「平日の昼間から、なぜ」野党批判繰り返した「Dappi」の正体は誰?立憲議員が提訴し会見

    Twitterアカウント「Dappi」の発信元回線契約者であるWEB制作会社を相手取った訴訟が始まり、提訴した立憲民主党の参院議員2人が会見を開いた。会社と自民党との関係が判明しているなか、投稿の背景は明らかになるのか?

    Twitter上で野党批判を繰り返し、不正確な情報や誹謗中傷が問題視されていたアカウント「Dappi」の発信元の回線契約者が、東京都内のWEB制作会社だった問題。

    立憲民主党の小西洋之・参議院議員と杉尾秀哉・参議院議員が「Dappi」のツイートで名誉を毀損されたとして、WEB制作会社とその社長ら役員2人に損害賠償などを求めた裁判が12月10日、始まった。

    今後、裁判を通じて投稿の背景が明らかになるのかーー。両議員は同日に会見を開き、「投稿の目的と、継続的な行為が何によって支えられているのかを知りたい」などと語った。

    訴状などによると、「Dappi」は2020年10月25日、森友学園の問題に関連し、両議員について、産経新聞に掲載された作家・門田隆将氏のコラム記事を引用しながら、「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺」などとツイート。

    両議員は財務省本省に説明を求めたことはあるものの、亡くなった職員に説明を求めたり面談を求めたりした事実はないと主張し、ツイートは両議員が職員を自死に追いやったとも取られる内容で、名誉を毀損したと訴えている。

    この日、東京地裁には傍聴券を求め約60人が集まり、抽選となった。ただ、13時半から始まった裁判は、次回期日などの調整をしただけで終わった。

    参議院の本会議ということもあり、公判には両議員は参加せず、代理人のみが参加した。また、WEB制作会社側は答弁書で争う姿勢を見せたが、代理人を含め、だれも法廷に姿を見せなかった。認否を含めた主張も、次回に持ち越された。

    被告となっているWEB制作会社の法人登記によれば、同社はサイトの制作やコンサルティング業務、インターネット広告の運営管理業務などを担っている。

    民間の信用調査機関によると、得意先の一つは「自由民主党」。政治資金収支報告書からも、同社が自民党都連や小渕優子・衆院議員(群馬5区)の資金管理団体、すでに解散した党支部との間で、サイトや資料制作などの取引をしていたことが裏付けられた。

    また、同じく被告であるこの会社の社長が、「自民党の金庫番」「影の幹事長」の異名を持つ党本部事務方トップ・元宿仁事務総長の親族であることや、農水相や金融担当相を歴任した山本有二衆院議員(比例四国)と「友人関係」にあることが、BuzzFeed Newsのこれまでの取材で明らかになっている。

    「完全な組織的な行為」と批判

    今回の裁判では、このWEB制作会社が組織的に「Dappi」に関与していたのか、投稿者が誰で、何の目的を持っていたのかという点が判明するかどうかに、注目が集まっている。

    裁判後に開かれた会見で小西議員は、今回の件に限らず「Dappi」がたびたび、野党議員の国会答弁を編集した動画を、答弁直後に配信してきたことを「民主主義を歪める、絶対に許してはいけない、放置してはいけない行為」と批判。こう語った。

    「野党議員の質問を全く違う内容に意図的に作り替え、巧みな言葉や動画を貼り付けて名誉人格を貶める違法行為を繰り返してきた。質疑の内容や専門用語などを理解したうえで、意図的にそれを全く違うものを作って名誉毀損をしている。完全な組織的な行為だと思っています」

    「なぜ、平日の真っ昼間からそうした行為を繰り返しやっているのか。その目的と、継続的な行為が何によって支えられているのかを知りたい。趣味なのか業務なのか、訴訟プロセスの中で加害者の事実関係を追求していかなければいけない」

    杉尾議員も「言論表現の自由は最大限尊重されるべきだが、全く事実に反する情報が拡散していた事実は看過できない」と訴訟に至った経緯を説明。

    「一連のツイートは何らかの政治的意図を持って書き込みをしているというふうにしか読めない。政治的なプロパガンダと言わざるを得ません。この裁判のなかで、事実関係をできる限り明らかにしていきたい」

    WEB制作会社と投稿者の関係は?

    両議員側は訴状で、WEB制作会社や社長らに損害賠償を求めている理由について、「Dappi」の投稿は同社の「役員、従業員または業務委託を受けた者であると推認される」と主張している。

    「Dappi」が平均1日6件のツイートを継続しており、投稿が平日午前9時〜午後10時に集中、土日にほとんどないことや、動画の編集や文字起こしなど、一定の作業が必要な投稿がほとんどであることがその根拠だ。

    訴状では、「組織的に業務として平日の業務時間に各投稿の素材となる動画の切り抜きや投稿文面を編集し、投稿を行っていることが明らか」ともしている。

    一方、発信者情報開示請求の裁判の判決などによると、WEB制作会社側はその過程で「Dappi」について、「(発信元回線の)契約者ではなく、投稿者が発信した情報」と主張している。

    両議員の代理人である竹内彰志弁護士は会見で、「契約者である会社に対してプロバイダから確認が行き、投稿者代理人から反論がきているということは、契約者と投稿者に情報を連携するつながりがあると言えます」と指摘。

    「投稿自体は自然人(権利義務の主体となる個人)が行為を行っているという理屈も成り立ちますので、投稿者と発信者が違うという理屈で回答している可能性があります。会社(法人)と個人(自然人)のあいだに指揮命令系統があったかは、こちらとしてはわかりません」

    「ただ、一般的に会社で従業員が回線を勝手に使って名誉毀損の投稿をした場合の例で言えば、会社側が当該従業員に対して事実関係を調査し、迷惑をかけた相手に対して説明なり、通知をするはずです。そのような対応は現段階で特にありません」

    そのうえで、訴訟を通じて両者の関係性を明らかにしていく必要があるとの見解を示した。

    国会での追及は?

    なお、発信者情報開示請求の訴訟の過程で、投稿者代理人はツイートについて、「時系列に沿って述べたもの」などとして、両議員が自殺に追いやったようには受け取れず、権利侵害には当たらないとして、以下のように訴えていた。

    「国会議員の活動自体や国会議員の活動を含めた新聞報道批判について、匿名による表現の自由は保障されるべきであり、安易な発信者情報の開示により、政治的な魔女狩りの対象となることは避けなければならない」

    しかし、判決ではこれらの主張を退け、「本件職員が原告らから追及を受けた旨を述べていると理解するほかない表現である」「投稿が原告らの権利を侵害することは明らかである」と、両議員側の訴えを認めている。

    両議員は会見で、今後、「Dappi」について刑事告訴をする可能性や、背景について国会で追及する可能性にも言及した。

    杉尾議員は「SNSにおけるプロパガンダや政治的なことを含めた情報操作を、誰かが民間企業を隠れみのとしてやっているという実態が仮にあるとすれば、民主主義の根幹に関わる問題として、何とかして歯止めをかけなければならない」と述べた。

    また、小西議員は「(WEB制作会社は)客観的に見て自民党との関係がある。その点は被害者として追及していかなければいけない。社長には社会に対する説明責任として、ぜひ裁判に出てきていただきたいと思います」と語った。

    両議員は「Dappi」のツイートで引用されていたコラムを掲載した産経新聞社と、執筆者である作家の門田隆将氏に対しても、損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしている。