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「奥さんが働かなきゃいかんのか?」育休明けの男性社員を倉庫に… アシックスのパタハラ訴訟が和解

男性社員は、倉庫への配置転換などは、育休取得に対する不利益な扱い、嫌がらせであるパタハラにあたるとし、2019年6月に同社を提訴。パワハラ被害についても訴えており、損害賠償440万円などを求めていた。

スポーツ用品大手アシックスの男性社員(39)が育児休業を取得したところ、配置転換などの「パタニティ・ハラスメント」(パタハラ)などを受けたとして同社を訴えた裁判で、和解が成立した。

3月29日、男性側が取材に明らかにした。和解内容は公表されていない。同社が「今後も関係法令を踏まえて育児休業を取得しやすい職場環境の整備に努める」と表明したことを受けたものだという。

まず、経緯を振り返る

男性は、第一子の生まれた2015〜16年にかけて1年間、さらに第二子が生まれた2018〜19年の1年間と計2回、育児休業を取得していた。

原告代理人によると、2011年に関連会社での経験を買われ、転職。プロモーション部に配属されたが、2013年11月には人事部に配属され、社内研修などを担当した。この間、上司の不正を告発したことがある。

その後、2015年2月に1度目の育休を取得し、2016年6月に復帰したところ、子会社への出向を命じられ、物流倉庫で荷下ろしなどの業務につかされた。

これについて男性は弁護士を通じて「パタハラ」を訴え、本社人事部に配属されたが、提示されたのは男性の経験と無関係な社内規則の更新や英訳などの業務だった。なお、会社側は男性が業務に従わなかったと2度の懲戒処分を下している。

2018年3月には、2度目の育休を取得。19年4月に復帰後は、もともと提示されていた業務にあてられ、「干された」ままの状況が続いていた。

男性は、倉庫への配置転換などは、育休取得に対する不利益な扱い、嫌がらせであるパタハラにあたるとし、2019年6月に同社を提訴。パワハラ被害についても訴えており、損害賠償440万円などを求めていた。

「子育てのしやすい社会に」

答弁書によると、男性は育休を相談した上司に「奥さんが働かなきゃいかんのか?」と嫌味を言われたこともあったという。

一方のアシックス側は、男性が「協調性が乏しく問題があった」などと主張。パタハラやパワハラは否定していた。

男性側は支援団体の労働組合「首都圏青年ユニオン」とともに、以下のようにコメントを発表した。

原告は、被告勤務中に育児休業を取得し、男性でも子育てと職業生活を両立できることを目指していたが、それに関する困難があると原告は感じたことから、本件を提起した。

今般、原告は、被告が、今後も関係法令を踏まえて育児休業を取得しやすい職場環境の整備に努める旨を表明したことを受け、東京公務公共一般労働組合(首都圏青年ユニオン)には利害関係として参加してもらい、三者で和解を成立させることに至った。

原告及び組合は、今後も、男性も女性も、育児休業を取得しやすい職場作りのために尽力し、日本社会を子育てのしやすい社会にしていくよう尽力する。

厚生労働省の雇用均等基本調査で、2019年度の男性の育休取得率は7.48%。前年度の6.16%からわずかに上がり、過去最高となったとはいえ、まだ高い水準にあるとは言えない。

政府も少子化大綱で「2025年までに取得率30%」を目指しており、現在の育休とは別の枠組みで、子どもが生まれてから8週間以内に最大4週間取得できる「男性版産休制度」の創設する方針を決めている。また、夫婦が交互に育休を取得できるような仕組みづくりも目指している。

首都圏青年ユニオンの担当者は「世の中の認識が変わっているなかで、育児参加を希望する男性も増えており、これからもパタハラは増えていくはず。声をあげられていない人も多いと思うので、今後も相談に乗って、組合として手助けできればと思っている」と語った。

アシックスの広報担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「関係法令を踏まえて、育児休業を取得しやすい職場環境の整備に努めてまいります。子育てしやすい社会に向けて尽力していきます」とコメントした。


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