2月7日は「北方領土の日」。政府広報から、去年あった「わが国固有の領土」という文言が消えているという指摘がTwitterで話題になっている。

左が今年の新聞に掲載されたもの、右が昨年のものだ。
安倍晋三首相が国会で「わが国(日本)固有の領土」という表現を避けていることが注目される中での変化ともあり、ツイートは2月7日夕現在2800近くリツイートされている。
ただ、これは今年に限ったことではない。

BuzzFeed Newsが過去10年分の広告を確認したところ、「固有の領土」という表現が使われていたのは2011年と16年、18年の3回だけだった。
内閣府北方対策本部の担当者は、BuzzFeed Newsの取材に対し、「今年は今年、去年は去年で考えた結果。首相答弁の影響を受けたり、何かしらの指示をされたりしたわけではない」と答えている。
一方で、安倍首相が「固有の領土」という表現を避けるようになっているのは事実だ。

毎日新聞によると、首相は2017年2月の衆院予算委で「日本固有の領土というのがわが国の一貫した立場」と答弁した後は「固有の領土」を使っていないという。
今国会では、1月31日の施政方針演説で「わが国が主権を有する島々」だと述べ、「固有の領土」を使わなかったことから、「ロシアの刺激を避ける狙いがある」との指摘(日経新聞)も上がった。
また、2月6日の参議院予算委員会では、国民民主党の大塚耕平議員に「固有の領土でご答弁を」と問われても使わず、「使えなくなったのか」という質問にも「わが国が主権を有する島々という立場に変わりはない」と答えるに止めている。
河野太郎外相も同様だ。去年の「北方領土の返還を求める全国大会」では「わが国固有の領土」と発言していたが、今年の大会では同様の表現を使わなかったという。
そもそもこの「固有の領土」という表現は、政府の公式見解だ。内閣府のサイトには以下のように記されている。
北方四島は、歴史的にみても、一度も外国の領土になったことがない我が国固有の領土であり、また、国際的諸取決めからみても、我が国に帰属すべき領土であることは疑う余地もありません。北方領土問題とは、先の大戦後、70年以上が経過した今も、なお、ロシアの不法占拠の下に置かれている我が国固有の領土である北方四島の返還を一日も早く実現するという、まさに国家の主権にかかわる重大な課題です。
また、返還を求める「国際法上の根拠」にも同様の文章が記載されている。
連合国は、第二次大戦の処理方針として領土不拡大の原則を度々宣言しており、ポツダム宣言にもこの原則は引き継がれている。この原則に照らすならば、我が国固有の領土である北方領土の放棄を求められる筋合いはなく、またそのような法的効果を持つ国際的取決めも存在しない。サン・フランシスコ平和条約で我が国は、千島列島に対する領土権を放棄しているが、我が国固有の領土である北方領土はこの千島列島には含まれていない。このことについては、樺太千島交換条約の用語例があるばかりでなく、米国政府も公式に明らかにしている(1956年9月7日付け対日覚書)。
前者の「不法占拠」という言葉もともに、封印されている。
ロシアは、北方領土が「第二次世界大戦でロシア領になった」という認識を示していることもあり、平和条約交渉が本格化しているなかで「言葉選び」に慎重になっている可能性がある。
Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.
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