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立憲のネットメディア支援、幹事長「違法ではないが…」広告代理店を経由「迂回」との批判も寄付は否定

CLPは2020年3月からクラウドファンディングで運営資金をまかなえるようになるまでの間、立憲民主党から「番組制作費」の名目で広告代理店や制作会社を通じて約1500万円を受け取り、多い時には毎月20本以上の映像制作を行ったという。

SNSやYoutubeなどインターネット上で動画配信などの活動を続けている「Choose Life Project」(CLP)が一時、立憲民主党から「支援」として資金提供を受けていた問題。

約1500万円の資金は、新・旧立憲民主党の政治資金収支報告書に「動画制作費」「企画広報費」として記されていることがわかった。いずれも大手広告代理店に対する支払いとされている。

立憲・CLPの両者は、立憲による番組内容への関与や介入を否定。このため、制作された動画が報告書の記載通り、立憲の「広報」にあたると言えるのか疑問の声もあがっている。

専門家は「支援は『迂回寄付』にあたるのではないか。政治資金規正法の趣旨に反する記載だ」と批判。立憲の西村智奈美幹事長は「取引実態があるので、CLPへの寄付とするのは、むしろ実態と異なる」と反論している。

ホームページなどによると、Choose Life Projectは2016年から「テレビの報道番組や映画、ドキュメンタリーを制作している有志で始めたプロジェクト」。Twitterのフォロワー、Youtubeチャンネルの登録者数ともに、6万を超えている。

時の政権への批判や、貧困と社会保障の問題、外国人の人権問題などを重点的に扱う、いわゆるリベラルな内容が中心のメディアだ。理念として重視するのは「公共性」で、自らを「公共のメディア」と位置づけていた。

津田大介さんや小島慶子さんら出演者が1月5日に連名で発表した抗議文では、CLPは2020年春から約半年間、広告会社や制作会社を経由するかたちで立憲民主党から「番組制作費」として資金提供を受けていたことが「私たちの調査で確認された」とした。

これを受け、CLPの佐治洋・共同代表が声明を出して経緯を説明。2020年3月からクラウドファンディングで運営資金をまかなえるようになるまでの間、立憲民主党から「番組制作費」の名目で広告代理店や制作会社を通じて約1500万円を受け取り、多い時には毎月20本以上の映像制作を行ったという。

佐治氏は共同代表からの辞意を表明。今後、「本件の問題点を総括することを目的として、外部の専門家(弁護士や研究者など)に報告書の作成を依頼する」としている。CLPとしての番組制作や配信は当面休止するという。

一方、立憲民主党の福山哲郎・前幹事長も報道各社にコメントを発表。「フェイクニュースに対抗するメディアの理念に共感したため、広告代理店と制作会社を通じて番組制作を支援した」などと説明。立憲側の番組内容への関与については、双方ともに否定している。

政治資金収支報告書の記載は?

福山前幹事長側は1月8日、BuzzFeed Newsの取材に書面で回答した。回答によると、立憲の2020年の政治資金収支報告書に「動画制作費」「企画広報費」として記載されていた計1520万8270円が、CLPへの支援金に該当する。

この金額は、CLP側が声明で発表した「1500万円」と一致する。いずれも立憲と継続して取引のある大手広告代理店に対する支払いとされており、CLPやほかの企業の名前はない。


旧立憲民主党:447万5390円(動画制作費)563万7090円(企画広報費)

新立憲民主党:251万1420円(企画広報費)238万4370円(同)

(*2020年9月に立憲民主党は一度解散、国民民主党の議員らと合流し新党として再結成されているため、政治資金収支報告書は2つに分かれている)


なぜ、CLPの支援のためにわざわざ広告代理店と制作会社を経由させる必要があったのか。そしてなぜ、支援していたことを公表していなかったのか。BuzzFeed Newsの取材に対し、福山議員側は以下のように回答した。

「当方は、依頼を受けてChoose Life Projectを支援しましたが、支援を受けたChoose Life Project側が支援を受けた旨を公表するかどうかを判断するものです。公表するかどうかについても、当方は関与していません」

「なお、統括を行う広告代理店を通じて制作会社に制作依頼を行うことは商慣習であり、他の広報案件を含めて、広告代理店を通じて制作会社とやりとりをしています」

「また、『Choose Life Project という、フェイクニュースに対抗するメディアの理念に共感した』(2022年1月6日コメント)ために支援をしたものですので、ことさら支援した事実を公表する必要を認めません」

番組内容などへの関与については「出演要求、番組内容への言及はありません」と強調。党関係者らの出演に際し、謝礼などは受け取っていないと回答した。

広告代理店の回答は

一方、大手広告代理店の広報担当者は取材に、「本件に関わらず、取引内容の詳細については守秘義務があるのでお答えできません。取引先、今回であれば立憲民主党側に確認いただきたい」と前置きしつつ、以下のように回答した。

「弊社から制作会社に対して支払ってはいるのですが、制作会社からどちらに支払っているか、どういう風に使われているかという詳細はわかりません。党側がお話しされている通りなのだとは思いますが、こちらではわかりません」

つまり、立憲民主党から支払いを受け、同社は制作会社に支払いをしたが、CLPに渡ったかどうかまでは関知していない、ということだ。

ではなぜ、広告代理店や制作会社を経由しているにもかかわらず、約1500万円の支援金が、ほぼそのままCLPにわたっているのか? 代理店や制作会社は手数料などを徴収しなかったのか?

広報担当者は「この件に関してはわかりません」と述べた。

専門家は「迂回寄付」と批判

立憲民主党が広告代理店に「番組制作費」「企画広報費」を支払う形で、CLPを「支援」をしていたという今回の構図。

立憲側の主張する通り、番組内容への関与や介入がなかったとすると、業務の発注というよりも「見返りを求めない寄付」ということにならないのだろうか?

政治資金規正法上問題はないのか。政治資金に詳しい阪口徳雄弁護士(政治資金オンブズマン共同代表)は、こう指摘する。

「支払いが『支援』であり、大手広告代理店が本来の最終支出先ではないのであれば、いわばトンネル会社を通じた『迂回寄付』にあたるのではないでしょうか」

ただし、実際に代理店側に支払いがされている以上、規正法上の「虚偽記載」にあたるかは「難しい」とも指摘する。

「とはいえ、今回のような記載は政治資金の透明性を向上する目的がある規正法の趣旨に反します。CLPを支援していたのであれば、政治資金収支報告書に適当な費目を書くのではなく、しっかりと寄付先として記載すべき。政党資金には税金も投じられているのですから、有権者に対して説明責任を果たすべきでしょう」

一方、立憲の西村智奈美幹事長は1月12日の定例会見で、「違法ではないものの公党として適切ではなかった」と釈明。

「寄付にあたるのではないか」というBuzzFeed Newsの質問に対して、「弁護士にも確認したが、統括や支払い管理などを広告代理店でされており、動画制作費や企画広報費としての取引実態があるので、CLPへの寄付とするのはむしろ実態と異なってしまう」と回答。政治資金収支報告書の記載には問題がないとの認識を示した。

広告代理店に支払われた金額が、ほぼそのままCLP側に流れていることの妥当性についても尋ねたが、西村幹事長は「広告代理店以降の支払いについては、取引の内容に関わること」としてコメントしなかった。

BuzzFeed NewsはCLP側にも広告代理店や制作会社を経由した経緯や、政治資金のあり方に関する見解などを問い合わせている。回答があり次第、記事化する。