「私は目にはわからない病気を患っています」「たまに老人の方から席を譲れと怒鳴られることも多々あります」
そんなひとりの女子高校生のツイートが今年1月、拡散した。18歳の彼女が少しでも多くの人に伝えたかったのは、「ヘルプマーク」の存在だった。
「ヘルプマークに救われています。なかなか見た目じゃ理解してもらえないから、辛いことも多くて…」
そうBuzzFeed Newsの取材に語るのは、かえでさん。SNS上に「ヘルプマーク」をつけているポートレートを掲載することで、その認知度を高めていこうと活動する「アイリス+♡」のメンバーだ。
かえでさんは、過去に性被害を受けたトラウマから、解離性同一性障害などを患っている。フラッシュバックにより、過呼吸になるだけでなく、その場で倒れてしまうこともある。見た目では伝わらない病気のひとつだ。
「優先席に座っていたら、おばあさんに怒鳴られたこともあります。説明したんですけど、理解はしてもらえませんでした」
ヘルプマークをつけ始めたのは2年ほど前だった。
「見た目でもわからないから、付けるのには勇気がいりました。どう思われるんだろうとか、嘘をついているんじゃないかと思われたくなくって…」
見えない障害のこと、知ってますか
そもそもヘルプマークとは何か。外見からは分からなくても、援助や配慮を必要とする「見えない障害」を抱える人たちが、自身の状況を伝える、ひとつの手段だ。
心臓機能障害などの内部障害や、言語障害、自閉症を抱えている人、義足や人工関節をつけている人、妊娠初期の人などに向け、東京都が2012年に作成し、徐々に全国に広がっている。
マークの裏には、病状と緊急連絡先を記すことができる。かえでさんも路上で倒れたとき、マークのおかげで助けてもらえた経験があるという。
徐々にマークの存在が伝わり、声をかけられる経験があるとはいえ、認知度の低さを痛感することもある。学校の教員や、医療従事者でも知らない人がいたことには驚いた。
「もっと多くの人に知ってもらいたい。そう思って、『アイリス+♡』の活動に参加するようになりました」
かえでさんのツイートは、約8万リツイートされるほどの話題を呼び、多くの反響があった。
「おなじように病気を抱えている人から、『私もつけてみたいと思います』と連絡があったときはとても嬉しかった。ヘルプマークを通じて、誰にでも優しく、手を差し伸べやすい世の中になってほしいと思っています」
まだネガティブなイメージも
「ヘルプマークは認知度が低いだけではなく、まだまだネガティブなイメージもあるんです」
そう語るのは、「アイリス+♡」の代表、愛迷 みんみんさん(24)だ。幼い頃に患った小児癌の放射線治療の影響で、心臓や肺に疾患を抱えている。駅の階段をのぼっただけで息苦しくなり、満員電車でも動悸が走りやすい。
団体をつくったのは、病気を抱えている人にも、そうでない人にもヘルプマークが浸透してほしい、という思いがあるからだ。みんみんさんは言う。
「私自身、ヘルプマークをつけ始める以前から、嫌な思いをしたという経験を何度か聞いたことがありました。だからどこかで、私もつけることに抵抗感を持っていた。同じような悩みを抱えてる方は、きっとまだまだたくさんいらっしゃると思っています」
『活動を通して、マークを知らない方にはもちろん知ってもらいたいし、見えない病気を抱えた方には、自分の身体を守るためにも積極的に身につけてほしい。私たちの存在が少しでも多くの方の背中を押せるように、伝えていきたいと思っています」
誰かの希望になるために
趣味でポートレートをしていたことがきっかけで、自分が持ってるヘルプマークを組み合わせて発信するというアイデアを思いついた。SNSで投稿したところ、呼びかけに応じてくれた人たちとつくったのが「アイリス+♡」だ。
全国各地から10〜20代の6人の女性たちが参加している。線維筋痛症やてんかん、ADHDなど、抱えている病気はそれぞれだという。
「なかには病気でモデルになる夢を諦めてしまった子もいるんです。見えない体の障害によって、夢を諦めなければいけない女の子たちが、世界にはいる。その世界を変えたいと思っています」
「そうして、病気や障害を持っている人たちが輝ける場所をつくりたい。私たちの活動が同じように病に苦しんでいる誰かの、希望になったらいいなと、思っています」
2月には、新たなメンバーを募集したばかり。今後は写真集をつくったり、各地で講演会を開いたりしながら、活動の幅を少しずつ広げていきたいという。
「アイリス+♡」メンバーたちの写真は以下の記事から。
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