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あなたは大丈夫? 塩漬けの確定拠出年金「2400億円」100万人を超えた自動移換者、国も問題視

企業型DCは掛け金を企業が拠出し、従業員が運用するという特徴がある制度。年金である以上、一部の条件を除いては、原則として制度の脱退時に資産を引き出すことはできない。転職する場合、その先に同じ制度があれば引き継ぐことが可能だが、そうでない場合は、「個人型確定拠出年金」(iDeCo)に移す手続きが必要になる。

掛け金を企業が拠出し、従業員が運用する「企業型確定拠出年金」(企業型DC)制度をめぐり、退職などの制度脱退時に手続きをしなかったために、資産が「自動移換」されている人が今年100万人を超えていたことが、BuzzFeed Newsの取材でわかった。

資産がない人も4割ほどいるが、移管先の国民年金基金連合会によると、資産の総額は約2396億円にのぼる。現金状態で運用はされておらず、手数料だけが引かれていく、いわば「塩漬け」になっている資産で、国も問題視している。

企業型DCは掛け金を企業が拠出し、従業員が運用するという特徴がある制度。年金である以上、一部の条件を除いては、原則として制度の脱退時に資産を引き出すことはできない。

転職する場合、その先に同じ制度があれば引き継ぐことが可能だが、そうでない場合は、「個人型確定拠出年金」(iDeCo)に移す手続きが必要になる。

しかし、この手続きを退職から半年以上放置すると、「企業型DC」で貯めていた資産は国民年金基金連合会に「自動移換」されてしまうのだ。

「自動移換」にはデメリットが多い。移換時に4000円以上の、そして毎月52円、年600円以上の手数料が取られる。運用はされず利息もつかないため、手数料だけが月々取られるということだ。

さらに加入者期間にもカウントされず受給開始が遅れるばかりか、このままでは年金として受け取ることすらできない。

この「自動移換」は「正規移換者」(手続きをした人)よりも多いことがかねて問題視されており、2007年には関係団体で「連絡協議会」が発足。

さらに2018年からは法改正などに伴い事業主に説明義務が課され、連合会による年1度の通知なども政令に明記されたほか、自動移換者について、企業型DCやiDeCoに加入をしていることが確認できれば、手続きなしに資産と記録が移換するようにもなった。

増え続ける「自動移換者」

しかしその後も、「自動移換者」の数は増加傾向にある。2021年4月には100万人を超え、最新の10月現在では約104万人となった。

国民年金基金連合会によると、計2396億円(2020年度決算)が自動移換されているという。資産がない人が43.7%、25万円以下が35.5%と大半を占めているが、100万円以上が移換されている人も11.9%いる(2021年3月末現在)。

国民年金基金連合会の担当者は、BuzzFeed Newsの取材に「企業型DC脱退時の事業主側からの説明・周知が重要だと思っております」と回答。以下のように問題意識を示した。

「事業主側でも様々工夫をしていただいているところですが、DC制度が普及し、加入者の増加に伴い、自動移換者も増加しているという状況が続いております」

連合会では、「自動移換者」への年1回の通知や、65〜70歳になった人たちへの通知などを実施しているといい、こうコメントした。

「連合会としては、まずは転職・退職時に自動移換とならないよう企業側での手続きの周知の働きかけを行うとともに、自動移換となった方に対しては、引き続き定期勧奨等に取り組んでいきたいと考えています」

なお、確定拠出年金制度は来年2022年4月に改正され、これまで60歳未満だった「iDeCo」の加入年齢が65歳未満まで引き上げられるほか、企業型DCに加入している人も掛け金が上限に達していなければ「iDeCo」を併用できるようになる。

選択肢が広がり利便性も向上する一方で、増え続ける「自動移換者」の問題には国も頭を悩ませているようだ。厚生労働省の担当者は、BuzzFeed Newsの取材にこう語った。

「これまでの対策を継続していますが、それでも増えているという問題意識は厚労省としても持っています。ただ、新たな対策という具体的なところまで検討が進んでいません」

国民年金基金連合会は自動移換者専用のコールセンターを開設している。問い合わせは03-5958-3736(平日9:00~17:00)まで。