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【検証】希望の党の住所が「自民党東京第十選挙区支部と完全に一致」は本当か?

「自民党の別働隊」との指摘もあるが…

衆議院議員選挙で小池百合子知事が率いる「希望の党」。「民進党」や「日本のこころ」出身の議員も合流して大きな勢力となり、235人を擁立した。

この「希望の党」の所在地が「自民党の支部と同じだ」との指摘が話題を呼んでいる。これを根拠に「別働隊」と伝えたニュースサイトもある。

BuzzFeedが実施している衆院選にまつわる検証企画で、この疑惑を調べた。

結論から言うと、この疑惑は「不正確」だ。

住所や電話番号がわからない?

疑惑の発端は「希望の党」の住所や電話番号が公表されていない点にあった。

公式ホームページに党本部や支部、選対本部などの連絡先が公開されておらず、Twitter上でその透明性や情報公開のあり方に疑問が持たれていた。

実際、希望の党は広報窓口の統一すら不十分で、結党当初からBuzzFeed Newsを含む報道各社が問い合わせに苦慮していた。

しかし、住所が完全に非公表だったわけではない。

総務省が9月25日に公表した「政治資金規正法に基づく政治団体の届出」には、「東京都豊島区南池袋2-12-8」という住所が記載されている。

これが、疑惑の的となった。「自由民主党東京都第十選挙支部」と同じ住所だったからだ。

2015年の収支報告書など、確かに、ネット上には同じ住所であることを示す情報が残っている。

「自民党の別働隊だ」

Twitterで話題を呼んだこの疑惑。ニュースサイト「BUZZAP!」は10月11日、こうした記事を配信した。

「希望の党」の住所が「自民党東京第十選挙区支部」と完全に一致

本部住所も電話も非公表の希望の党の主たる事務所の住所が自民党の某支部と完全に一致してしまいましたと始まるこの記事。計測ツール「BuzzSumo」で調べたところ、3千近くシェアされている。

記事では、「疑惑」の住所が、自民党を離党し、希望の党から立候補する若狭勝氏の池袋事務所や、小池氏の後援会事務所(2014年の衆院選時)と同じであることにも言及した。

その上で、希望の党が「自民党の別働隊」であると批判し、以下のように報じている。

小池都知事は都知事当選後程なくして自民党籍を抜き、若狭議員は希望の党の立ち上げに伴い自民党を離れましたが、その両者が使っていた自民党支部の事務所が安倍政権を打倒するはずの新党「希望の党」の本拠地として登録されるということになったのです。

「十支部」は存在しない団体だった

BuzzFeed Newsは関係各所に取材をした。

東京都選挙管理委員会に確認したところ、そもそもこの「自民党東京第十選挙区支部」はすでに存在していない政治団体だった。

都選管によると、この団体は2003年1月に「自由民主党東京都衆議院選挙区第十支部」として初めて届け出が出されたという。

代表は小池氏だ。この時期は、氏が当時所属していた保守党を離党し、自民党に移った直後でもある。

団体の所在地は当初から豊島区内だった。複数の移転と名称の変更を挟み、2006年1月に、「疑惑」の住所に落ち着いたようだ。

そして10年後の2016年8月16日。小池氏が知事に就任した2週間あと、団体の解散届けが出されたという。

なお、小池氏が若狭氏とともに自民党を離党したのは「都民ファーストの会」ができた2017年7月。それより1年ほど前に、すでに支部は解散していたことになる。

実際、自民党のサイトを見ても、第十支部が欠落していることがわかる。

どういう経緯だったのか?

しかし、どういう経緯で自民党第十支部と小池氏の後援会、若狭氏の池袋事務所、さらには希望の党の住所が同じになってしまったのだろうか。

自民党東京都連は「都選管に確認してください」と回答。若狭勝候補の池袋事務所は「過去の経緯はわからない」としており、小池氏の後援会事務所に関しては、電話がつながらない状況だった。

一方、希望の党に関しては、「担当者が不在のため折り返します」としている。こちらは、回答があり次第追記する。

ただ、今回のように、党を変えたり無所属になったりした政治家が、もともとの事務所をそのままにして、選挙などで活用するケースは珍しいことではない。

実際、東京都選管に届け出されている「希望の党選挙対策本部」の住所は「品川区東大井5-17-4」。これは、民進党を離党し希望の党に合流した松原仁氏の事務所所在地だ。

連立に含みを残す小池氏

小池氏は、「政権交代」を掲げているにも関わらず、首班指名をしていない。

さらに、自民党との大連立の可能性について、「しっかり戦い抜き、その結果としての判断になる」と含みを残している。

憲法改正や安全保障に対する考え方も自民党と近く、そうした立ち位置から、今回の疑惑に火がついたとも考えられる。

しかし結果として、すでに存在しない支部と「場所が一致」するという指摘や、それをもって「別働隊」と評するのは「不正確」であると言える。


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