戦争への思いを深めてこられた天皇のお言葉の変遷 平成最後の戦没者追悼式

    天皇陛下と皇后さまは最後の出席となる。昭和天皇から追悼式への出席を引き継ぐと、天皇陛下は毎年欠かさすことなく出席し、お言葉を述べられてきた。

    終戦から73年を迎えた8月15日、政府主催の全国戦没者追悼式が東京都の日本武道館で開かれる。

    平成最後の式典。来年4月末に退位を控えた天皇陛下と皇后さまにとっても最後の出席となる。

    天皇陛下は1989年の即位。昭和天皇から追悼式への出席を引き継ぐと、毎年欠かさすことなく出席し、お言葉を述べられてきた。

    お言葉には、必ず同じ表現が使われる部分と、年々変化してきた部分がある。

    これまでのお言葉

    平成を通じて、天皇陛下が必ず使われたお言葉がある。

    「さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い」という部分だ。昨年は「深い悲しみを新たにいたします」と続けられた。

    そして、「終戦以来、国民のたゆみない努力により、日本の平和と繁栄が築き上げられてきた」ことへの感慨が語られてきた。

    一方で、年によって表現の変化も現れている。

    1992年のお言葉では「その遺族を思い」に続き、「つきることのない悲しみを覚えます」という表現を使われた。

    また、「日本の平和と繁栄」に続く部分でも「感慨は今なお尽きることがありません」というお言葉が、2001年に加わった。その前年は「深い感慨を禁じ得ません」という表現だった。


    「反省」のお言葉を用いられたのは、2015年から。天皇陛下は、昨年まで3年連続で「深い反省とともに」と加え、こう語られた。

    「戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」

    作家の半藤一利さんは日本経済新聞で、お言葉の変遷について「戦争について知れば知るほど、その結果に対する思いが深まったということだろう。陛下は自ら歴史を学び、国内外の激戦地に足を運ばれてきた。戦争の悲惨さや無残さ、非人間性に対する反省がおありなのだと思う」と語っている。

    昨年のお言葉は以下の通り。

    "本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。

    終戦以来既に72年、国民のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨は今なお尽きることがありません。

    ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対して、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。"

    全国戦没者追悼式は、天皇、皇后両陛下や安倍晋三首相、遺族ら計約7千人が参列。日中戦争と太平洋戦争で犠牲となった約310万人の冥福を祈るとともに、平和への誓いを新たにする。

    式典は午前11時51分から約1時間。正午には1分間の黙とうをする。

    天皇陛下は、最後の式典でどのようなお言葉を述べられるのか。来年には総裁選を控え、次期国会で憲法改正案を提出すると掲げる安倍首相は、式辞で何を語るのか。

    2015年、自身の誕生日を前に、天皇陛下は戦争の記憶の風化を危惧。次のように語りかけた

    「年々、戦争を知らない世代が増加していきますが、先の戦争のことを十分に知り、考えを深めていくことが日本の将来にとって極めて大切なことと思います」

    アップデート

    一部、表現を加えました。