伊藤詩織さん、控訴の構え 杉田水脈議員との裁判、判決後の「率直な気持ち」

    伊藤詩織さんが、杉田水脈衆院議員を相手取り、損害賠償を求めた訴訟。請求棄却を言い渡した東京地裁判決を受け、伊藤さん側が記者会見を開き、控訴する考えを示した。

    ジャーナリストの伊藤詩織さんが、杉田水脈衆院議員(自民、比例中国ブロック)に自身を誹謗中傷する内容が記された複数のTwitter投稿に「いいね」を押されたことで精神的苦痛を受けたなどとして、220万円の損害賠償を求めた訴訟。

    伊藤さんは、請求棄却の敗訴となった3月25日の東京地裁判決を受けて同日夕、記者会見し、控訴する考えを示した。

    判決などによると、杉田議員は2018年、Twitterで伊藤さんを中傷する内容の数多くのツイートに「いいね」 を押した。伊藤さん側は、杉田議員がこの行為で中傷的なツイートに好感を示した、と主張してきた。

    訴状に記された杉田議員が「いいね」を押したツイートに、例えば以下のものがある。

    「枕営業の失敗ですよね。結婚している男性と2人で飲みに行かないもんね」

    「彼女がハニートラップを仕掛けて、結果が伴わなかったから被害者として考え変えて、そこにマスコミがつけこんだ!」

    判決では、Twitter上の「いいね」は、対象ツイートに対する何らかの好意的・肯定的な感情を示すために行われることが多く、これを目にする者もそのようなものと受け止めることが多いとした。

    しかし、ブックマークや備忘といった、好意的感情を示す以外の目的で用いられることもあるし、仮に感情を示すものとして用いられたとしても、「感情の対象や程度を特定できず、非常に抽象的、多義的な表現行為にとどまる」とした。

    このため、「いいね」を押すことが原則として「社会通念上許される限度を超える違法な行為と評価できないというべき」などとし、伊藤さん側の請求を棄却した。

    伊藤さんは記者会見で「裁判所がセカンドレイプを許しているような気持ちになった」と語った。

    「法律をつくっていく国会議員が個人攻撃を助長するような環境を作ったことに恐怖を感じていた」

    「このような『いいね』が許されるのであれば、個人の尊厳を傷つけてしまう。声をあげたいと考える誰かを沈黙させてしまう結果につながると懸念しています。裁判所には、(杉田議員のいいねによって)どういったことが起きて、どんな影響がもたらされたのか、全体的に見てほしかったというのが率直な気持ちです」

    裁判所が挙げた「特段の事情」

    伊藤さん側の代理人である佃克彦弁護士は、「甚だ遺憾な結論だ」と語った。

    判決では、「いいね」が違法だと評価される可能性がある「特段の事情」を3点挙げた。

    ・好意的、肯定的な感情の対象および程度を特定できる場合

    ・侮辱行為と評価することができる場合

    ・加害の意図をもって執拗に繰り返される場合

    そして、杉田議員による「いいね」は、これらの特段の事情として「認められない」と結論づけた。

    伊藤さん側によると、杉田議員は、伊藤さんやその応援者に否定的なツイートを100件以上「いいね」したという。

    今回の裁判では、そのうち25件を選んで裁判所に示した。

    佃弁護士は、「加害の意図をもって執拗に繰り返される場合」とする特段の事情に触れ、「これで執拗と言えないのであれば、どれほどあれば執拗とされるのか。答えは闇の中の話で、甚だ遺憾である」と意見した。

    この日、杉田議員は出廷しなかった。同議員事務所はBuzzFeed Newsの取材に「妥当な判決だと受け止めております」とコメントした。

    <サムネイル:Takashi Aoyama / Getty Images>