Dappi「投稿した従業員は処分後も在籍中」とWEB制作会社。プライバシーを理由に詳細明かさず、裁判長は…

    フォロワー数17万人以上と、拡散力の大きいTwitterアカウント「Dappi」。主に野党やマスコミ批判の文脈から、国会答弁を編集した動画や、DHCテレビ「虎ノ門ニュース」の動画、インフォグラフなどを公開。その発信内容には不正確な点や誹謗中傷と批判されるものもあり、問題視されてきた。

    Twitter上で野党批判を繰り返し、不正確な情報や誹謗中傷が問題視されていたアカウント「Dappi」の発信元の回線契約者が、東京都内のWEB制作会社だった問題。

    立憲民主党の小西洋之・参議院議員と杉尾秀哉・参議院議員が「Dappi」のツイートで名誉を毀損されたとして、WEB制作会社とその社長ら役員2人に計880万円の損害賠償などを求めた訴訟の弁論が5月27日、東京地裁(新谷祐子裁判長)であった。

    WEB制作会社側はこれまで、Dappi名義の投稿は「従業員による私的なもの」としていたが、その従業員は1人であり、社内で懲戒処分を受けたあとも在籍中であるとの主張を加えた。

    ただ「プライバシー保護」を理由に詳細を明らかにしておらず、新谷裁判長はより詳しい回答を求めた。

    まず、経緯を振り返る。

    フォロワー数17万人以上と、拡散力の大きいTwitterアカウント「Dappi」。主に野党やマスコミ批判の文脈から、国会答弁を編集した動画や、DHCテレビ「虎ノ門ニュース」の動画、インフォグラフなどを公開。その発信内容には不正確な点や誹謗中傷と批判されるものもあり、問題視されてきた。

    訴状などによると、「Dappi」は2020年10月、森友学園の問題に関連し、両議員について、産経新聞に掲載された作家・門田隆将氏のコラム記事を引用しながら、「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が「1時間吊るしあげた翌日に自殺」などとツイート。

    これについて両議員側は亡くなった職員に説明を求めたり面談を求めたりした事実はないとし、ツイートにより名誉を毀損されたと主張している。

    両議員は産経新聞と、門田氏に対しても同様の訴訟を起こしているが、WEB制作会社と社長らにも損害賠償を求めている理由については、「Dappi」の投稿が同社の「役員、従業員または業務委託を受けた者であると推認される」と指摘。

    「Dappi」が平均1日6件のツイートを継続しており、投稿が平日午前9時〜午後10時に集中、土日にほとんどないことや、動画の編集や文字起こしなど、一定の作業が必要な投稿がほとんどであることを根拠としている。

    WEB制作会社の法人登記によれば、同社はサイトの制作やコンサルティング業務、インターネット広告の運営管理業務などを担っている。民間の信用調査機関によると、得意先の一つは「自由民主党」。政党支部や大臣経験者との取引も確認された。

    同社の社長が、「自民党の金庫番」「影の幹事長」の異名を持つ党本部事務方トップ・元宿仁事務総長の親族であることや、農水相や金融担当相を歴任した山本有二衆院議員(比例四国)と「友人関係」にあることが、BuzzFeed Newsのこれまでの取材で明らかになっている。

    「Dappi」社員の処分内容は?

    WEB制作会社側はこれまでの裁判で、投稿が同社の従業員によるものとは認めているが、業務とは無関係であり、「私的なもの」と主張。同社や社長、役員らの関与を否定。「むしろ被害者」ともしていた。

    5月27日の裁判で提出した準備書面では、「完全に私的な行為として業務と無関係に行われたもの」と改めて主張した。

    一方、原告側の質問に対して、Dappiアカウントで投稿していた従業員は1人だとしたうえで、会社からの貸与パソコンを使っていたこと、社員数は20人ほどだと説明した。

    また、昨年4月にプロバイダ側から意見照会があり投稿者が発覚したあと、社長による1週間の聞き取り調査を経て減給10%(3ヶ月)の懲戒処分を受けたとした。その社員はいまも在籍中だという。

    一方で、投稿した従業員の業務内容などについては、プライバシー保護を理由に回答をしなかった。

    原告側の会見などにより会社側に報道関係者らが押しかけるなどの事態が起き、「営業や関係者の私生活の平穏が害された」ことから、当該投稿者である従業員に同様のリスクが及ぶことを防ぐためとしている。

    ただ、この日の裁判では、新谷裁判長から「差し控えが大部分を占めている。少なくとも会社の業務内容や全体像、社内レイアウトなどについて、1日のスケジュールをかませながらご説明いただきたい」という求めがあった。

    会社側の弁護士は「社内においても投稿者であることはごく一部しか認識していない。他の従業員にもわかると漏洩される可能性がある」などと述べた。

    一方、両議員側は、会社側が従業員による投稿を把握した以降も、議員側に発信元が開示された直後の10月1日まで「Dappi」の活動が続いていたことなどを不審に捉えているといい、引き続き会社の関与があったと主張していく方針。次回期日は8月22日となった。