安田さんは映像で、銃を持った2人の男の前に跪き、オレンジ色の服を着ている姿だった。
そして「私の名前はウマルです。韓国人です」「とても酷い環境にいます。今すぐ助けてください」と日本語で語った。さらに「今日は2018年7月25日」と日付を述べていた。
誰もが疑問に思ったはずだ。裏の事情があるかもしれない。ただ、この映像をもとに、安田さんについてインターネット上では、「韓国人」「在日だ」などと決めつける発言が現在でも続いている。
安田さんと親交があり、自らもアフガニスタンで2010年、5ヶ月にわたり拘束された経験があるジャーナリストの常岡浩介さん。映像が出た当時、真意をはかりかね、BuzzFeed Newsに語っていた。
「彼は、イラクにはこだわりがあるが、韓国に特に興味がある人ではない。だから最初は、何者かがいたずらでつくった映像かと思った」
明かした理由
「ウマル」あるいは「オマル」は、スンニ派のイスラム教徒男性に多い名前だ。
NHKによると、安田さんは解放後、トルコから日本に向かう機内でこう語ったという。
「拘束中に、事情があってイスラム教に改宗しなければならず、そこで自分で『ウマル』というのを選んでいた。彼らが設定したルールに従って言った」
また、「韓国人です」と述べた理由はこうだという。
「日本人であることとか、私の実名を言うと、ほかの囚人がきいて、もし彼らが解放された場合、私の監禁場所を知っているので、例えば日本側に通報するとか、ほかの組織に通報するとかしたら、ばれてしまう」
「だから、実名を言うとか、日本人とか言うのは禁止されていたんです」
一方、朝日新聞に対しても「自分の本名や日本人であることは言うなと(犯行グループに)要求された。他の囚人(監禁被害者)が釈放された後に、監禁場所が世間にばれたら攻撃されるかもしれないからだ」と答えたという。
イスラム教に改宗しなければならず、自ら選んだ名前が「ウマル」。そして、監禁場所の特定を避けるため、本来の国籍や本名を口にしてはいけなかった。だから、「私の名前はウマルです。韓国人です」と話したそうだ。
25日夜帰国予定
安田さんは、トルコ南部からイスタンブールに向かう機内で体調について尋ねられると、「大丈夫です。大変お騒がせして申し訳ないと思っています」と語ったうえで、いまの心境を「非常にうれしいです」と述べた。
3年4カ月間にわたる拘束生活では約8カ月間、高さ1.5メートル、幅1メートルの独房に監禁され、「虐待状態がずっと続いていた。精神的な負担もかなりあった」。
独房には常に見張り役がおり、物音を立ててはならず、「指を動かして関節がなったらダメ。寝ている間に体が動いてもダメ」などと過酷な環境だったと説明した。
日本時間の10月25日午後7時ごろ、トルコ・イスタンブールから成田空港に到着する予定だ。