ついに明らかに? Dappi投稿者の「氏名」開示、東京地裁が命じる。社長らの証人尋問も実施へ

    「Dappi」が会社の業務として運用されていたのか、いち従業員の私的な投稿だったのか、否かが争われている裁判。「投稿者」の氏名を含む資料の開示を地裁が命じ、社長らの証人尋問も決まった。

    Twitter上で野党批判を繰り返し、不正確な情報や誹謗中傷が問題視されていたアカウント「Dappi」の発信元が、東京都内のWEB制作会社だった​問題。

    立憲民主党参議院議員の小西洋之氏と杉尾秀哉氏が「Dappi」のツイートで名誉を毀損されたとして、WEB制作会社と社長ら役員2人に計880万円の損害賠償などを求めた訴訟の弁論が3月17日、あった。

    この日は、東京地裁(新谷祐子裁判長)が3月13日付で、投稿者の氏名などの開示を命じたことが明らかになった。また、社長ら役員2人の証人尋問も採用された。

    フォロワー数17万人以上と、拡散力の大きいTwitterアカウント「Dappi」。

    主に野党やマスコミ批判の文脈で、国会答弁を編集した動画や、DHCテレビ「虎ノ門ニュース」の動画、インフォグラフなどを公開。その発信内容には不正確な点や誹謗中傷と批判されるものもあり、問題視されてきた。

    訴状などによると、「Dappi」は2020年10月、森友学園の問題に関連し、両議員について、産経新聞に掲載された門田隆将氏のコラム記事を引用しながら、「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺」などとツイート。

    これについて、両議員側は亡くなった職員に説明を求めたり、面談を求めたりした事実はないとし、ツイートにより名誉を毀損されたとして発信元の回線を契約していた東京都内のWEB制作会社と、社長ら役員2人に損害賠償請求の訴訟を起こしている。

    法人登記によれば、同社の業務はサイト制作やコンサルティング、インターネット広告の運営管理など。民間の信用調査機関によると、得意先の一つは「自由民主党」。政党支部や大臣経験者との取引も確認されており、社長が党本部事務方トップ・元宿仁事務総長の親族であることや、大臣経験者と友人関係にあることも明らかになっている。

    裁判において、会社側は「Dappi」は従業員が会社の業務時間中に、会社からの貸与パソコンを使って投稿を「私的」に繰り返していたもので、ほかの従業員らが気がつくことはなかったと主張。会社側はむしろ「被害者」としている。

    一方、両議員側は、国会中継などを編集した「Dappi」の動画投稿などにかかる手間の多さや、平日デイタイムを中心にした投稿時間、事案の発覚後に注意があっても投稿が続いたことや、懲戒処分に至ったのが発覚から7ヶ月後だったことなどから、「業務として行っていた」ものだと指摘している。

    「投稿者の氏名」開示を命じた理由は?

    「Dappi」が会社の業務として運用されていたのか、いち従業員の私的な投稿だったのか、否かが争われている裁判。

    両議員側は、懲戒処分に関連する証拠資料として提出されていた投稿した社員とされる人物の給与明細について、氏名などの黒塗りを外したものを提出するよう改めて求めていたが、東京地裁は3月13日付で、開示を命じる決定を出した。

    両議員の弁護団によると、給与明細では、2020年12月〜21年2月までの間、月額110万円だった給与が処分により99万円に減給されていたことが明らかになっている。しかし、氏名は従業員の個人情報であることを理由に黒塗りにされている。

    弁護団は一定程度の役職者である可能性もあることに加え、仮に会社側の主張通り業務と無関係の投稿だった場合には当該従業員が訴えの対象者となるとしていた。

    これについて、東京地裁は「(役員2人が)本件投稿者であるか否かという点」が争点になっており、「投稿が業務として行われたものであるか否かの検討に当たっても重要な意味をもつ」と指摘。

    そのうえで、2021年11月〜22年3月における投稿者の給与明細(氏名が記載された部分を含む)を2週間以内に開示するよう同社に命じた。この間に、会社側は即時抗告を含め、対応を検討することになる。

    また、17日の弁論では社長ら役員2人の証人尋問について協議され、次回期日(6月5日13時半から)での尋問予定が決まった。

    なお、両議員は一連の事案の発端となったコラム記事について、産経新聞と門田氏に対しても訴訟を起こしている。

    この訴訟については、東京地裁が昨年11月の判決で、産経新聞と門田氏に対し、「『つるし上げ』という集団的な批判や問責を行うことによって(両議員が)当該職員を自殺に追い込んだと受け止められるおそれがある」などと指摘。両議員それぞれに110万円の損害賠償を支払うよう命じた。

    産経新聞社と門田氏は控訴しており、東京高裁で4月12日に控訴審判決が予定されている。

    UPDATE

    控訴審判決の日程を修正いたしました。