子どもに豆腐ともやししか食べさせられない、年収50万円ない家庭も。最貧困層の「限界」

    「みんな困っているけれど、もっと大変な状況にいる人が追い詰められている」

    コロナ禍で経済的に困窮する子育て世帯が急増しているのを受け、「コロナで困窮する子どもたちを救おう!プロジェクト」が、署名活動を始めた。

    立ち上げたのは子どもの貧困や、ひとり親世帯の支援に取り組む複数の団体で、「当事者たちはもう限界です」と訴える。

    ひとり親世帯と同程度に苦しむふたり親世帯もあるといい、プロジェクトでは、家族構成に関係なく3月中に給付金を支給するよう求めている。

    プロジェクトに参加するNPO法人「キッズドア」の理事長・渡辺由美子さんは、BuzzFeed Newsに語る。

    「今お金がなく、大変な状況にあります。『子どもに豆腐ともやししか食べさせられない』『子どもが5人いて、文具を買うお金がない』と苦しみ、『1日1食になった』という親もいます」

    保護者たちからは日々、こんな声が寄せられているという。

    ・失業保険の給付も終わり、経済的にはますます困窮。食事も親は1日1回に慣れ、子どものおかずも日に日に減っていく。

    ・自粛期間中出費が増えましたが、逆に私はパートに行けず収入が減り夫の会社も仕事が極端に減りました。支払いが滞り首が回らない状況になり、どうしたら良いのかわからず死んでしまおうかと思ったほどでした。

    ・収入が大幅に減り、光熱費、携帯代、学校関係のお金、全ての物がきちんと払えず、クレジットカードも利用停止になりました。

    少なくとも住民税非課税世帯に支援を

    政府は昨年、児童扶養手当を受け取るひとり親世帯を対象に「臨時特別給付金」を2度にわたり支給した。

    同じく発起人である子どもの貧困対策センター公益財団法人「あすのば」の代表理事・小河光治さんは、 「ひとり親世帯の命綱になるような給付金だった」と評価し、再び給付金を求める理由を説明する。

    「3月と4月は、子育て世帯の支出が一番多い時期です。卒業や新入学、進級のためにお金がかかります。いつも大変だけれど、今年は去年よりも厳しい状況にあるんです。だから、3月中に支援されるよう求めたい」

    プロジェクトは政府に対し、ひとり親世帯、ふたり親世帯に関わらず、経済的に困窮する子育て世帯に5万円、子どもが2人以上いれば1人あたり3万円を加算した給付金を支給するよう求めている。

    署名を集め、少なくとも最貧困層である子どもがいる住民税非課税世帯に支援が届くよう政府に訴えていく。

    ひとり親世帯とふたり親世帯で支援制度の格差

    上記の2人と同じくプロジェクトに名を連ねる、教育行政に詳しい日本大学の末冨芳教授は「ひとり親世帯とふたり親世帯の困窮度が同じあっても、使える支援制度に格差が出てしまっている」と指摘する。

    「ものすごい厳しいゾーンだと、ふたり親世帯であっても年収が50万円ない家庭もごろごろいます。ひとり親だと児童扶養手当や臨時給付金があるけれど、ふたり親になると支援制度が使えなくなり、一層追い詰められている状況にあります」

    コロナ禍が2年目に入り、経済的に苦しいひとり親世帯は臨時特別給付金を受け取れたとはいえ、なお厳しい状況にある。

    そして、苦しいのは、両親がいる世帯であっても同じだ。離婚前などの実質的なひとり親世帯も支援が受けられないケースが多い。

    そのため、末冨教授は今回はふたり親世帯も給付金の対象としてほしいと考えている。

    署名は2月5日に始め、1500筆以上が集まっている(同月8日現在)。1万筆を目標に据え、菅義偉首相宛で提出する予定だ。

    小河さんは、困窮する保護者や子どもが「命の危機にある」とし、「みんな困っているけれど、もっと大変な状況にいる人が追い詰められている」と話す。

    「それぞれなんとか生き抜いてきたといった感じです。この署名活動を突破口として、児童扶養手当がひとり親だけでなく、困窮しているふたり親世帯にも回るように動きたいとも思っています」

    「他の子どもたちと違った思いをしてほしくありません。どんな子も、おいしいご飯を思い切り食べて、必要なものをきちんと揃え、辛い思いをせずにみんな笑顔で新年度を迎えてもらいたいんです。命の危機を免れるために、署名というエールを送ってほしいです」