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韓国と創価学会への「悪感情」が… コリア学園や辻元事務所を襲撃の被告、裁判で明かされたこと

立憲民主党の辻元議員の事務所や、在日コリアンらが通う中高一貫校・コリア国際学園、さらに創価学会の施設を立て続けにねらった被告。裁判で起訴事実を認めた。検察側が示したその動機とは。

辻元清美・参議院議員(立憲)の事務所と、インターナショナルスクール「コリア国際学園」、創価学会の施設にそれぞれ侵入し、建物に損壊を与えたり、火をつけたりしようとしたとして建造物損壊などの罪で起訴されている無職・太刀川誠被告(29)の第2回公判が8月25日、大阪地裁(梶川匡志裁判官)であった。

被告はいずれの事件でも起訴事実を認めている。検察側は冒頭陳述で「かねて韓国に対する悪感情を有しており、何らかの損害を与えたいと犯行に及んだ」などと指摘。創価学会に対しても同様に「悪感情」を有していたとした。

起訴状などによると、た被告は3月1日に大阪府高槻市の辻元氏の事務所の窓ガラスをハンマーで割って侵入し、キャビネットを物色。しかし警備会社の警報が鳴り、何も取らずに逃走した。

また、4月5日には同府茨木市のコリア国際学園に侵入し、広場に置いてあった段ボール箱にライターオイルを染み込ませ、ガスバーナーで火をつけて床を焼損させた。

さらに5月4日には、大阪市淀川区の創価学会・淀川文化会館の敷地に侵入。窓ガラスをコンクリートブロックで割った。犯行は3事件とも夜間で、いずれもけが人はいなかった。

髪を切り丸坊主で裁判に臨んだ被告。追起訴されたコリア国際学園と創価学会施設の事件の起訴事実を、いずれも「間違いありません」とはっきりした声で認めた。

検察側は冒頭陳述で、コリア国際学園の事件について、被告が「かねて韓国に対する悪感情を有し、韓国人に何らかの損害を与えたいと考えて犯行に及んだ」と指摘。創価学会に対しても同様に「悪感情」があり、損害を与えようとしたとした。

証拠調べの手続きでは、コリア国際学園校長の「歴史問題や日韓関係の悪化を受け、言われなき抗議や嫌がらせを受けてきました」「民族、国籍関係なく、すべての子どもたちが安心・安全に学ぶ権利があるはずです」などという言葉が紹介された。

この事件をめぐっては、「名簿を盗み、韓国人を襲うつもりだった」という被告の供述も報じられているが、弁護人が調書を証拠として採用することに同意せず、裁判では詳しい供述内容や動機は判明しなかった。一方、弁護人は被告が被害3者と示談交渉をしていることも明らかにした。

なお、BuzzFeed Newsは2回にわたり拘置施設で面会取材を申し込んだが、受け入れられていない。

関係者「社会のブレーキが…」

今回の事件で被害を受けたコリア国際学園は2008年に設立された中高一貫のインターナショナルスクール。

多様性を理念として掲げており、在校生は在日コリアンや留学生らのほか、日本人もいる。なかでも、2021年に新設された「K-POP・エンターテイメントコース」の一期生は全員日本人だったという。

同学園理事の鄭甲寿さんは、BuzzFeed Newsなどの取材に対し、こう語った。

「このグローバル化の時代で、出自に関係なく手を繋ぎあえる、視野の広い子どもたちを育てるという理念の学校。当初は反対運動や、差別的な嫌がらせもあったけれど、そういうものを乗り越えて、地域とも仲良く交流できるようになったなかで起きてしまった、恐ろしい事件ですよね」

在日コリアンをめぐっては、2021年8月に京都の「ウトロ地区」を狙った放火事件が起きた。逮捕・起訴された被告は在日コリアンらに恐怖を感じさせたかったなどと述べている。

学校側から放火の発生を聞いたとき、このウトロの事件が頭をよぎったという。自らも在日コリアン3世である鄭さんは、ヘイトクライムへの「連鎖」にこう不安を吐露し、動機の究明を求めた。

「ヘイトスピーチから、一歩間違えれば誰かが死んでしまうような放火のような犯罪までエスカレートしてきたのは、本当に怖い。また同じような考えを持った人物による事件が続く可能性は十分ありますよね」

「韓国に親しみを覚える若い子が増えたように、よくなったこともある。でも、どこかでブレーキがかかりにくい社会になっているのかもしれませんね。油断ができない、用心しないといけない、そんな嫌な状況になってしまったと感じています」

次回の裁判は10月13日。被告人質問などが2時間にわたり予定されている。