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「武装なう」包丁の写真投稿、在日コリアンに不安広がる。地域を名指し、ヘイトクライムの懸念も

名指しされたは桜本地区はこれまでもたびたび、「標的」とされてきた地域だ。ヘイトデモが繰り広げられ、住民たちにたびたび被害をもたらしてきた。多文化共生施設「ふれあい館」に在日コリアンの殺害をほのめかす脅迫文書が送りつけられた。

ヘイトスピーチなどを繰り返しているTwitterアカウントが包丁3本の写真とともに、「武装なう」と投稿。川崎市内の在日コリアンの集住地区を名指ししたことで、地域に不安が広がっている。

川崎駅前では今週末、投稿者もたびたび参加している街宣活動が予定されていることから、ツイートが「ヘイトクライム」の告知であるとの声もあがる。市側も把握し、警察と情報を共有しているという。

投稿があったのは、「日本第一保守主義」を掲げる匿名のTwitterアカウント。在日コリアンや外国人住民に対する差別的発言を繰り返し、川崎市などで開かれる街宣活動にも参加してきた人物のものだ。

アカウントは、2月8日夜に「武装なう」と包丁3本を手に持った写真を投稿。「寿司職人?」とリプライ欄で問われ、「万が一のとき用です」と答えている。

さらにその後も別のツイートで、「暴れるか、暴れないかしかねぇ」「デモ隊の脇腹に突っ込みたい」などと暴力行為を示唆。川崎市内の在日コリアンの集住地区を名指しし、「抗争したい」としたものもあった。

名指しされたは桜本地区はこれまでもたびたび、「標的」とされてきた地域だ。「日本浄化デモ」(2016年)といったヘイトデモが繰り広げられ、住民たちにたびたび被害をもたらしてきた。

20年と21年には相次いで、地区にある多文化共生施設「ふれあい館」に在日コリアンの殺害をほのめかす脅迫文書が送りつけられた。前者については元市役所職員の男が逮捕され、威力業務妨害で懲役1年の判決を言い渡されている。

同館の指定管理者である社会福祉法人「青丘社」は、今回のツイートについて、2月14日、「桜本を標的とした挑発と脅迫的発信は、看過できるものではありません」とする声明を発表。

一連の投稿を「まちに暮らす市民に不安と恐怖と嫌悪を与える」と非難し、「桜本を守ってください!」と、多くの市民の協力を呼びかけた。

三浦知人理事長は取材に「地元から、『助けてください、守ってください』というお願いを伝えようと発したメッセージです」と話した。

「社会が不安になると、マイノリティが的に」

地区で生まれ育ち、いまは「ふれあい館」館長を務める在日コリアン3世の崔江以子さんも、これまでネット上などで度重なる差別的な誹謗中傷や脅迫の被害を受けてきた当事者だ。

崔さんは2月15日に市内で開かれた「川崎市人権尊重のまちづくり推進協議会」の場で、今回のツイートが、ネット上における危害の「告知」であると指摘。こう話した。

「ヘイトスピーチだけではなく、ヘイトクライムまでもが予告されています。大変な恐怖と怒りのなかにあります。どうか助けてくださいという気持ちです」

崔さんは自らが被害を避けるために防刃ベストを着用し、さらに護身用の警棒を所持するようにしたことを明かし、同市にある罰則付きの「ヘイト禁止条例」の運用について、こう訴えた。

「コロナ禍のように社会が不安になると、マイノリティが的にされることがあります。災害が起きたあとも、必ずデマや誹謗中傷の書き込みがあふれます。いますでに生じてしまっている被害に対策は追いついておらず、平穏で安寧な生活が送れていません」

「公的機関がしっかりとデマなどを打ち消すことが、マイノリティ市民の2次被害や3次被害を防ぐはずです。差別をする表現の自由が守られるのではなく、差別による被害から守られるような施策の推進と、積極的な条例の運用を望んでいます」

川崎駅前では2月20日(日)午後に、「日本第一主義」を掲げる団体による街宣活動が予定されている。今回のツイートを投稿した人物もたびたび参加しているものだ。

川崎市人権・男女共同参画室の大西哲史担当課長はBuzzFeed Newsの取材に対し、ツイートそのものについて、市として「把握している」と語った。内容を確認したうえで、当日警備にあたる神奈川県警とも情報を共有しているとしている。