11月9日、「尊いの手話」というツイートが拡散しました。

「天に召されるしぐさをする」と書かれ、何かの本を撮影したようにも見えます。
これはそもそも、出典不明のコラージュ画像でした。
当該ツイートは少なくとも7万7千回以上リツイートされ、18万7千回以上の「いいね」がついていました。
しかし、この手話は「飛ぶ」や「鳥」を意味するものでした。「コラ画像では」などという指摘が相次ぎ、ツイートはすでに削除されています。
UPDATE
出回っていたコラージュ画像は、全国ろうあ連盟が監修した『子どものための手話事典』(汐文社)の「鳥」の項を加工したものだったことがわかりました。
この騒動について、耳の聴こえない女子大生がマンガを投稿し、再び話題を呼んでいます。

ツイートしたのは、美大生のコノミさん(19)。
小さい頃から基本的に手話を使ってコミュニケーションをとって過ごしてきました。
拡散していたツイートを見て、当初は「尊いの手話が新しくできた」と誤解してしまっていたそうです。BuzzFeed Newsの取材にこう答えます。
「見たことも聞いたことも無い組み合わせだけど、最近ネット上で『推しが尊い』というような言い回しで”尊い”が俗語として広がりつつあるから、手話もそれに従って新しく制定されたのかなと思っていました」
誤解をしてしまったコノミさんは、こんなマンガを投稿してしまいました。

ろう者の幼馴染との会話を描いたもの。実際、周りのろう者にも、誤解は広がっていました。
「私の友人も『あれ、“尊い”の手話なんだ!と思った』と言っていましたし、他のろう者のところでも”尊い”ってこうやるんだね!と両手でパタパタしてみせたりする人もいたようです」
その後、コラ画像だったことに気が付いたコノミさん。訂正漫画をすぐ投稿することにしました。
「自分のように本当の手話だと勘違いしている人がたくさんいるのではないか、また、自分が最初に描いた漫画によってますます勘違いする人が増えてしまうのではないかと思い、慌てて訂正漫画を描いて投稿しました」
「緊急のお知らせ」と書いた訂正マンガは、1万以上リツイートされ、話題になりました。

それでも、もともとの画像の拡散力には及びません。
「広がっていた画像も、少なくとも共感を得られやすい魅力的なところもあったんだろうなとは思います」
「ただ、今でも両手をパタパタさせる動きが“尊い”の手話だと思い込んでいる方がたくさんいると思うと、気がかりです」
コノミさんは、正しい「尊敬」「尊い」「敬う」の手話も、合わせて紹介しています。

「Twitterで一度拡散されてしまったら、歯止めが利かないことの恐ろしさを痛感しました」
「今回、私の投稿した漫画でそういった誤解を少しでも多く解くことが出来たのであれば、投稿して良かった。これからはTwitterでの言動や、情報の真偽の見分けも慎重にしていきたいと思っています」