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沖縄をめぐる止まらない「デマ」 知事選への影響を防ぐことはできるのか

ネット上には、すでに不確かな情報が流れ始めている。

翁長雄志知事の死去に伴う沖縄県知事選が9月13日に告示される。

日米安保の要として、米軍基地を押しつけられた沖縄。基地問題が大きな論点となるなか、ネット上では候補者をめぐる不確かな情報が流れ始めている。

いわゆる「フェイクニュース」や「デマ」は人々の分断を深め、健全な民主主義を妨げる。これらと戦うため、メディアによるファクトチェックが始まる。

沖縄をめぐるデマは、ずっと拡散されてきた

沖縄をめぐっては、かねてからインターネット上に「バッシング」にも近い、根拠なき情報が広がっている。

「沖縄は基地で食べている」「もともと基地があった周りに人が住み始めた」などという古典的なデマの他、基地に反対する人たちに対して「反日」「外国人」「雇われている」などと根拠なく中傷する内容も少なくはない。

たとえば2017年末には、宜野湾市で相次いで起きた米軍ヘリをめぐるトラブルについて、ネット上で「自作自演」などという声があがり、まとめサイトなどに掲載されたことで拡散した。

被害にあった保育園や小学校に「やらせだ」「文句を言うな」などと誹謗中傷の電話がかかる事態にまで発展した。

メディアにも広がるデマ情報

こうした情報は近年、ネットに止まらず実社会にも広がっている。

作家の百田尚樹氏は2015年、自民党の国会議員向けの勉強会で「普天間基地は田んぼの中にあった。周りには何もない」と発言し、批判を浴びた。これはもちろん、誤った情報だ。

また、2017年にはTOKYO-MXTVの番組「ニュース女子」(制作・DHCテレビジョン)が、基地反対派は「日当をもらっている」「テロリスト」などと報じ、問題視された。

これはネット上に広がっていた情報と類似しており、十分な取材や確認なしに報じられたものだった。放送倫理・番組向上委員会(BPO)が「重大な放送倫理違反」と厳しく糾弾し、MX側はのちに謝罪した。

さらに2018年には産経新聞が、「沖縄の交通事故で米兵が日本人を救出し、後続車にはねられた」という自社の報道が誤りだったとして、お詫びしたうえで記事を削除した。

「沖縄2紙が報じないニュース」などと地元紙批判を交えて発信されていたこの記事の端緒は、やはりインターネットだった。

なぜ、「沖縄デマ」は広がるのか

故・翁長雄志知事は生前、BuzzFeed Newsの単独取材に対し、沖縄をめぐるデマについてこう言及していた。

「沖縄がいかに大変な状況に置かれているのか、昔より理解が深まったかと思っていましたが、決してそんなことはありませんでした」

「目の前に落ちたものを『自作自演』というなんて、今までにはない社会現象でしょう。これだけのバッシングを受けたことは、ありませんでした。こうした状況が続くことに恐ろしさ、危なさを感じます」

さらに相次ぐデマを「これはいじめ」と表現し、こう分析していた。

「こうした一方的な『いじめ』は、たとえば福島の原発事故でも、宮崎の鳥インフルエンザなどでも起きている。沖縄でも起きる背景には、歴史的な意味合いと基地問題があることが大きい」

知事選に向け、ファクトチェックが始まる

「沖縄では基地問題をめぐって長年いろいろな議論が続けられてきた。対立が深刻であるがゆえに、事実と異なるいろいろな言説が出やすい状況になっている」

そう語るのは、日本における「ファクトチェック」を推進するNPO団体「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」の楊井人文事務局長だ。

FIJは9月6日、「FactCheck沖縄県知事選2018プロジェクト」を立ち上げると発表した。

デマの疑いがある情報について、有志が人力で集めるほか、東北大学とスマートニュースが開発したシステムでも自動的に収集し、チェックしていく。メディアや個人の参加を募っており、BuzzFeed Newsも参加する予定だ。

FIJでは2017年の衆議院議員選挙でもファクトチェックプロジェクトを実施。BuzzFeed Newsも参加し、検証記事を公表してきた。

対象となる言説は

ファクトチェックの対象は、メディアや有力者が発信した情報に限らない。一般市民がSNSを介して発信した情報も対象になりうる。

FIJではこれに合わせ、ファクトチェックのガイドラインも公表した。ここでは、「客観的に検証可能な事実について言及した事項に限定して真実性・正確性を検証し、その結果を発表する営みを目指す」などとしている。