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「お金がないときこそ、子どもに金を使えば…」明石市長が国会で訴え、SNSで「泣きそう」と話題に。その“子ども支援策”とは

明石市は人口が9年続けて増え、出生率も2018年に1.70と、全国平均(同年)の1.42よりも高い。同市の目玉政策は所得制限なしに子育て世帯と子どもたちを支援するための「5つの無料化」だ。

子どもの数が過去最少の81万人となり、出生率も上がらない。このまま進めば「日本が存在しなくなる」という声もあがるほど少子化が止まらないなか、国にはどのような具体策が求められているのか。

子ども政策に注力し、出生率の改善と人口増加を達成しているという明石市の泉房穂市長が「こども家庭庁」に関する参考人として国会に呼ばれ、述べた内容がSNS上で90万回以上再生されるなど、話題を呼んでいる。

「とても熱い」「泣きそうになる」「政府には動いてほしい」「未来ある子どもに投資しないと」などの声も寄せられている。

いったい、どのようなことを語ったのか。

「日本は少子化の加速や、経済の停滞と言われておりますが、その原因のひとつは私たちの社会が子どもに冷たすぎるのではないかと思えてなりません。子どもを本気で応援すれば、人口減少の問題に歯止めをかけられますし、経済も良くなっていくと考えております」

2011年から同市の市長を務めている泉氏は、6月7日の参議院内閣委員会に「こども家庭庁」に関する参考人として呼ばれ、陳述の冒頭、そのように強調した。

明石市は人口が9年続けて増え、出生率も2018年に1.70と、全国平均(同年)の1.42よりも高い。

同市の目玉政策は「5つの無料化」。所得制限なしに(1)高校3年生までの医療科無料(2)第2子以降の保育料の完全無料化(3)1歳までおむつやミルクや子育て用品を毎月配送(4)中学校の給食費無料化(5)プールや博物館など公共施設の入場料無料化ーーを行っている。

このほか、子ども園や子ども食堂や病児保育の整備、児童相談所の強化と運用改善、子ども担当部署の「3倍以上」の増員などにも注力。コロナ禍における給付型の奨学金制度や、ひとり親をめぐる給付の上乗せ、各種学校における生理用品の設置、少人数学級化などの施策も進めているという。

「自慢できることではありません。世界でのグローバルスタンダードが、日本だけやっていない施策ばかりなんです。これらの施策を、ぜひ国でもやっていただきたいと思います」

そう訴えた泉市長がなかでも強調したのは、子育て関連給付の「所得制限」をめぐる問題だ。同市では一切の所得制限を設けていないという。10万円給付や児童手当における制限は、働く親を中心にか判の声が相次いであがっていた。

「全ての子どもたちへの支援をお願いしたい。ひとつ制限をしたら予算は減ります。少ないお金で来ます。でも効果は薄いです。そうではなくて、所得制限をしない方がむしろ出生率も上がり、経済も良くなるんです。お金はかかりますけど、より効果が大きいんです。大事なのはせこいお金じゃなくて、思い切った本気の支援策だと思えてなりません」

「子どもの未来は私たち自身の未来」

こうした施策を続けるなかで、明石市では、結果として市民の住みやすさなどが向上し、人口減が下げ止まって9年連続の過去最高を更新。出生率も上昇しているという。

泉市長は子ども政策が結果として地域経済の活性化につながり、税収増や借金返済など、行政の財政健全化に結びついたとして、改めてこう訴えた。

「お金がないからせこいことするんじゃなくて、お金がないときこそ子どもに金を使うんです。そうすると地域経済が回り始めて、お金が回り始める。明石では子どものみならず、高齢者、障害者、犯罪被害者やLGBTQ+についても全国初の施策が展開できております。お金ができてきたので、子どもだけじゃなくて、みんなに優しいまちがつくれたということだと理解をしております」

「こういったことをするには、まずは発想の転換が必要です。子どもを応援するのは子どものためだけではありません。私も含めたみんなのための施策という発想の転換が一番大事だと思えてなりません。そして組織の連携、予算の倍増、人の育成、地域の協力も必要です」

そのうえで、国でも「こども家庭庁」で関係省庁の連携強化を進めるとともに、人材育成や予算の増強、国と地方の「横の連携」や財源が必要であると強調。こう訴えた。

「全ての子どもたちを、町のみんなで本気で応援すれば、町のみんなが幸せになる。本気で子どもの応援をするんです。そのことがまさに国民みんなのためだということが、大変重要だと思っています」

「子どもを応援すれば、みんな幸せなんです。子どもや子どもの親だけじゃなく、お年を召した方も、幅広いみんなにとって、私たちの社会にとっていいことなんだという発想の転換をぜひお願いしたい。子どもの未来は私たち自身の未来であり、子どもの未来は日本社会の未来だと、本気で考えております」