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「黒染め強要は人権侵害」池上彰さん、増田ユリヤさんが語るブラック校則の問題点

偏差値、道徳教育、ブラック校則。画一的な教育の問題点とは。

地毛が茶髪だった女子高生に対する「黒染め強要」の問題に端を発し、2017年末に注目された「ブラック校則」。そして、2018年度からまず小学校で「特別な教科」になる道徳教育。

双方の共通項は、多様性ではなく「同じもの」を求める画一的な日本の教育のあり方だ。その問題点とは、どこにあるのか。

BuzzFeed Newsは、「偏差値好きな 教育”後進国”ニッポン」(ポプラ新書)を出版したジャーナリストの池上彰さんと、増田ユリヤさんに話を聞いた。

髪の毛が生まれつき茶色いにも関わらず、教員から黒染めをするよう強要され、精神的苦痛を受けて不登校になったとして、大阪府立高校の女子高校生が、府に対して裁判を起こした。

これをきっかけに、議論が巻き起こった「黒染め強要」問題。同様の経験を受けたことがある人たちが声をあげ始めた。BuzzFeed Newsの取材にその辛い過去を吐露した女子高生もいる。

行き過ぎた校則を調査し、社会全体で見直そうと、NPOを中心にした「#ブラック校則 "をなくそう!プロジェクト」も立ち上がった。

池上さんは、この「黒染め強要」はそもそも「人権侵害」であると語る。

「『生まれつき黒ではない髪色を染めなければいけない』というのは人権侵害でしょう。あまりにも時代遅れだな、と思います。日本の子供たちだけが学ぶということが校則の大前提になっている」

「全員が真っ黒な髪の毛をしているなんてことは、世界の中ではとってもめずらしい、異様なことなんですよね。国際化すれば色々な国の人が来るにも関わらず、全員に黒を強制するのでしょうか」

増田さんも、同様の意見だ。

「自分自身もすごく厳しい女子校に通っていました。当時は学校が荒れており、色々な問題と校則がせめぎ合っていた時代でしたが、なぜ今の時代にそれが必要なのか、わかりません」

なぜ、このようなことが起きてしまうのだろうか。かつて高校教諭をしており、世界各国の教育現場を取材している増田さんは、こうも語る。

「教師たちが、自分と異質な人たちに慣れていないということなのでは。たとえばヨーロッパやアメリカだったら、肌の色も髪の色も違う人しかいないところでみんな生活しています。その価値を対比させるなんて、ありえないこと」

「ブラック校則」に悩むあなたへ

一方で、増田さんは「校則」にはある程度の抑止効果がある、とも話す。

「生徒たちを抑える歯止めになっている部分もあります。たくさんの子どもたちを見るうえで大変な部分、ある程度の枠をはめるということをしてきた結果が、極端に出るのが今回のような問題なのではないでしょうか」

「高校時代には茶髪は不良がやることかもしれない、みたいな価値観が抜けていない。きちっと染めていかないと、就職や進学の面接で落とされるかもしれない。危険は取り去ってやろうという『善意の親心』なのかもしれませんが、それはこれまでの価値観や『こうあるべきだ』という大人からの押し付けです」

その上で増田さんは、「生徒と教師がコミュニケーションをしながら、校則を作っていければ良いのではないでしょうか」とも語る。

一方の池上さんも、その意見に賛同しながら、「ブラック校則」に悩む子どもたちにこうアドバイスした。

「校則を自分たちで作っていくことができれば、ものすごく学習になりますよね。自分たちの主張をどう説得するか、実現するか、どのような文章表現にするか考える。生きた教育になるのではないでしょうか」

「そもそも学級や生徒会って、生徒たちがいろんなことを自主的に決め、要望をまとめて学校に伝えるという、自主自立の組織なんですよね。その原点にかえって、校則について自分たちで話し合っていくことから始めてみたらいかがでしょうか。たった一人で戦っても、潰されて終わりということもありそうですから」

「忖度できる子ども」への危機感

しかし、なぜ日本の教育は、全員が同じでないといけない「画一性」を求めるのか。池上さんの分析はこうだ。

「貧しかった日本がいち早くキャッチアップするために、教える内容から何から何まで画一にすることが効率が良かったのでしょう」

そのうえで、偏差値制度や教科書検定制度、行き過ぎた校則制度はもとより、2018年度から小学校で始まる検定教科書を使った道徳教育にも、同様の側面があるとの見方を示した。

「みんなが一斉に道徳の教科書を読むことで、『こういうことが求められている』とみんなが忖度するようになっていくのでは。結果として、忖度することができる子どもを養成することになるのではないか、と私は恐れていますね」

増田さんもやはり、道徳がひとつの「教科」になることに対し、こう危機感を表した。

「そもそも教えられるようなことなのでしょうか。こうあるべきなんだ、というその価値観を信じないといけないのでしょうか」

「基準の考え方を提供するのは大事ですが、上から押し付けるのは違うこと。同じ考え方をする人間しか、育たないのではないかと感じています」

*インタビューは2017年12月下旬に実施しました。


全国の学校にある理不尽な校則(ルール)を見直そうと、NPOを中心とした活動が始まっています。

BuzzFeed Newsでは「" #ブラック校則 "をなくそう!プロジェクト」始まる 署名すでに2万人、全国調査も実施という記事を配信しています。

署名活動はこちらから。