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「毎日のようにひとりで傷つく」在日コリアンの若者の差別経験、その実態が明らかに

在日コリアンの高校生や大学生ら約1千人に対する朝鮮奨学会の調査から見えた現実。「ネット」や「デモ・街宣」でヘイトスピーチなどを見聞きしたり、差別的な嫌がらせを受けたりしたと回答した人は7割にのぼった。

「ヘイトスピーチ対策法」の施行から今月で5年が経った。しかし、日本社会における差別をめぐる問題は、改善したとは言い難い状況が続いている。

ポータルサイトやSNSにヘイトコメントが溢れたり、路上で差別的な街宣が繰り広げられたりーー。

こうした実態が、若者たちに深刻な影響を及ぼしていることが、このたび、調査から明らかになった。

調査は、在日コリアンの学生や韓国からの留学生を支援している「朝鮮奨学会」が2019年12月から20年2月に実施し、今年公開した。

有効回答数は1030人。うち高校・高専生が488人、短大・大学・大学院生が542人だった。

報告書によると、対面で差別的な言葉による嫌がらせを受けたという人は30.9%いた。学校の日本人生徒から言われたという人が48.1%と最多。バイト先の客が16.4%、日本人教員が10.1%、バイト先の日本人上司や同僚が9.1%と続いた。

また、日本の学校やアルバイト先、公共機関や不動産を借りる際などに嫌な思いをした(差別的処遇を受けた)という人も39.4%いた。

「ネット」や「デモ・街宣」でヘイトスピーチなどを見聞きしたり、差別的な嫌がらせを受けたりしたと回答したのは、それぞれ7割以上となった。

ネット上の差別的な体験について、「韓国人・朝鮮人を排除するなどの差別的な記事、書き込みを見た」と答えた人は、「ある」「ややある」が計58.7%だった。

「差別的な記事、書き込みが目に入るのが嫌で、そのようなサイトの利用を控えた」という人は計23.7%と、およそ4人に1人にのぼった。

「差別を受けるかもしれないので、自分のプロフィールを掲載するときも、韓国人・朝鮮人であることは明らかにしなかった」は、計13.9%だった。

また、「自分の投稿に差別的なコメントをつけられた」と答えた人も2.7%いた。

過去3年間に「差別デモや街宣活動」を見たことがあるかどうかについては、「路上などで直接見た」について「ある」「ややある」と答えた人が計26.2%いた。

また、ネットやメディアを通じて見たという人はそれぞれ計53.9%、計48.9%と5割前後に及んだ。

ネット上の「差別的な記事・書き込み」について、不快に感じた人は書き込みを見たうちの75.7%にのぼった。

「日本で生活することに不安や恐怖を感じた」という人は15.5%、「日本人や日本社会に対する見方が悪くなった」のは23.4%、「韓国人・朝鮮人である自分を嫌だと思った」人は5.4%だった。

「差別デモ・街宣」について、不快に感じた人は、デモなどを見た人のうち74.9%、「日本で生活することに不安や恐怖を感じた」人は21.3%だった。

また、「日本社会や日本人への見方が悪くなった」人は24.6%、「韓国人・朝鮮人である自分を嫌だと思った」人は4.1%だった。

BuzzFeed Newsが同会から提供を受けたアンケートの自由記述欄には、率直な思いも書き記されている。たとえば、大学3年生の女性は、こう記している。

「私は環境に恵まれており、ヘイトを直接向けられることはほとんどありませんが、インターネット(特にツイッター)で毎日のように想像力を欠いた発言を目にし、一人で傷ついていくことが多いです」

「周りの人はこんな思考や悩みで日常を邪魔されることは無く、自分だけが周りと異質な時間を生きているという小さな絶望を抱く。朝にインターネットで嫌なニュースを見てどんよりとした気分になり、午後は何も手に付かないような日がある」

本名を隠して生きているという大学生の女性もいた。ネット上の書き込みについては、「偏見で、差別的なことを発信する人もいるし、実際にそういったことを見たことは沢山ありました」と触れ、「国籍で見るのではなく、一人一人の能力を見てくれる世の中になってほしいと思います」と願いを込めた。

また、大学1年生の男性は「ネットの影響力が増すことでネット上での意見を一般論だと思ってしまうような人が出てくるとこの先少し危険かな、と思うようになった」と懸念を示した。

大学1年生の女性は対面で「外人のくせに」との言葉を投げかけられたといい、「国籍以外はみんなと同じなのになぜそんなことを言われなければいけないんだ」との思いを綴った。

さらに、高校1年生の女性はこう悲痛な思いを記している。「デモの話を聞くだけで胸が苦しくなる。人として一人ひとりをみてほしい」

調査の詳細は朝鮮奨学会のサイトから閲覧できる。