中国公船2隻が、九州北部で初めて領海に侵入。それでも抗議ができない理由とは

    両方とも、武器を搭載した巡視船の可能性があるという。

    7月15日正午前、中国海警局の船が、長崎県の対馬と福岡県の沖ノ島近辺の領海に初めて侵入した。

    第七管区海上保安本部によると、公船1隻は午前11時50分に対馬近海に侵入。巡視船からの呼びかけ後、30分後に領海を出た。

    しかし午後3時50分ごろには、先ほどの1隻に加え、もう1隻が沖ノ島近辺の領海に侵入。午後4時47分〜午後5時4分ごろまでの間、航行を続けた。

    毎日新聞によると、2隻とも武器を搭載した巡視船の可能性があるという。

    沖縄県の尖閣諸島沖では2012年ごろから領海侵入が相次いでおり、今年だけでもすでに18回起きている。ただ、九州北部への侵入は今回が初めてだ。

    「領海侵犯ではない」

    海上保安本部は今回の航行が「領海侵犯ではない」としている。なぜなのか。

    そもそも外国の船舶には、沿岸国の利益を害さない程度で、自由に通航することができる「無害通航権」がある。

    BuzzFeed Newsの取材に応じた第七管区海上保安本部の担当者は、「領海侵犯には当たらない」理由をこう説明する。

    「無害通航に当たらないという、確定的な情報が得られているわけではありません」

    国連海洋法条約では「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り」無害であるとされている。害を与える行為のたとえとして挙げられているのは、「武力による威嚇や武力行使」「兵器を用いる訓練や演習」「航空機の発着」「漁獲活動」などだ。

    海上保安本部によると、巡視船は無線で中国公船に「我が国の領海内における無害ではない通航は認められない」と呼びかけていた。ただ、実際に「害する行為」は認められなかった、ということだ。

    朝日新聞などによると、外務省は中国側に対し「関心の表明」を出した。航行の意図などを確認するもので、抗議ではないという。NHKによると、これも「日本の秩序や安全を脅かすものかどうか定かではない」ことが理由だ。