靖国神社と千鳥ヶ淵で1つの質問を参拝者にしたら、こんな答えが返ってきた。

    コロナ禍の8月15日、マスク姿の参拝者たちが手を合わせた。

    8月15日、75回目の終戦の日。「英霊」をまつる東京都千代田区の靖国神社と、その近くに設けられた「無名戦没者の墓」である千鳥ヶ淵戦没者墓苑には、マスク姿の参拝者たちが手を合わせた。

    コロナ禍のこの日、何を思い、人々は参拝に訪れたのか。BuzzFeed Newsは、それぞれの場所で1つの質問をした。

    靖国神社と千鳥ヶ淵戦没者墓苑は、互いに近い場所にあるが、人々の考えの違いもあり、両方に行く人もいれば、あえてどちらか一方の参拝しかしないという人もいる。まずは、それぞれがどんな場所とされるのか紹介する。

    靖国神社とは

    靖国神社は、明治維新以降、「国のために命を捧げた」246万柱以上とされる軍人や軍属らを「英霊」としてまつる。

    かつては国の管理下にあったが、戦後、国の手を離れて宗教法人となった。1978年には東条英機元首相ら「A級戦犯」を合祀した。

    政治家による靖国参拝は、毎年、注目される。靖国神社を巡っては、「過去の戦争を肯定している」という批判や、閣僚らの参拝には、政教分離の観点から問題があるといった指摘がある。

    一方で、靖国にまつられることを信じて戦死した「英霊」に祈りを捧げないのはおかしい、との主張もあり、絶えない議論がされているからだ。

    今年は、小泉進次郎環境相や萩生田光一文部科学相、衛藤晟一沖縄北方相、高市早苗総務相の閣僚4人が参拝し、報道各社が取り上げた。終戦の日に現職の閣僚が参拝するのは、4年ぶりだった。

    また、安倍晋三首相は中国や韓国から強い反発を受けた2013年12月の参拝後、靖国参拝していない。朝日新聞によると、今年は「自民党総裁 安倍晋三」の名で玉串料を納めたという。

    千鳥ヶ淵戦没者墓苑とは

    千鳥ヶ淵戦没者墓苑は、そんな靖国神社のすぐ近くにある。

    靖国神社からわずか800メートルしか離れておらず、政府が1959年に設置した。環境省が管理している。

    ここでは、海外から持ち帰られたものの、身元が判明せず、遺族の元に戻ることができなかった遺骨が主に納められている。

    軍人、軍属、民間人の遺骨37万69柱(2019年5月27日現在)が眠り、第二次世界大戦で亡くなった全戦没者の慰霊追悼のための「聖苑」とされている。

    2013年には、来日したケリー元米国務長官とヘーゲル元国防長官が、ケネディ元駐日大使とともに千鳥ヶ淵を訪問した。

    このことから、アメリカはこちらを国の追悼施設として捉えているとわかる。

    靖国参拝を見送った安倍首相は今年、政府主催の「全国戦没者追悼式」に出席前にこちらに参拝し、献花。その後、衛藤沖縄北方相も参拝する姿があった。

    そんな2カ所で、BuzzFeed Newsは尋ねた。

    「コロナ禍であっても、参拝したのはなぜですか?」

    <靖国神社>

    「日本の事を知りたかった」

    「コロナ禍で旅行ができないので、日本のことを知っておこうと、初めて参拝に来ました。75年間、平和で良かったと思っています。次の75年間も、『平和でお願いします』と祈りました」

    <19歳の男子大学生、埼玉県>

    「若い命を弔うため」

    「『国に帰りたい』と思いながら散っていった若い人たちのことを思うと、涙が出ます。コロナ禍であろうとも、絶対手を合わせなくちゃいけないと思って、今年もきました。10年以上前から参拝を続けているので、自分が倒れるまで参拝しようと思っています」

    <76歳の女性、東京都>

    「平和への感謝」

    「コロナ禍でどこかに出かけることもできなかったので、初めて来ました。娘はまだ小さく、戦争のことも知らないので、身近にあるこうした場所を通じて、しっかりと戦争について伝えようと思っています。国を護るために亡くなった人たちに感謝をするとともに、平和について考えたいです」

    <46歳の男性会社員>

    <千鳥ヶ淵戦没者墓苑>

    「平和を願って」

    「10年以上前から終戦の日は毎年、亡くなった夫と一緒に靖国神社と千鳥ヶ淵を参拝していました。特に千鳥ヶ淵は、国のために命を失った人たちのお骨があるところ。平和を願いました」

    <70歳の女性、東京都>

    「日本のためご先祖様に感謝」

    「日本のために戦ったご先祖様に感謝をしたくて参拝しました。日本人としては大切な一日ですから、来るべきだなと思って初めて訪れました。毎年お盆は三重に帰省していたのだけれども、今年は帰ることもできなかったので、戦争について興味があったこともあり、靖国と千鳥ヶ淵を参拝しました」

    <20歳の男子大学生、東京都>

    「無関心ではいられなかった」

    「以前から戦争の歴史に興味があり、戦争で亡くなられた方のことを思うと、無関心ではいられないと、初めて靖国神社と千鳥ヶ淵を訪れました。靖国では2時間並んで参拝し、こんなに人がいるんだと驚きました」

    <31歳と27歳のカップル、横浜市>