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翁長知事の遺志を引き継ぐ 「辺野古新基地NO!」と叫んだ沖縄県民たち

新基地建設断念を求める、オール沖縄による「県民大会」で、何が語られたのか。

沖縄県の米海兵隊・普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画を巡り、新基地建設断念を求める「県民大会」が8月11日、那覇市であった。

政府は、辺野古沖の土砂投入を17日に開始すると県にすでに通知。その前に反対を示す狙いがあった。

大会に出席予定だった翁長雄志知事が8日に死去したことを受け、出席者や参加者からは「遺志を受け継ぐ」との言葉が聞かれた。

「辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議」主催で、大会冒頭、翁長知事の死を悼み、1分間の黙祷が捧げられた。

そして、次男で那覇市議の雄治さんが登壇。生前、翁長知事が家族に語った言葉を伝えたが、言葉につまり、涙ぐむ場面もあった。

「みなさまのご期待に添えるように、最後まで頑張りましたが……残念な結果となりました。申し訳ございませんでした」

かつて辺野古移設に賛成だった翁長知事

翁長知事はかつて自民党の県連幹事長を務めるなどし、辺野古移設に賛成の立場だった。

しかし、沖縄の過重な基地負担への批判を強め、「辺野古を認めれば、今後100年置かれる基地の建設に加担することになる」と、2014年の知事選に出馬。移設反対を訴えた。

辺野古沖の埋め立て承認をした仲井眞弘多・前知事に約10万票の差をつけ破り、県のトップになった。

「最後の最後まで...」

国との対立を深める中で、県は、再三の行政指導に沖縄防衛局が従わないことを問題視。そして、翁長知事は7月27日、その埋め立て承認を撤回すると表明した。

これが県民に見せた最後の姿となったが、病室では最後まで新基地を建設させまいと、取り組んでいたという。

「最後の最後まで、どうやったらこの辺野古新基地を止められるのか、一生懸命病室のベットの上でも資料を読みながら、頑張っておりました」

翁長知事が息子に語った言葉

「父は生前、『沖縄は試練の連続だ。しかし、一度もウチナーンチュとしての誇りを捨てることなく戦い続けて来た。ウチナーンチュが心を一つにして戦うときには、お前が想像するよりも、はるかに大きな力になる』となんどもなんども、言われてきました」

「最後まで、みなさま諦めずに、頑張って、見届けることはできませんでしたが、父に、翁長雄志に、辺野古新基地が止められたという報告ができるように、みなさま、がんばりましょう」

椅子に置かれた青色の帽子

大会のテーマカラーはブルー。参加者の多くが、服やタオルなど青色のものを身につけ、会場を染めた。

壇上には翁長知事の席が用意され、椅子の上には着用予定だった青色の帽子が置かれた。

時折、激しい雨が会場に降り注いだ。

主催者代表挨拶として、高良鉄美・共同代表は「今日の空は、翁長知事の死を悼み、悲しんで泣いているかのようです。しかし、それだけではなく、怒りも含んでいると感じていると思います」と語りかけた。

8月17日にはじまる予定の辺野古沖への土砂投入に触れ、海を「どれだけ痛めつけるのでしょうか」と訴えた。

「大地も泣いています。沖縄戦からずっとこの大地が削られ、傷を負ってきた。まだ同じことをやるんですか」

民意が無視されていると主張

さらに、政府に民意が無視され続けていると指摘。翁長知事がよく話していたという言葉を紹介した。

うちなーんちゅ、うしぇーてー、ないびらんどー

3年前の県民大会でも口にしており、<沖縄人をないがしろにしてはいけませんよ>を意味する。

「まるで制裁を加えるかのような新基地建設の強行に、私たちは黙っているような人間ではありません。がんばりましょう」

翁長知事の職務代行者は現在、謝花喜一郎副知事が務め、マイクの前に代わりに立った。

「(知事の)まさに命を削り、辺野古新基地建設反対を貫き通した姿勢は、末長く後世まで語り継がれるものと思います」

「翁長知事は『政府はなりふり構わず埋め立て工事の既成事実をつくろうと躍起になっており、県民の諦め感、無力感を誘おうとしているが、県民の権利を守り、新基地の危険を子や孫に背負わせないため、ここで諦めるわけにはいかない』と言っておられました」

翁長知事「沖縄だと心は痛まない」

県民は、土砂投入を前に新基地建設の賛否を問う県民投票を実現するために動いた。

7月末に、2ヶ月間の署名活動で、約10万筆以上集まった、と市民団体が発表。直接請求に必要となる有権者の50分の1(約2万3千筆)を大幅に超えており、県民投票の実施のため、条例が制定される見通しとなっている。

翁長知事は昨年12月、BuzzFeed Newsの単独インタビューにこう語っていた。

「基地移設のために、十和田湖や松島湾、琵琶湖が埋め立てられたら、全国はおそらく怒りで震えるでしょう。しかし、沖縄だとそうはなりません。辺野古の大浦湾が埋め立てられても、無関心な人たちの心は痛まない」

主催者側は、建設計画を白紙撤回すべき理由を次のように挙げる。

  1. 新基地の建設に伴う土砂の投入で、希少なサンゴ類やジュゴン、ウミガメが生息する海草藻場が破壊されること。
  2. 地域の学校や集落について、アメリカが安全基準として定める高さ制限を超えていること。
  3. 大浦湾側に活断層の存在が疑われ、その周辺に軟弱地盤があること。

大会では「建設計画を断念すべきである」とする決議が、参加者たちの拍手をもって採択。

最後に、全員で手をつなぎ連帯を示し、「がんばろー!」コールを叫んだ。

再び国と県が法廷闘争をするのか

2015年、翁長知事は、仲井前知事の埋め立て承認には瑕疵(かし)があったとして承認を「取り消し」たが、翌年に最高裁で県側が敗訴している。

一方、今回の「撤回」表明は、前知事の承認時には違法ではなかったものの、それ以降、地盤の軟弱さや、環境保全策が不十分といった問題が明らかになったとしてしたものだ。

知事の職務代理者は、謝花喜一郎副知事が8月12日まで、富川盛武副知事が13日から務めると決定している。両副知事は撤回に踏み切るとみられる。そうなれば、工事は一時中断され、再び国と県が法廷闘争をする公算が大きい。

9月に前倒しとなった知事選でも、辺野古移設の問題が大きな争点になるだろう。

菅義偉官房長官は、「普天間飛行場の危険除去、固定化を避ける、抑止力の維持、そうした中で地元の市長、県知事が決定していただき、閣議決定した」と話し、移設工事を引き続き進める考えを示している

県民大会を終え、参加した那覇市の主婦(56)はとBuzzFeed Newsに話した。

「翁長知事の遺志を尊重し、県が承認の撤回をすることを期待したい。基地の押し付けはやめてほしい。もういらない」