「娘の死を無駄にしたくない」交通事故の遺族たちが、大臣に伝えた願い【全文】

    面会したのは、関東交通犯罪遺族の会「あいの会」のメンバーら6人。事故が起きた際の第三者委員会による原因究明の制度化や、医師の診断を必要とする高齢者限定運転免許の導入などを求めている。

    高齢者などによる交通事故で家族を亡くした遺族らが11月20日、赤羽一嘉国土交通大臣に面会し、同様の事故の再発を防ぐための要望書を提出した。

    面会したのは、関東交通犯罪遺族の会「あいの会」のメンバーら6人。事故が起きた際の第三者委員会による原因究明の制度化や、医師の診断を必要とする高齢者限定運転免許の導入などを求めている。

    会見詳報:「娘の死を無駄にしたくない」交通事故の遺族たちが大臣に直接、訴えたこと

    この日手渡された要望書では、以下の3人が「被害者遺族となってしまった経験を振り返り、切実に感じた内容」をまとめている。

    ▽今年4月、東京・池袋で80代の男性が運転する車の暴走で妻と3歳の娘を失った松永さん(写真左から3人目)

    ▽2015年、80歳の男性が運転する車の事故で15歳の娘を失った稲垣智恵美さん(写真左から2人目)

    ▽2010年、青信号の横断歩道を渡っていた妻をタンクローリーにはねられて失った中村正文さん(写真左)

    事故から7ヶ月が経って

    松永さんは要望書で以下のように思いを綴っている。

    愛する二人を同時に失った絶望の中で、これ以上二人のような犠牲者を出したくない、自分のようなつらい思いを誰にもしてほしくないという思いから、二人の告別式の後に記者会見も開き、真菜と莉子が一緒に写っている写真も報道機関に公開しました。


    写真公開によって、ハンドルを握るすべての人に、交通事故というものの悲惨さを現実的に感じてもらい、高齢で認知能力が衰えている人も含め、危険な状態での運転を思いとどまってもらいたいと考えたからでした。公開した写真は、二人が大好きでよく行っていた南池袋公園で撮った、もう写真でしか見ることのできない笑顔にあふれた1枚でした。


    しかし事故から7ヶ月が経って、人の意識改善だけでは悲惨な交通事故を減らすことは難しいという現実も痛感しました。法整備や交通環境改善、自動車の技術進歩も必要だと知りました。


    今回、貴省に要望書を提出したいと思った理由は、罪のない人々が突然命を奪われない社会の実現のためには、貴省の発信する安全対策、法案、各レポートなどの情報やメッセージが不可欠で、それらを通じて多くの人の理解が進んでいくと考えたからです。

    松永さんは大臣に、以下のように地方の公共交通機関の拡充やMasS(*Mobility as a Serviceの略、カーシェアリングなど乗り物のサービス化)の早期実現を訴えたという。


    4月に妻と娘が犠牲となった事故の後、免許返納者数が増加したという報道を見ました。しかし地方の高齢者は車がなくては生きていけません。地方の公共交通機関の拡充を是非を推し進めて頂きたいことと、MasSの出来るだけ早い実現をお願いしたいです。

    未だに妻と娘の無残な姿が脳裏から離れません。交通事故は本当に悲惨です。この辛さを知ってしまったからこそ一日あたり約8人が交通事故で死亡しているという現実がとても悔しいです。日本のどこかで、毎日同じような辛い思いをしている人が出ているということに胸が苦しくなります。

    9月に国交通省の職員の方々と意見交換をさせて頂き、交通事故に対してとても熱心に向き合い、取り組んでくださっていることを知りました。今後、同じ思いをする人が少しでも少なくなるよう、引き続きよろしくお願いいたします


    尊い命が奪われ続けている

    稲垣さんは、要望書で「聖菜の事故から4年近く経った今も、高齢者による事故は相次ぎ、何の落ち度もない尊い命が奪われ続けていることをとても悔しく感じています」とその胸中を吐露した。

    そのうえで、国が推進をすすめる「サポカー」(*衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時の加速抑制装置などが装備されている車)について、「それだけでは事故を100%防ぐことができるわけではない」という点を強調し、以下のような言葉を赤羽大臣に伝えたという。


    4年前、高齢運転者の暴走により最愛の娘を亡くしました。


    母親にとって愛しみ、産み育てた、分身のような我が子の命を突然奪われた哀しみは、言葉にしがたく、辛い4年間でした。

    親として、子どもを守れなかったこと、制度が整っていれば奪われずに済んだ命であったことを何度も後悔し、自責の念にかられました。娘の死を無駄にしたくない、高齢ドライバーによる、重大事故のない社会にしたいという、切実な思いをお伝えすべく、この場に、立たせて頂きました。

    事故から4年経っても未だ充分な対策ができておらず、高齢ドライバーの事故は増え続けています。

    先月、高齢者向けに限定免許制度を視野にサポカーの市場導入を加速化する措置を検討する指示が出されました。

    新制度による事故削減は期待するところですが、サポカーの認知度が高まる一方で、機能面に対しては全体の約半数、装置が作動しない場面の注意点については1/4の認知しかされていないという調査結果が出ています。

    経済産業省、警察庁のWEBサイトには、「先進安全技術は、あくまでも安全運転の支援であり、条件によって作動しない場合が、あります。機能を正しくご理解頂くとともに、ドライバーが、常に安全運転を心がけて下さい」とありますが、このような認識は、世間にまだ浸透しておらず、高齢ドライバーがサポカーを過信し、運転を継続してしまう恐れがあります。

    サポカーでは全ての事故は防げない。発生した事故の際、運転者の責任回避の理由にはならない。こういった事実を十分に世間に浸透させることが必要です。

    広告には機能制限の内容がしっかり伝わる表示基準の設定、条件により作動されず事故が起きた際の責任はドライバーにある旨の警告文の規定、警告文をタバコのように広告の30%以上の面積を使って表示、購入時には機能に関する確認書類の作成と事故の際の責任に関する同意書の義務付け、エンジン起動時カーナビ等への警告文の表示等、モラルハザードの危険を回避する具体策を早急に打ち出す事が、不可欠です。

    ドライバーの選択とサポカーの推進では、高齢ドライバーの事故は防げません。限定免許導入に向け、75歳以上の高齢ドライバーに定期的な認知機能検査と運転に必要な身体機能の検査を行い、実際に事故削減に繋がる連携した法改正である事が重要です。

    人身事故0への目標のスタート地点にある、今、道中も犠牲者を減らす事を目的とし、国民の命を守るための政策、発展で、あり続けるよう切にお願い致します。


    ドライブレコーダーの義務化を

    中村さんは自身の妻が巻き込まれた事故に触れ、ドライブレコーダーの義務化によって、事故の原因分析や対策にも繋がっていくと伝えたという。


    軽傷から死亡事故まで多種多様な交通事故の対応を限られた人員と時間で警察で対応するには限界があります。目撃情報の看板を設置し情報提供を求める事と比較し、DR(ドライブレコーダー)があれば事故の状況は一目瞭然となります。

    昨今のあおり運転被害等でDRも徐々に普及していますが、駐車場の車両を見てもまだごく一部です。バス、タクシー等旅客車両はかなり普及していますが、ひとたび事故が起きれば重大事故につながるトラック運送事業では、まだ半数にも届かない程度と聞いております。

    現状の事故情報の統計では、数字だけのデーターになり、原因分析までには繋がりません。DRの情報があれば、具体的に原因分析ができ、対策も実施できます。2016年に起きた軽井沢バス転落事故により、安全、安心な貸切バス運行をするため「貸切バスに対するDRの装着義務付けについて」迅速に対応していただきました。

    安全、安心な車社会実現のためにも、貸切バスに留まらず、段階的に適用範囲を広げ、事業用車両への設置義務化、メーカへのDR標準装備の指導等、迅速な対応をお願いいたします。



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