朝日から産経まで全紙が批判した米朝会談 社説で各紙が指摘したことは

    「画期的と言うには程遠い薄弱な内容だった」

    史上初の米朝首脳会談を、日本の新聞各紙はどう報じたか。BuzzFeed Newsは各紙の社説を比較した。

    読売新聞

    読売新聞は北の核放棄実現へ交渉続けよ 『和平』ムード先行を警戒したいとの社説を掲載した。

    首脳同士の信頼関係を築き、緊張緩和は進んだものの、非核化において前進はなかったとして「評価と批判が相半ばする結果」と慎重な見方。

    「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」へのプロセスが示されなかったため、抽象的な合意にとどまったのは「残念」とし、正恩氏が「核を手放す決断を下したかどうかは、不透明だと言わざるを得ない」と指摘した。

    また、2002年の日朝平壌宣言で、日本が国交正常化後の経済協力を明記していたことに触れ、「核・ミサイルと拉致の包括的解決が前提条件」と強調した。

    朝日新聞

    非核化への重大な責任と見出しを打った朝日新聞は手厳しかった。

    「2人が交わした合意は画期的と言うには程遠い薄弱な内容だった」と批判的に捉え、朝鮮半島の平和に向けて、「失敗に終われば、回復困難な禍根を将来にわたって残すだろう」と指摘した。

    トランプ氏への批判もある。CVIDなどを文書に明記できなかった理由を、トランプ氏が「時間がなかった」と言い、速やかに動くと正恩氏の行動に期待を表明したことに「軽々しさには驚かされるとともに深い不安を覚える」とつづった。

    日本政府に対しても注文をつけた。

    「米国との関係に寄りかかるだけの受け身の姿勢から脱し」「積極的に構想する外交力が問われている」と記し、「日本は中韓ロとの連携を深め、建設的な関与を探らねばならない」と提言した。

    日経新聞

    日経新聞は米朝が真に新たな歴史を刻むにはとの見出しで、「真に新たな歴史を刻んだとみなすのはまだ早い」と論じた。

    両首脳が対話によって核問題解決への意思を示した点は「歓迎したい」と評価。しかし、「北朝鮮はあくまでも段階的な非核化措置に応じて、制裁緩和などを得る構えだ」と指摘し、米国が体制保証を余儀なくされたことについて、こう書いた。

    「今秋の米中間選挙を控え、目先の成果を焦るトランプ政権の前のめりな姿勢を、北朝鮮が巧みに利用したといえなくもない」

    そのため、北朝鮮の完全非核化に向け、国際社会が結束して強い制裁圧力を堅持すべきだとの考えを示した。

    日本に対しては、経済支援が「数少ないカードだ」と述べ、「政府は拉致、核、ミサイルの包括的な解決をめざす立場を堅持しつつ、早晩めぐっていくる機会を逃さずに最大限生かすべきだ」と記した。

    毎日新聞

    史上初の米朝首脳会談 後戻りさせない転換点にと見出しにしたのは、毎日新聞。「まさしく歴史的な瞬間だった」が書き出しだ。

    トランプ氏と正恩氏が初対面した場面を描写し、「映画でも見る様な光景である」「数カ月前までは戦争の瀬戸際と言われた米朝の『雪解け』は前向きにとらえたい」と評価した。

    ただし、合意文書は「固い約束のようだが、懸念は残る」と見る。

    北朝鮮が「非核化を実行する保証がどこにあるのか」「合意内容がいつの間にか後戻りしないか不安になるのだ」と警戒した。

    また、「『政治ショー』の色彩がつきまとった」と指摘し、「成否は今後の推移で判断するしかない。焦点はもちろん、北朝鮮が速やかに核廃棄に着手するかどうか、である」と締めた。

    産経新聞

    不完全な合意を危惧する 真の核放棄につながるのかと題し、「大きな成果を得られないまま終わった」と強く批判した。

    合意文書は不十分で、北朝鮮が所有するすべての大量破壊兵器と弾道ミサイルについて「完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄(CVID)」が必要なのに、明文化が「できなかった」と指摘した。

    さらに、CVIDを明記しなかった点をトランプ氏が「時間がなかった」と答えたのに対しても、「言い訳」「交渉能力を疑われよう」と強く責めた。

    一方で、トランプ氏が北朝鮮の体制保証を約束し、国交正常化への意欲を示したことに「前のめりだ」と批判。北朝鮮が「在韓米軍の撤退を要求し、自国の非核化を遅らせる口実にさえなり得る」と危惧し、こう求めた。

    「拉致と核・ミサイルの問題が包括的に解決しない限り、日本からの支援はあり得ない。その点を安倍首相もはっきりさせておくべきである」


    BuzzFeed Newsでは、”米朝会談を大批判する海外メディア 「軍事演習中止はプレゼント」「トランプらしい」”という記事も配信しています。