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【神宮外苑火災1ヶ月】建築家が若者にメッセージ「危ない、無理だからと制作を止めないで」

普段の危機管理意識は…

東京都新宿区のイベント会場で、木製のジャングルジムのような展示物が燃えて、5歳の幼稚園児の男の子が死亡した事故から1ヶ月が経った。展示物の中で照明として使われた白熱投光器により、木くずが出火したとみられている。

明治神宮外苑で開催中のイベントで燃える木製のジャングルジム=6日午後、東京都新宿区[目撃者提供]、時事通信

イベントは「TOKYO DESIGN WEEK2016」で、11月6日午後に起きた。展示物の中で遊んでいた港区の幼稚園児の男の子(5歳)が死亡し、助けようとした父親と40代の男性がやけどを負った。

出火した木製の作品「素の家」は、埼玉県の日本工業大学工学部の学生有志のグループが制作、出展した。中には、木くずが詰められていた。

そして、LED電球と白熱投光器を点灯し、作品を内部から照らしていたところ、火災が発生した。投光器は、大学の備品で、もともとは夜間の設置作業のために持ち込んでいたものだった。点灯すれば高温になり、近くにあるものが燃える可能性がある。

学生は「(投光器で)燃えるとは思っていなかった」と話しているという。

事故が起き、学生やイベント主催者の危機管理意識や体制に批判が集まった。

遊具をデザインする専門家は、普段どう意識しているのか。BuzzFeed Newsは、建築家の遠藤幹子さんに話を聞いた。

火災があったデザインウィークのブース付近=午後5時16分、参加者撮影 提供写真

今回の事故をどう捉えているのか。

「学生たちは、素人なのです。素人の作品を監督する主催者や学校側がどれだけ危機管理意識を持っていたのか、とても気になります」

遠藤さんは、公共施設に置かれる遊具のデザインなどを手がけている。自分が教えていた学生たちが、TOKYO DESIGN WEEKに出展した経験もある。

「学生はどうしても目立ちたい、という誘惑に駆られてしまうものです。作品が危ないかどうかを考える前に、目立ちたくなり、注意力が散漫になります」

「デザインウィークのような一般公募でのイベントは、安全のチェックが甘くなりがちだと思います。出品者のチェックが甘いならば、その場を与えた大人が、しっかりと作品の管理・監督をすべきだったのでは、と思います」

安全に関する国のガイドラインがある。

時事通信

「依頼を受けて遊具を展示する場合、デザインを始めるときから主催者や運営責任者、施工者などの関係者と安全を守るために話し合いをするんです。監視体制や消化器の位置まで確認し、必要に応じて配置人数を増やしもします」

安全の基準は、全て関係者だけで決めるわけではない。国は、遊具の安全に関するガイドラインを規定し、参考にされている。

国土交通省は2014年、公園に設置する遊具に関するガイドラインを改定した。今年6月には、経済産業省がショッピングセンターなど商業施設内の遊具に関するガイドラインを策定している。

「アーティストは、非日常的な体験を子供たちにさせて驚かせたいという思いを持っています。けれど、安全の確保は何よりも大切なので、関係者と話し合い、ガイドラインに沿うようにデザインを調整しています。ガイドラインに載っていない危険要素をなくすことも大切です」

事故をする恐れのない遊具であるべきか。

「『リスク』と『ハザード』という考え方があるんです。なんでもかんでも安全で、全ての危険要素を排除するのは、子どもにとって良くありません」

国交省のガイドラインには、こうある。

子どもは、遊びを通して冒険や挑戦をし、心身の能力を高めていくものであり、それは遊びの価値のひとつであるが、冒険や挑戦には危険性も内在している。子どもの遊びにおける安全確保に当たっては、子どもの遊びに内在する危険性が遊びの価値のひとつでもあることから、事故の回避能力を育む危険性あるいは子どもが判断可能な危険性であるリスクと、事故につながる危険性あるいは子どもが判断不可能な危険性であるハザードとに区分するものとする。

遊具が絶対に事故の起きないものであれば、子供たちは何が危険で、どうすれば怪我をするのかの判断が養われない、というのだ。そのため、子どもの成長に必要なリスクは残し、命の危険や体に障害をもたらす事故につながる恐れのあるハザードは取り除くよう努めている。

「どうすれば危ないぞ、死ぬぞというのを知るための学習のために、ヒヤッとするリスクは必要なのです。危機感を養わないと、いつか重大な事故を起こしかません」

「一方で、ハザードは、なにがなんでも大人が阻止し、排除しなければいけないんです。捻挫や擦り傷は必要な怪我として受け入れ、致命傷につながる事故を防ぐよう徹底しなくてはいけません」

リスクとハザードを見分けるには。

時事通信

「1つの作品に、15〜30分は話し合わないと、危険に気づけません。多くの分野の専門家が集まり、さまざまな側面から時間をかけて話し合うべきなんです」

TOKYO DESIGN WEEKを主催した川崎健二社長は、事前に学生が提出した書類で展示物の構造は確認していた。だが、照明と素材の位置関係などの詳細は、書類にはなかったとして、こう述べている。

「作品にとがった部分がないかや、高さなどは確認しているが、全部で600点ある作品の一つ一つを詳しくチェックするのは困難だった。アート作品なので、主催者側からデザインについて、いろいろ注文をするのも難しい」

「危ないから、無理だから、と制作を止めるべきではない」

時事通信

火災を受け、学生が制作した作品が展示されることへの批判もあった。アート作品に関わる全国の学生たちの制作意欲を萎縮させるのでは、という不安視もある。

遠藤さんは、若者にこう呼びかける。

「非現実的な夢を追求することは、人類にとって非常に大事です。危ないから、無理だから、と制作を止めるのはしてほしくありません。どうやったらできるかを考えるべきではないでしょうか」

学生が持つ可能性を諦めることなく、大人を巻き込んで議論し、一つ一つ壁を乗り越えるべきだという。

「大いに創造力を働かせて夢のものを作ってほしい。私はそういう気持ちで仕事をしています」

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kensuke Seyaに連絡する メールアドレス:kensuke.seya@buzzfeed.com.

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