ドメスティック・バイオレンス(DV)や性暴力、虐待の被害にあった当事者たちが、声をあげ続けている年に1度のパレードがある。
今年で9回目になる「あるこうよ むらさきロード」だ。そうした被害を経験した「サバイバー」たちが自ら企画してきた。
「暴力は愛じゃない」。そんなメッセージを少しでも多くの人に伝える、「みんながお互いを尊重しあえる社会」を目指そうと、毎年続いている。
「私は、ひとりじゃない」と被害者たちに感じてもらい、救いの場をつくるという目的もある。
このパレードが「加害者から逃げ隠れてきた私たち暴力の被害者が、仲間とともに社会を変えようと訴えられる唯一の機会」だからだ。
11月5日、秋晴れの日曜日。多くの買い物客らが行き交う青山通りで開かれた今年のパレードには女性を中心に、幅広い年代の約100人が参加した。
参加者には、DVや性的虐待、レイプなどの被害者たちがいる。それぞれが仮装しているのは「加害者から身を隠す」必要があるから。
多くは紫色のものを身につけている。その由来は、女性に対する暴力根絶のシンボルである「パープルリボン」だ。
「どんなことがあっても、ぶつのは愛じゃない」「暴力はいやだ!」「お前のためだ、は愛じゃない」
参加者たちは通りを練り歩きながら、それぞれの思いを訴えた。
「家に行く・呼ぶ / 酒を飲む・酔う ≠ 性行為の同意」などという手書きのプラカードを持っている人たちの姿もあった。
初めての参加者も多い。
実の兄から寝ている間に身体を触られた経験を持つ女子大学生(20代)は、BuzzFeed Newsの取材にこう語る。
「いままで、身内には一切語ることができませんでした。参加するのには勇気が必要だったけれど、当事者として辛い経験を事実として伝えないといけないと、責任を感じて声をあげました」
「解放されたような気持ちになって、本当に参加してよかったと思えた。声をあげられない当事者たちには、声をあげていいんだよ、逃げていいんだよ、同じような人がいるんだよ、1人じゃないんだよと伝えたい」
一方、酔っ払った夫から何度も殴る、蹴るの暴力や暴言を受けてきたDV被害者の女性(40代)は「助けてもらった、という気持ちになれました」と語る。
介護中の義父に性的ないたずらを受けた経験もある。夫とは別居をしたが、心の病に悩まされている。カウンセリング先で、パレードの存在を知ったという。
「夫から暴言を受けているときは、私なんてミジンコ以下だと感じていた。きょう、参加して初めて、自分にも声をあげる権利があるんだ、人間なんだと思うことができたんです。そしてなにより、仲間たちがいるんだってことも」
パレードでひときわ目立つのぼり旗には、こんな言葉が書き込まれていた。
「私は私 ありのままでいい あなたはあなた ありのままでいい」
実行委員会代表の松元千枝さん(47)は、父親から母親への暴力を見て育った「面前DV」という児童虐待の当事者だ。パレードの意義について、こう語る。
「声をあげられない、外に出られない、そういう思いをずっと抱えている人たちが私たちの後ろに何百人、何千人といる。ここに来られる私たちが、そういう人たちの声を代弁していきたいと思っています」
10周年の来年は11月4日に開催する予定だ。すでに会議なども予定されているという。問い合わせは事務局(arukoumurasaki@yahoo.co.jp)まで。