戦国自衛隊かと思った 陸自新エンブレムに「抜き身の刀」の真意は

    陸上幕僚監部に聞いてみた。

    陸上自衛隊の新しいエンブレムが発表された。日の丸、日本刀、そして桜に雉の翼。猛々しいデザインだが……。

    その名もずばり「桜刀(さくらかたな)」。目を引くのは、抜き身の日本刀だ。

    ツイッター上には「かっこいい。強そう」「日本らしさが前面に出ている」。一方、「これじゃ戦国自衛隊」「戦時中みたいで怖い」という反応も。「校章っぽい」「お土産?」という意見もあった。

    陸上自衛隊は今年で創設62年。そもそもなんで、いまになってエンブレム?

    陸上幕僚監部に聞いてみた。

    BuzzFeed Newsの質問に対し、5日後に文書で回答があった。まず、コンセプトが3つあるという。

    * 我が国の平和と独立を守る強固な意志及び強靭性
    * 自衛隊員又は日本国民としての誇りとアイデンティティ
    * 我が国の歴史・文化・伝統に対する深い尊崇の念

    なんで刀なのか。

    コンセプトだけではよくわからない。では、描かれているものにはどんな意味があるのか。特に目立つのは刀だ。

    「諸外国の陸軍等のエンブレムにおいても、銃や銃剣を活用している事例が多数あります。そのような中、陸自においてはより日本人らしさを示す観点から刀が適切であろうと結論を得たものです」

    こう説明する陸上幕僚監部。ホームページでも、日本刀は「古来より武人の象徴とされてきた」とし、「その『刃』に強靭さ、『鞘』に平和を愛する心を表現しました」と解説している。

    「専守防衛ではない」との指摘があった「抜刀」の描写については、奥に刃、手前に鞘を置いたことで、「陸上自衛隊が『国土防衛の最後の砦』であること、そして、国家危急の時に初めて戦う意思を表現」したという。

    確かに、剣をモチーフにしたエンブレムは珍しくない。

    背景には「積極的平和主義」

    では、エンブレムを作成した経緯は?

    「ここ数年、陸上自衛隊は、他国との共同訓練、国際会議、能力構築支援など、国際的な活動、交流が増大してきております」

    こうした海外での活動では「国際儀礼上、自国軍のエンブレム入りギフト(メダル等)を交換すること」が慣例となっているそうだ。

    しかし、「陸上自衛隊には、他国のように統一したエンブレムが存在していなかった」。それゆえ、活動に参加する隊員は、「統一したものが必要との認識を共有」していたのだという。

    この背景には、安倍政権が唱える「積極的平和主義」がある。これに基づき日本が国際社会の平和に「積極的に寄与」するため、2013年閣議決定の「国家安全保障戦略」に盛り込まれて以降、海外における自衛隊の活動は増加の一途を辿っている。

    徹底したこだわりぶり

    ホームページでは、「我が国の平和と独立を守るという陸上自衛隊の使命を踏まえ、上段に日の丸を、下段に陸上自衛隊を象徴する桜星を配置」とも説明する。

    「陸上なのに翼なの?」という疑問も頭をよぎるが、後ろの翼は国鳥の雉のもので、その枚数は都道府県数と同じ47だとか。

    すこし気になるのは「Since 1950」の部分。あれ?陸上自衛隊の創設は1954年のはず……。実は、1950年は朝鮮戦争が勃発し、陸上自衛隊の前身である警察予備隊が組織された年に当たり、そこを起点にしているようだ。

    また、作成に当たってはまず、陸自が3つのコンセプトと、「月桂樹、桜花、日の丸、富士山等モチーフの一例を提示」。それを受けた各社がデザインを作成し、企画競争入札でこのエンブレムが選ばれたという。

    陸自の象徴として

    陸上幕僚監部も「陸上自衛隊を象徴するエンブレム」と評価する。そのうえで、隊員には「日本の平和と独立を守るという強固な意志等を再認識してもらえるもの」「士気高揚及び団結強化に役立つもの」になると期待を寄せる。

    最後に、賛否の声をどう捉えているのか、聞いてみた。

    「近年、災害派遣等の活動により、陸上自衛隊のやさしさ、頼もしさは幅広く理解いただいていると思料します。一方で陸上自衛隊には精強さも必要不可欠であり、本エンブレムを通じてそれを感じていただければ幸いです」

    エンブレムは今後、他国軍と交換するメダルなどとして利用するほか、国際会議の資料に使ったり、国旗とは別に象徴として展示したりする活用方法を検討しているという。

    ちなみにアメリカ陸軍のエンブレムは大砲がモチーフ