「コロナだけが感染症じゃない」マスク盗難が相次ぐ病院、看護師の嘆き

    病院内で起きているマスクや消毒薬の盗難。看護師がその現状を証言した。

    新型コロナウイルスの感染拡大で長引くマスクや消毒薬などの不足。最も必要とされる医療現場にも届かないなど、事態は深刻だ。

    そうしたなか、病院内では盗難も起きているという。いったい、どういうことなのか。看護師が証言した。

    「病室ごとに医療用の手袋や防護用エプロン、消毒、マスクを設置していましたが、盗難が相次いでいます」

    栃木県で看護師をしているというさくらさん(39)は、BuzzFeed Newsの公式LINE「バズおぴ」に病院の実情を寄せた。

    「マスクは箱ごと盗難され、手袋も箱ごと無くなり、消毒薬は持参の容器に詰め替えして持ち帰る面会者もいました。コロナウイルスも恐いけど、人間の方が恐いと思ったできごとでした」

    さくらさんの病院では衛生用品が不足している影響で、スタッフが利用できるマスクは1日1枚までとされている。1日もたせるために、ガーゼを挟んでガーゼだけ交換するなどの方法を取っているという。

    消毒薬も不足し、患者の処置毎の手指消毒ができなくなったことから、毎回ナースステーションに戻って手洗いをするため、仕事の効率も下がった。さらに、防護用エプロンや手袋も高価なものしか流通しなくなってきているため、経営への不安も募る。

    そうした中で、盗難が起きていることには驚きを禁じ得ないという。なかには病室ごとに置いていたものは、ナースステーションに集約するようになった。

    「医療業界でも在庫は底をついているのに、どう思って盗んでいくのだろうと……」

    大人たちに、いいたいこと

    さくらさんは「衛生材料がなければ、院内感染は防げません。コロナウイルスだけが感染症でないことに気づいてほしい」と言葉に力を込める。

    「病院には色々な疾患の方がいます。胃腸炎を起こすようなノロウイルス感染症、ロタウイルス。院内感染で有名なMRSA感染症、その他、インフルエンザ、HIV感染症、肝炎ウイルスなど、あげればキリがありません。そういった感染症患者の処置や汚物処理に防護品がなければ、私たちが媒介者となり院内感染を広げてしまうリスクがあります」

    「院内感染が起これば落ち着くまで病棟閉鎖ということになります。病棟閉鎖になれば新規の入院はしばらく受け入れられない状況になります。まして、多くは高齢者やハイリスクの方が入院しているので、その中で院内感染が起こればどうなるか想像がつくかと思います」

    新型コロナウイルスの感染者を受け入れる用意を常にしており、ただでさえ疲弊している現場。衛生材料の不足や盗難は、そうした状況にさらに追い討ちをかけるようなものだ。さくらさんは病院の利用者や面会者に、こう訴えかけた。

    「症状があっても普段の風邪くらいと思えるなら、病院に来ないで欲しい、なぜなら、病院の外来にはリスクの高い人がたくさんいるから。そして、衛生材料の適正利用をしてほしい。たとえば、マスクは病気で咳をしている人が着用するべきです。健康な人が通常つけるのに予防効果はありません」

    「また、医療用手袋を電車の吊り革をつかむために使ってほしくない。適正使用をしないから必要な所に届かないのです。病院もですが、在宅で厳重なケアが必要な人工呼吸器を付けた子どもをみているような場所にも届かなくなってしまうんです」

    さくらさんは「節度を守った行動ができてないのは大人の方だと思います。もっと大人が正しい知識と節度ある行動を取れるようになってほしい」と語った。

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