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「亡くなっても、なお差別」在日コリアンの父に対する“ヘイト投稿” 娘が裁判で訴えたこと

「密入国では?犯罪ですよね?」というリプライは事実ではなく、父親への名誉を毀損しているなどと主張。違法で差別的な言動であるとして、損害賠償など約200万円を求めている。

Twitter上でヘイトスピーチを受けたとして、在日コリアンの父を持つジャーナリストの安田菜津紀さんが投稿者を訴えた裁判の第1回口頭弁論が1月19日、東京地裁であった。

安田さんは意見陳述で自らが感じた恐怖と怒りを訴え、「差別」が問題であることを示す判決が出るよう求めた。一方、投稿者側は答弁書で「深く反省している」とし、和解案を提示する構えを示したという。

(*この記事にはヘイトスピーチの文言が直接含まれます。閲覧にご注意ください)

Twitteより

安田さんは中学生の頃に父親を亡くしており、高校時代に戸籍を手にするまで、在日コリアン2世だという父親の出自を知ることはなかった。

訴状などによると、西日本在住の投稿者は安田さんが父親に関する記事をTwitterに投稿したところ、「密入国では?犯罪ですよね?逃げずに返信しなさい」とリプライを寄せた。

安田さんは投稿が事実ではなく、父親への名誉を毀損し、遺族による「敬愛追慕の情」を害しているなどと主張。違法で差別的な言動だとして、損害賠償など約200万円を求めている。

1月19日の第1回口頭弁論。安田さんは意見陳述で、投稿について「仕方がないで終わらせたくありませんでした」と話し、以下のように訴えた。

「祖父母や父たちが、 亡くなってもなお、差別され、尊厳を踏みにじられるのかという強い憤りが湧き上がりました。同時に、自分のルーツによっていつまでも、排除の対象として見られることに、底知れない恐怖を抱かずにはいられませんでした」

「こうした問題を放置すれば、同じアカウントがまた違う誰かを攻撃するかもしれません。見ないようにしても、それは問題の先送りでしかないでしょう」

「差別を認めてもらうハードル」の存在

Kota Hatachi / BuzzFeed

提訴会見に臨む安田さん(昨年12月)

日本には理念法である「ヘイトスピーチ対策法」があるが、包括的に差別を禁止する法律は存在しない。

民事訴訟の賠償額の算定にあたって、差別が考慮された例は過去にもある。昨年には、差別を違法だと指摘する判決が東京高裁で出ているが、明確に認められているとまでは言えないのが実情だ。

一方、安田さんが起こした発信者情報開示請求の訴訟の判決では、このリプライについて「原告の父親の出自が朝鮮人であることをもって、密入国者であると摘示した、不当な差別的言動と言わざるを得ない」と明言している。

安田さんは意見陳述でこの点にも言及。「今回の裁判でも、本件が『差別』の問題であることを明確にした判決が出されることを願っています」と裁判長に訴えた。

安田さんは取材に「そもそも差別を認めてもらうハードルが高く、そこにエネルギーを割かなければいけないという現実がある。果たして声が届くのか不安です」と語った。

投稿者側はこの日の裁判を欠席したが、安田さんの代理人弁護士によると、提出した答弁書には「深く反省している」と記載されていた。投稿者側は、和解案を提示する構えを見せているという。

安田さんの投稿には、別のアカウントから「チョン共が何をして、なぜ日本人から嫌われてるかがよく分かる」「お前の父親が出自を隠した理由は推測できるわ」という返信がついている。安田さんはこの返信をした人物に対しても、同様の訴訟を起こしている。