゃないかなって……」

そうBuzzFeed Newsの取材に語るのは、つい先日、1歳のひとり息子が喉に「歯固めクッキー」を詰まらせた横浜市の女性(20代)だ。

「応急処置の方法だって頭に入れていたはずなのに、頭は真っ白になってしまって……。もし自分ひとりで家にいたときだったら、対処できていたのかはわかりません」

事故が起きたのは、友人やその子どもたちと「ママ会」をしていた、ある昼下がりのこと。離乳食を食べさせたあとも食べ物をねだる息子を横に座らせ、市販の「歯固めクッキー」(対象月齢9ヶ月)を舐めさせていた。

ふと友人が「あれ?○○ちゃん?」と名前を呼んだ。息子を見れば、苦しそうにえずいている。ひと目で、喉にものを詰まらせていることがわかった。声もまったく出ておらず、よだれが口から溢れ始め、顔はみるみる真っ青になっていった。

偶然にも、同席していた友人たちは看護師と保育士だった。2人はすぐに息子を抱き上げ、「背部叩打法」による応急処置をはじめた。一方で女性は、「このままじゃ息子が死んでしまう」と、パニックになってしまっていたという。

「私は救急車に連絡をしようとしたんです。でも、『119』すら思い出せないくらいにテンパってしまって。いつでもかけられるようにと携帯の『よく使う項目』に入れているんですが、それすらもすっかり忘れてしまいました」

1分ほど経っても、喉の詰まりは解消しなかった。息子は泡を吹き、白目を剥き始めていた。救急車はすぐにはこない。もうダメかもしれないーー。そう思った矢先、10円玉くらいの大きさのクッキーの欠片がポロリと、口から飛び出した。

「最後はほとんど逆立ちくらいの状態で、背中を布団たたきくらいの強さで叩いていたんです。そうしたらやっと、取れて……。息子の顔色もさっと戻って、抱っこを求めてきて、本当によかったなと……」

恵方巻きにもリスクが…

食べ物やおもちゃなどを誤飲・誤嚥し、窒息してしまう事故は、小さな子どもに多い。

消費者庁のまとめによると、14歳以下のそうした死亡事故は2016〜2020年にかけて125件起きている。そのうち0歳児が46件と最も多く、1歳児は23件だった。

政府広報によると、過去の事故ではスーパーボールや木製のおもちゃ、ナッツ類、あめ玉、ゼリー、文房具、ボタン、硬貨などが事故の原因となっている。

子どもの口の大きさは4センチ(トイレットペーパーの芯とほぼ同じ)。それより小さいあらゆるものにリスクがあり、「子供の口の中に入るものは何でも誤嚥や窒息の原因になる可能性があります」という。

実際、日本小児科学会が子どもの事故をまとめている「傷害速報」には、「スーパーボール」(3歳男児)や「木製のイチゴのおもちゃ」(2歳女児)「ブドウ」(1歳6ヶ月男児)などによる死亡事故が掲載されている。

なお、節分の時期にたびたび注意喚起がされているように、豆類も危険だ。消費者庁は、特に噛み砕く必要のある硬い豆やナッツ類について、「5歳以下の子どもには食べさせないでください」としている。

さらに、「丸くてつるっとしたもの、粘着性が高く飲み込みづらいもの、かみ切りにくいものなどは、特に注意が必要です」として、恵方巻きもリスクがあると強調。小さく切るなどの対応をするように呼びかけている。

また、食べ物を口に入れたまま走ったり、笑ったり、泣いたり、声を出したりすることも危険だという。

もしものとき、しなければいけないことは?

子どもが突然声が出なくなった、首をおさえ苦しそうにしている、唇が紫になったーーなど、苦しそうな様子を示していた場合、窒息の可能性が高い。

窒息が起こってから呼吸が止まって、意識を失うまでは5〜6分ほど。その後は心臓が止まり、大脳に障害が起こり、15分を過ぎると脳死状態になってしまう。

そのため、すぐに救急車を呼び、その到着までの間に応急処置をすることが必要になる。

1歳未満であれば、図にあるように「胸部突き上げ法」と「背部叩打法」を繰り返す。1歳以上であれば「腹部突き上げ法」の応急措置も有効だ。

前出の女性は事故を経験し、こうした応急処置の方法やリスク、そして過去の事故事例について、改めて夫とともに確認しなおしたという。

「クッキーの対象月齢も過ぎていたし、息子も食べるのが上手になってきていたこともあり、どこかで油断していたところがあったのかもしれません。窒息すると本当にすぐに死んでしまう危険があると、改めて痛感しました」

「事故を未然に防ぐために注意を払ってる人は多いけれど、いざ事故が起こった時に適切な対応を取れるよう、応急処置などを再確認することが大切だと思いました。いつ、どこでも、誰にでもこういう事故は起きてもおかしくない。自分は大丈夫と思い込まないようにしたいです」