日本政府と国連、日韓合意などめぐり発表に食い違い 安倍首相と事務総長の懇談、外務省に見解を聞いた

    日本のメディアは外務省の発表に基づいた記事を書いていましたが…

    慰安婦問題の日韓合意と「共謀罪」についての国連特別報告者をめぐり、安倍晋三首相とグテーレス国連事務総長の懇談内容について、国連と外務省の発表に食い違いが生じている。

    まず、慰安婦問題に関する日韓合意についてはこうだ。

    外務省の発表では、国連事務総長が合意に「賛意」と「歓迎」を示している、とされている。

    安倍総理から慰安婦問題に関する日韓合意につき,その実施の重要性を指摘したところ,先方は,同合意につき賛意を示すとともに,歓迎する旨述べました。

    一方、国連の発表を見ると、事務総長は合意内容について「彼自身の意見を述べてはいない」そうだ。

    「原則的にこの問題における具体的な解決策や本質は、二国間ではっきりさせるもの」ともしているが、その内容には言及していなかったという。

    The Secretary-General did not pronounce himself on the content of a specific agreement but on the principle that it is up to the two countries to define the nature and the content of the solution for this issue.

    また、「共謀罪」に関する特別報告者の扱いについても、ニュアンスが違う。

    特別報告者をめぐっては、日本政府に法案の危険性を指摘した書簡を送ったことに、政府が抗議する事態に発展していた。

    外務省の発表によると、事務総長は特別報告者の主張が「国連の総意を反映するものではない」と述べたという。

    先方は,人権理事会の特別報告者は,国連とは別の個人の資格で活動しており,その主張は,必ずしも国連の総意を反映するものではない旨述べました。

    一方、国連の発表では「特別報告者は人権理事会に直接報告をする独立した立場の専門家」としており、「総意ではない」とまで踏み込んでいない。

    Regarding the report of Special Rapporteurs, the Secretary-General told the Prime Minister that Special Rapporteurs are experts that are independent and report directly to the Human Rights Council.

    日本のメディアは外務省の発表に基づき、この会談内容を報じている。

    たとえば読売新聞(5月27日、電子版)はテロ準備罪懸念は『総意でない』…国連事務総長との見出しをとって、こう書いている。

    グテレス氏は日本の国会で審議中の組織犯罪処罰法改正案(テロ準備罪法案)を巡り、国連人権理事会の特別報告者が懸念を伝える書簡を首相に送ったことについて、「必ずしも国連の総意を反映するものではない」との見解を明らかにした。

    慰安婦問題については、「グテレス氏は合意への賛意を示した」としているが、ソースは明示されていない。

    朝日新聞(5月28日、電子版)も国連事務総長『総意でない』 『共謀罪』法案懸念の書簡と報じている。

    慰安婦問題には触れていないが、この記事には「日本政府の説明によると」とソースが明示されている。

    なぜ食い違いが生じるのか。菅義偉官房長官は5月29日の記者会見でこの点を問われたが、「事実については日本側の発表した通りです」と譲らなかった。

    BuzzFeed Newsでは、特別報告者と政府のやりとりを【共謀罪法案、衆院を通過 国連報告者は日本政府の抗議を「中身がない」と批判】にまとめています。