Dappiは「従業員」が投稿、発信元会社が認めるも「私的なもの」「むしろ被害者」と関与否定、争う姿勢

    フォロワー数17万人以上と、拡散力の大きいTwitterアカウント「Dappi」。主に野党やマスコミ批判の文脈から、国会答弁を編集した動画や、DHCテレビ「虎ノ門ニュース」の動画、インフォグラフなどを公開。その発信内容には不正確な点や誹謗中傷と批判されるものもあり、問題視されてきた。

    Twitter上で野党批判を繰り返し、不正確な情報や誹謗中傷が問題視されていたアカウント「Dappi」の発信元の回線契約者が、東京都内のWEB制作会社だった問題。

    立憲民主党の小西洋之・参議院議員と杉尾秀哉・参議院議員が「Dappi」のツイートで名誉を毀損されたとして、WEB制作会社とその社長ら役員2人に計880万円の損害賠償などを求めた訴訟が2月28日、東京地裁(小川理津子裁判長)で開かれた。

    裁判でのやりとりなどによると、WEB制作会社側は、「Dappi」の投稿者が「従業員」であると認めたうえで、業務とは関係のない「私的なもの」として、会社としての関与は否定し、棄却を求め争うとみられる。

    まず、経緯を振り返る

    フォロワー数17万人以上と、拡散力の大きいTwitterアカウント「Dappi」。主に野党やマスコミ批判の文脈から、国会答弁を編集した動画や、DHCテレビ「虎ノ門ニュース」の動画、インフォグラフなどを公開。その発信内容には不正確な点や誹謗中傷と批判されるものもあり、問題視されてきた。

    訴状などによると、「Dappi」は2020年10月25日、森友学園の問題に関連し、両議員について、産経新聞に掲載された作家・門田隆将氏のコラム記事を引用しながら、「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺」などとツイート。

    両議員は財務省本省に説明を求めたことはあるものの、亡くなった職員に説明を求めたり面談を求めたりした事実はないと主張し、ツイートは両議員が職員を自死に追いやったとも取られる内容で、名誉を毀損したと訴えている。

    また、WEB制作会社と社長らに損害賠償を求めている理由について、「Dappi」の投稿は同社の「役員、従業員または業務委託を受けた者であると推認される」と主張している。

    「Dappi」が平均1日6件のツイートを継続しており、投稿が平日午前9時〜午後10時に集中、土日にほとんどないことや、動画の編集や文字起こしなど、一定の作業が必要な投稿がほとんどであることがその根拠だ。

    そのうえで、訴状では、「組織的に業務として平日の業務時間に各投稿の素材となる動画の切り抜きや投稿文面を編集し、投稿を行っていることが明らか」ともしている。

    WEB制作会社の法人登記によれば、同社はサイトの制作やコンサルティング業務、インターネット広告の運営管理業務などを担っている。民間の信用調査機関によると、得意先の一つは「自由民主党」。政党支部や大臣経験者との取引も確認された。

    同社の社長が、「自民党の金庫番」「影の幹事長」の異名を持つ党本部事務方トップ・元宿仁事務総長の親族であることや、農水相や金融担当相を歴任した山本有二衆院議員(比例四国)と「友人関係」にあることが、BuzzFeed Newsのこれまでの取材で明らかになっている。

    会社側は「むしろ被害者」

    2月28日に東京地裁で開かれた2回目の裁判では、WEB制作会社側が予定している主張が明らかになった。

    裁判長と原告側のやりとりや原告側の説明によると、WEB制作会社側は提出した書面で、投稿が同社の従業員によるものとは認めているが、業務とは無関係であり、「私的なもの」という主張をする見通しを明らかにしているという。

    さらに会社側は、両議員側が発信者情報開示請求訴訟を起こした昨年3月に、初めて「Dappi」アカウントの存在を知ったとし、同社や社長、役員らの関与を否定。「むしろ被害者」ともしているという。

    両議員側は「投稿頻度や内容などからして、就業時間中に片手間にできるものではない」などと反論をし、会社の関与があったと主張していく方針。次回期日は4月11日となった。

    裁判をめぐっては、WEB制作会社の当初の弁護人が2人が裁判の直前の2月1日付で辞任し、交代するという事態もあった。辞任理由などについて確認したが、所属事務所を通じ、「辞任したので何もお話することはございません」とだけコメントしている。

    両議員は「Dappi」のツイートで引用されていたコラムを掲載した産経新聞社と、執筆者である作家の門田隆将氏に対しても、損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしている。