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職場でのハラスメントに悩むLGBT当事者たちの告白 「SOGIハラ」を知ってほしい

「無意識に当事者を傷つけているケースが多いです」

あなたの何気ない言動がゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダーら、LGBTの人たちを傷つけているかもしれない。

職場でのハラスメントについて考えるパネルディスカッションが5月3日、都内で開かれた。テーマは「SOGIハラ(ソジハラ)」。LGBTの当事者や支援団体が、ハラスメントを受けた実体験や、その防止策を語り合った。

SOGIハラ(ソジハラ)とは?

自分が、どんな性別の相手を恋愛対象とするか、自分自身をどんな性別だと認識するかをあわせて「Sexual Orientation and Gender Identity(SOGI)」という。

「SOGIハラ」は、SOGIに関連して、差別やいじめ、暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせを受けることだ。

「体どうなってるの?」

LGBTの就活生を支援する特定NPO法人「ReBit」代表の藥師(やくし)実芳さんが、就活中に受けたSOGIハラ体験を告白した。

藥師さんは「性同一性障害なんです。戸籍上は女性ですが、男性として働きたいです。もう男性として生活しています」と公言して、就活をしていた。

ある企業では「性同一性障害のことはよくわからないので」とすぐに帰された。別の企業では「体どうなっているんですか?」「子ども産めるんですか?」などと仕事と関係ないことを聞かれ、嫌な思いをした。

藥師さんのもとには、これまでに「エントリーシートへの性別の記入にとまどった」「男性用のスーツの着用に嫌な思いをした」といった相談も寄せられているという。

「同期にオネエと呼ばれた」

ある企業に入社して1ヶ月が経った新入社員のAさん。黒い仮面を付けているのは、職場にゲイだと知られたくないからだ。

Aさんは、入社後の研修中の懇親会で同期から「オネエじゃないの?」と言われ、その後「オネエ」と呼ばれるようになった。

同僚からの「彼女いるの?」という質問にも戸惑う。

理解者が多かった大学時代とは異なり、「同僚に説明をするのが大変。誤解を招くかもしれない」と、職場ではカミングアウトできないでいる。


ほかにも来場者からは、信用した同僚にだけトランスジェンダーだとカミングアウトしたところ、社内の多くの人にそれを広められてしまった、といった証言もあった。

企業はどう対策すればいいのか?

「企業は利益を優先するが、働く人の幸福感がなければ利益は循環しません。多様性を尊重し、安心して会社での生活を送れることを第一にしています」

そう語るのは、Yahoo! JAPANのクリエイター人財戦略室長の斎藤由希子さんだ。

Yahoo! JAPANでは、採用担当者向けの研修で、LGBTの人たちからカミングアウトをされた時の対応を教えている。

「理解不足が原因で、無意識に当事者を傷つけているケースが多いです。同僚とは毎日会うし、時には上下関係もあるので、(被害者は)声を上げられません」

企業がSOGIハラを防ぐには

LGBTの研究をしている高岡法科大学の谷口洋幸教授は、こう指摘する。

「SOGIハラについて、法律や指針で明記されていないことは、大きな問題です」

国家公務員の就業規則では2017年1月、SOGIについて「偏見に基づく言動」を懲戒処分の対象にすると明記された。

だが、企業についてはまだ、国の指針がない。

SOGIハラの事例を集め、法整備を目指す

支援団体はこの日、SOGIハラの体験談を募集するサイトをオープンした。

集まった体験談をもとにレポートを作成し、国に提出するなどして法整備につなげたい考えだ。

LGBTの人たちは職場にもいるし、就活生にもいる。そして、被害をなくすため、SOGIハラで苦しんでいる人がいることをまずは知ってほしい。当事者たちは、そう願っている。


BuzzFeed Japanは、4月26日より5月9日まで「LGBTウィーク」として、LGBTに焦点をあてた記事やコンテンツを集中的に発信します。

13人に1人は、セクシャル・マイノリティ。これは株式会社電通が2015年、成人約70,000人を対象に調査した結果です。LGBTをはじめとする性の多様性は、そのまま社会の多様性へとつながります。私たちは今回の特集を通じて、多様性をポジティブにとらえる機会を提供したいと考えています。

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