「懲戒処分は口頭で…」 Dappi発信元のWEB制作会社が裁判で新主張。仕事中に「私的に投稿」の従業員に対し

    WEB制作会社側はこれまでの裁判で、「Dappi」の投稿が同社の従業員によるものとは認めているが、業務とは無関係な「私的なもの」であり、会社側はむしろ「被害者」と主張している。

    Twitter上で野党批判を繰り返し、不正確な情報や誹謗中傷が問題視されていたアカウント「Dappi」の発信元が、東京都内のWEB制作会社だった問題。

    立憲民主党参議院議員の小西洋之氏と杉尾秀哉氏が「Dappi」のツイートで名誉を毀損されたとして、WEB制作会社と社長ら役員2人に計880万円の損害賠償などを求めた訴訟の弁論が9月30日、東京地裁(新谷祐子裁判長)であった。

    WEB制作会社側はこれまで、投稿は1人の従業員が業務中に私的に行っていたもので、会社側は把握しておらず、無関係であると主張してきた。

    従業員は減給3ヶ月の懲戒処分を受けたともしているが、処分に関する文書通知や調査報告書が存在しないことをこの日、新たに明らかにした。

    フォロワー数17万人以上と、拡散力の大きいTwitterアカウント「Dappi」。主に野党やマスコミ批判の文脈から、国会答弁を編集した動画や、DHCテレビ「虎ノ門ニュース」の動画、インフォグラフなどを公開。その発信内容には不正確な点や誹謗中傷と批判されるものもあり、問題視されてきた。

    訴状などによると、「Dappi」は2020年10月、森友学園の問題に関連し、両議員について、産経新聞に掲載された作家・門田隆将氏のコラム記事を引用しながら、「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺」などとツイート。

    これについて両議員側は、亡くなった職員に説明を求めたり面談を求めたりした事実はないとし、ツイートにより名誉を毀損されたと主張している。両議員は産経新聞と門田氏に対しても、同様の訴訟を起こしている。

    両議員側は「Dappi」について、以下の点から、発信元のWEB制作会社が業務として行ったと主張している。

    • 平均1日6件のツイートを継続していること
    • 投稿が平日午前9時〜午後10時に集中し土日にほとんどないこと
    • 動画の編集や文字起こしなど、一定の作業が必要な投稿がほとんどであること


    WEB制作会社の法人登記によれば、同社はサイト制作やコンサルティング、インターネット広告の運営管理などを担っている。民間の信用調査機関によると、得意先の一つは「自由民主党」。政党支部や大臣経験者との取引も確認された。

    同社の社長が、「自民党の金庫番」「影の幹事長」の異名を持つ党本部事務方トップ・元宿仁事務総長の親族であることや、農水相や金融担当相を歴任した山本有二衆院議員(比例四国)と「友人関係」にあることが、BuzzFeed Newsのこれまでの取材で明らかになっている。

    懲戒処分は口頭で、では調査は?

    WEB制作会社側はこれまでの裁判で、「Dappi」の投稿が同社の従業員によるものとは認めているが、業務とは無関係な「私的なもの」であり、会社側はむしろ「被害者」としている。

    その主張によると、従業員は業務時間中に会社からの貸与パソコンを使って投稿を繰り返していたという。

    「Dappi」の投稿は平日の午前9時〜午後10時に集中し、1日平均6件ほどであることが明らかになっている。作業を再現したところ、動画のダウンロードから投稿まで20分ほどだったと、業務中でも作業が可能であるとの姿勢を示している。

    さらに、動画編集作業は通常業務でも行うことや、テレワークを実施していたことなどから、ほかの従業員らが気がつくことはなかった、としている。

    また、会社側は2021年4月にプロバイダ側から意見照会があったことで投稿を知り、社長による聞き取り調査を経て当該の従業員が11月に減給10%(3ヶ月)の懲戒処分を受けたとしている。

    調査から処分まで期間が空いたことについては、「大きな問題になるとは考えていなかった」ために当初は注意にとどまっていたとし、10月ごろから報道関係者らの問い合わせや「押しかけ」で営業活動が著しく害されたため、減給10%(3ヶ月)の懲戒処分に切り替えたとしている。

    ただ、双方の弁護士によると、今回の弁論では、両議員側が求めていた「懲戒処分の通知書」や「調査報告書」について、会社側はいずれも存在しないと回答した。懲戒処分は口頭で伝えられ、調査報告書は作成されなかったという。

    そのほか減給処分を示す給与明細の写しが提出され、原告側は保管状況などの説明を求めた。なお、従業員はいまも在籍中だという。

    両議員側の弁護士は「一般的に懲戒処分を出したのであれば、労働者から争われたときのための証拠として口頭ではなく書面で通知するはずではないか」と疑問を呈している。

    さらに、聞き取り調査以降も投稿が続いていたことや、動画制作における国会中継や「虎ノ門ニュース」の視聴時間が勘案されていないことなどについても、「証拠が十分揃っているとはいえない」としている。

    次回裁判は11月25日で、現状の主張のまとめなどが提出される予定だ。