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圧勝した安倍首相が会見で”触れなかった”言葉

その発言を、データで分析した。

10月22日に投開票された衆議院議員選挙で、自民党が圧勝した。

総選挙での圧勝から一夜。10月23日、安倍晋三首相が自民党本部で会見に臨んだ。どんな内容だったのか。BuzzFeed Newsがテキストマイニングの手法で分析した。

テキストマイニングとは、文章を単語レベルで分解し、文章中に出てくる回数などを分析するものだ。

*分析には、ビッグデータ分析ベンチャー「ユーザーローカル」のツールを使った。画像で大きくなっている文字は頻出しているものとは限らない。

会見の冒頭発言で、安倍首相が語ったのは9分20秒ほど。

ここで、国民から「力強い支持をいただいた」ことを強調しながら「謙虚さ」を忘れないという姿勢を示した安倍首相。

自らが「国難」としていた少子高齢化と北朝鮮対応の必要性を改めて訴え、公明党とともに「安定した経済政策、外交、安全保障政策」を進めていくことを強調した。

多く使われていた名詞(トップ15)は以下の通り。


  1. 国民:14
  2. 皆様:12
  3. 政策:11
  4. 私たち:6
  5. 自民党:6
  6. 公明党:5
  7. もと:5
  8. 実行:5
  9. 政治:4
  10. 一つ:4
  11. 結果:4
  12. 少子高齢化:3
  13. 議席:3
  14. 北朝鮮情勢:3
  15. 連立与党:3

多く使われていた形容詞は、「力強い」(5)がトップ。「厳しい」(4)「大きい」(3)「深い」(2)「強い」(2)が続いた。

憲法改正は…?

安倍首相がこの約9分間、一言も言及しなかった単語がある。かねてから訴えてきた「憲法改正」だ。

5月には読売新聞の単独インタビューに応じ、平和主義を定めた憲法9条を2020年までに改正し、自衛隊の存在を明文化する考えを示している。また、今回の選挙では、自民党の公約集の柱に初めて「憲法改正」が掲げられた。

選挙が終わり、憲法改正に前向きな「改憲勢力」が発議に必要な3分の2を超えた。これから、改憲に向けた議論は進んでいくことになる。

しかし、この日の冒頭発言では、安倍首相の口から憲法の「けの字」も出なかった。それゆえ、質疑では憲法改正に関連した質問が相次いだ。

まず、安倍首相は「2020年という目標については、議論を活性化するために述べたことであり、スケジュールありきではありません」と強調。こうも述べた。

「今後公約に掲げた具体的な、基本的な考え方に沿って、条文について、党内で検討、議論を深め、自民党としての案を国会の憲法審査会に提案したい」

「与党・野党に関わらず、幅広い合意を形成するように努力をしていく。第1党であろうと、2党、3党4党であろうとそれは、行わないといけない。政治であるから、皆様全てにご理解いただけるわけではないが、努力をすることは当然進めていきたい」

また、「なぜ街頭演説では改憲を訴えなかったのか」「今回の結果が、改憲への民意と考えているか」などと問われた安倍首相は、こうも説明している。

「憲法においては、決めるのは国会ではなく国民投票。その場で具体的な条文について説明する責任がある。街頭で述べることは限られた時間のなか、地域の密着した生活に対する政策を述べるものであり、お越しいただいている方が聞きたいことに答えるのが、私の責務であります」

「自民党の公約では4項目を示したが、これは国民の皆様に、ひとつの判断材料としてお示ししたもの。民意を得なければいけないのは国民投票であり、総選挙において民意を得る、得ないのものではない」

安倍首相の冒頭発言、全文は以下の通り。

まず冒頭、台風21号により、被害を受けた皆様にお見舞いを申し上げます。いまだ北上を続けており、政府としては引き続き、災害応急対策に万全を喫してまいります。

我が党が政権を奪還してから5年が経ち、国民の皆様から大変厳しい視線が注がれるなか、この度解散総選挙に臨みました。

厳しい戦いとなることはもとより覚悟の上でありましたが、困難な課題に挑戦するためには、国民の皆様からしっかりと信任を得なければならない。その決意のもとに、自民党公明党の連立与党で過半数を目指し、全国各地で私たちの政策を訴えてまいりました。

結果として、目標を大きく上回る、力強いご支持を国民の皆様にいただくことができました。連立与党の議席は3分の2を超え、自民党単独でも絶対安定多数を大きく上回り、今回、衆議院定数が10削減された中にあって、前回同様、280を超える議席をいただきました。

安定した政治基盤のもとで、これからも政治を前に進めようと国民の皆様から力強く背中を押していただいたことに、本当に感謝をしております。

そして、悪天候のもと、足元の大変悪い中で私たちを応援してくださり、投票所に足を運んでくださった皆さんに、厚く御礼を申し上げます。

5年前、3年前に続き、みたび、私たちは国民の皆様から政権を託していただきました。総選挙において、我が党が3回連続で過半数の議席をいただいたのは、ほぼ半世紀ぶり。同じ総裁のもとで3回続けて勝利を得たのは、立党以来60年あまりの歴史の中で初めてのことであります。

であるからこそ、謙虚に、政策を進めていかなければならない。本当に、身の引き締まる思いであります。私自身、その責任の重さを深く、噛み締めております。

先ほど、公明党の山口代表と連立合意に署名いたしました。今後とも自民党と公明党の強固な連立のもとで、安定した経済政策、外交、安全保障政策を進めていく。この選挙戦でお約束した政策を一つ一つ実行し、結果を出してまいります。

我が国の持続的な成長の鍵は、少子高齢化への対応です。アベノミクス最大の挑戦であります。生産性革命によって、全国津々浦々に至るまで賃上げの熱い勢いをさらに力強いものとすることで、デフレ脱却を目指す。そして人づくり革命を進めていく。

幼児教育の無償化を一気に進め、真に必要とする子供達には、高等教育を無償化していきます。消費税の使い方を見直し、子育て世代、子供達に大胆に投資することで、社会保障制度を、お年寄りも、若者も安心できる、全世代型の制度へと大きく改革してまいります。

少子高齢化が急速に進むいま、私たちに立ち止まっている余裕などありません。年内に政策パッケージを策定し、可能なものから速やかに実行に移してまいります。

緊迫する北朝鮮情勢に対しても、国民の皆様からいただいた信頼を背景に、力強い外交を展開します。来月5日にトランプ大統領が来日します。本日も早速お電話をいたしましたが、日本にお越しになった時は、北朝鮮情勢に関してもたっぷり協議を行い、緊密な連携を確認したいと思います。

そのあとは、APEC、東アジアサミット、世界のリーダーたちが集うこの場を利用して、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平主席とも、この問題について議論したいと考えています。

毅然とした強い外交力によって、北朝鮮の核ミサイルの問題、そして拉致問題を解決する。北朝鮮にその政策を変更させるため、国際社会との連携を一層強めてまいります。

そして、いかなる事態にあっても、国民の命と、平和な暮らしを守り抜いていく。その決意を新たにしております。

少子高齢化、緊迫する北朝鮮情勢、まさに国難とも呼ぶべき事態に対して、総理大臣として、この国の舵取りを担う重責を全うしてまいります。

今回の選挙で国民の皆様からいただいた力強い支持を背に、私は国民の皆様とともに、ブレることなくまっすぐに政治を前に進め、しっかりと結果を出す覚悟であります。

改めて、私たち自民党公明党の連立与党に、3度目となる安定した政治基盤を与えてくださった国民の皆様に、感謝申し上げます。

同時に、今後、国民の皆様から、私たちに対して、より一層厳しい眼差しが注がれる。そのことをすべての与党議員が強く意識しなければなりません。いままで以上に謙虚な姿勢で、そして真摯な政権運営に全力を尽くさなければならない。そう考えています。

2009年、私たちは、野党に転落しました。あの時は本当に厳しい時代でありました。ここにいる同僚議員も含めて、あの時代を経験したすべての自民党議員の胸に深く刻まれていると思います。

私たちは、有権者の皆さんの声に耳を傾けるところからスタートしました。国民が何を望んでいるかに真摯に向き合い、党内で大いに議論し、政策を磨き上げてきました。

その政策をひたむきに、誠実に訴えることで国民の皆様からお力をいただき、再び、政権を取り戻すことができた。

そしてその政策を5年間、ひたすらに実行することによって、一つ一つ結果を出してまいりました。我が国の未来を切り開くのは、人々の耳目を引くようなパフォーマンスでもありません。耳障りの良い、スローガンでもありません。政策です。政策の実行力です。

あの5年前の政権奪還の初心を決して忘れることがなく、自民党が一丸となって、そして友党公明党とスクラムを組んで、

これからも、すべては国民の負託に応えるため、ひたすらに、政策の実行に邁進していく。その決意であります。

私からは以上です。