平昌オリンピックの開会式。上半身にココナツオイルを塗り、圧巻の肉体美を見せて歩いた一人の選手がいた。民族衣装のスカートを履き、手に持つ国旗を大きく振った。
氷点下の寒さの中、会場は沸いた。
南太平洋に浮かぶ島国・トンガのピタ・タウファトファ選手。2月16日、クロスカントリー男子15キロフリーに挑み、結果は114位だった。
3年前まで雪を見たことがなかったというタウファトファ選手が、スキー板を初めて履いたのはなんと昨年1月だった。
元々はテコンドーの選手で、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、道着を身にまとって世界の舞台に立った。当時の開会式でも旗手を務め、その出で立ちから注目を集めた。
今大会、トンガから出るのは、タウファトファ選手のみ。たった一人、国の威信を賭けて戦った。
15キロを滑りきり、結果は参加した119人中114位。
「新たな扉を開きたかった。誰かを次の五輪へと駆り立てたい」と事前に語っていた意気込み通りの力強い滑りだった。
東京オリンピックに出場する意欲もあるという。現在、タウファトファ選手は34歳。何事にも「諦めないこと」がモットーだ。