誰かの何気ない言葉によって、あなたの大切な人たちが苦しむ場合があります。
それは、1対1のコミュニケーションの時であっても、集団で会話をしている時であっても、あり得るものです。
例えば、こんな言葉があります。
「人を好きにならないなんておかしいよ」
「いい男と出会ったことないだけだから心配ないよ」
「まさかオカマじゃないよね?」
これらの言葉を聞いたことはないでしょうか?気軽に発せられた言葉に、深く傷つく人がいます。
とりわけLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の当事者たちがそれに当たります。一般的に、次のような人です。
レズビアン=こころの性が女性で、好きになる性が女性である人。女性同性愛者。
ゲイ=こころの性が男性で、好きになる性が男性である人。男性同性愛者。
バイセクシュアル=好きになる性が、男性と女性のどちらでもある人。両性愛者。
トランスジェンダー=広い意味で、出生時の性とは異なるこころの性、もしくは表現する性を持つ人。
自身の周囲には必ず当事者がいる
家族や友人、職場の同僚には、当事者はいないから、自分には関係ない。そう思うかもしれません。しかし、そうではない可能性は大いにあります。
というのも、日本のLGBTの割合は、人口の約8%だと言われています(電通、博報堂、日本労働組合連行総連合会のそれぞれの調査より)。つまり、約1000万人にのぼるというのです。
そうは言っても、友だちから当事者だと告白されたことはないかもしれません。
その理由を、LGBTダイバーシティ採用広報サイト「JobRainbow(ジョブレインボー)」は、「差別や偏見を恐れて言い出せない当事者が多いからであって、(当事者が)少ないわけではない」と言います。
だからこそ、「自身の周囲には必ず当事者がいる」との心構えでいた方が良い。家族や友人、知人、職場の同僚など、日頃から会う大切な人たちが、当事者ではないと断言できないからです。
質問であっても言葉の暴力に
気をつけておくべき言葉は、まだまだたくさんあります。その一部を紹介します。
「男女どちらもいけるなら、遊び人なんでしょ?」
「女なの?男じゃないの?」
「(異性との)結婚はまだなの?」
「異性を好きにならないのはおかしい」
「女の子が男の子の格好をするのはおかしい」
「男は、結婚して一人前だからな!」
「○○さんって美人だからモテるんじゃない?彼氏はいないの?」
これらの言葉の一部は、発する側にとっては、相手がどういう人なのかを決めつける意図はなく、善意で語っているものもあるかもしれません。
それでも、些細な言動によって、傷つく人もいるのが事実です。質問であってもそうです。
先出のジョブレインボーによると、大切なのは、人の見た目やふるまいだけでは、その人のことは何もわからないという意識です。
そして、「からだの性」「こころの性」「ふるまう性」「好きになる性」の4つからなるセクシュアリティを決めつけてはいけないことも重要だといいます。
なぜ当事者たちに配慮して日常生活を送った方が良いと思うのか。ジョブレインボーの社長で、ゲイであると公言している星賢人さんは、BuzzFeed Newsにこう指摘します。
「まだまだ日本では、男性らしさや、女性らしさなど『らしさ』を人に押し付ける風潮が残ります。でも、それに違和感を覚える、LGBTではない人も増えています」
誰もが加害者にも被害者にもなり得る
星さんが問題視するのは「マイクロアグレッション」です。直訳して「微細な攻撃」。人による無意識な発言の一つ一つは、受け手も周囲の人も些細なものと思うかもしれない。しかし、それが積み重なることで、受け手には大きな負担になるといいます。
「蚊は、1回刺されたくらいでは、本人も周囲も大したことはないと考えるかもしれません。でも、無数に刺されたらどうでしょうか?微細な攻撃が、気づかぬうちに積み重なり、人の心を傷つけ、精神疾患にもつながる可能性があるのです」
「LGBTの当事者を含めて誰しもが、加害者にも被害者にもなり得ます。私はそうなってほしくないし、私もたくさん失敗してきました。だからこそ、普段から意識するべきです。『いろんな人がいるんだ』『人のセクシュアリティには、グラデーションがあるんだ』と認識することが、全ての人が自分らしく生きること、互いに気持ち良く過ごせることに結び付くと思っています」