「ヘイトまがいのスピーチ」愛知県知事が名古屋市長の”座り込み”に猛抗議

    「表現の不自由展」の再開に名古屋市の河村たかし市長が抗議の「座り込み」。愛知県知事は市長の行動を「常軌を逸している」と猛反発している。一方、そうした行動をとる市長自身が「作品の一部」という指摘も。

    愛知県で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展」が10月8日から、公開を再開した。

    これに対し、表現の不自由展の内容を強く批判してきた名古屋市の河村たかし市長が、会場前や愛知県庁前で「座り込み」をした。

    一方、大村秀章愛知県知事はこうした行動について「ヘイトまがいのスピーチ」「常軌を逸している」と厳しく批判している。

    大村知事と河村市長はかつて近い関係にあったが、近年は県と市の権限や事業などを巡って、対立を深めている。芸術を巡る論争に、政治家同士の対立が持ち込まれている部分もある。

    「不自由展」でも、「日本国民の心を踏みにじる」と展示の内容を批判する市長と、市長の発言は憲法が禁じる「検閲」につながると反発して再開を模索する知事、という構図が鮮明となっていた。

    河村市長は、不自由展が再開した8日午後2時ごろから、会場のある名古屋市中心部の愛知芸術文化センター前や愛知県庁前で数分間の「座り込み」をし、再開を決めた大村秀章・愛知県知事に対して抗議した。

    「大村やめろ!」「知事は名古屋市民の声を聞け!」「公金の不正使用を認めるな!」「天皇の御真影を燃やすな!」「陛下の侮辱を許すな!」

    そうシュプレヒコールがあがり、支持者とともに拳をつきあげた河村市長。

    県庁前での「座り込み」後、記者団に対し、不自由展の再開について「表現の自由という名を借りたテロ的な、暴力による国民世論のハイジャックですよ」と主張した。

    そのうえで、「天皇陛下でも敬意を持ってやろうと思っている人がたくさんいる。名古屋市や愛知県が主催でやっちゃったら、そういう人たちの表現の自由はどうなっちゃうのか」などと再開に疑問を呈した(発言詳細はこちら)。

    その後、公務のためとして、隣にある市役所へと向かった。

    「公職者の方がやられることとは…」

    大村知事は河村市長の抗議活動について「まさか、こんなことをするなんて。衝撃です」とツイート

    「制止を振り切って、県立美術館の中のフロアを占拠して、誹謗中傷のプラカードを並べて、美術館の中で叫ぶ。芸術祭のお客様の迷惑も顧みず。常軌を逸してます。厳重に抗議します」と述べた。

    また、その後も重ねて、こうツイートしている。

    河村さんの今日の行動は、右翼団体と称する方々と共同で、事実と異なるプラカードを並べて、ヘイトまがいのスピーチをしたものです。それも、県立美術館の敷地を占拠して。とても、公職者の方がやられることとは思えません。極めて危険な行為です。厳重に抗議します。 https://t.co/jRHsJEYTc8

    一方、ネット上では「座り込み」自体が「作品の一部になっている」「市長によるパフォーマンスアート」などという指摘もあがっている。

    憲法学者の木村草太さんは「体を張って自身の思想・信条を表現するなんて、市長自身がアーティストだ」とツイートしていた。

    「あいちトリエンナーレ」のテーマは「情の時代」だったが、ここまでの騒動そのものが「情の時代」を象徴する作品の一部だったのではないか。ついには、「市長が座り込み」との報道まで。 体を張って自身の思想・信条を表現するなんて、市長自身がアーティストだ。ぜひ、現場を体感したいところだ。