日本テレビが、人気バラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」(「イッテQ!」)の企画「世界で⼀番盛り上がるのは何祭り?」で紹介した、海外の2つの「祭り」について「やらせ疑惑」が報じられていた問題。
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が7月5日、以下の見解を発表した。
程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があったと言わざるを得ないと判断した。
「やらせ疑惑」は2018年11月、週刊文春が報じた。
2018年5月20日放送の番組でラオスの「橋祭り」を紹介し、タレントの宮川大輔氏が参加したが、文春は記事内で「そんな祭りは存在しない」と「やらせ疑惑」を指摘した。
さらに、2017年2月12日に放送されたタイの「カリフラワー祭り」について、同様の疑惑を報道した。
日本テレビは報道を受け、公式見解をHP上で発表し、この会場においては初開催だったことを認めたが、「やらせ疑惑」を否定。「誤解を招く表現」があったとのコメントを出した。
その後、「カリフラワー祭り」についての文春の続報を受け、日テレは一部の「祭り」において、開催実績や開催経緯などの説明に誤りがあったことを認めた。
日テレの大久保好男社長は記者会見で「疑念を生じさせた」と謝罪し、企画の「当面休止」と発表した。
会見後に初めて放送された番組では、番組冒頭に謝罪テロップを表示され、番組の継続とともに、企画については「当面休止」を告知していた。
放送倫理違反と結論付けた理由
問題となった2つの「祭り企画」の制作過程を検証し、意見書を公表したBPOはこの日、記者会見を開いた。
日テレから提出された2つの「祭り企画」の映像や報告書の検討、日本テレビのプロデューサーや総合演出、現地コーディネーターら計12人への聴き取り調査を実施してきたという。
その結果、番組の制作スタッフが「祭り」を意図的に作り上げたわけではないが、どちらの「祭り」も現地のコーディネーターが、現地の人々を動員して、他の国や地域で行われている行事(「自転車一本橋渡り」や「野菜収穫競争」)を元に、番組のために用意したものと認定した。
具体的には、次の分析結果が出たという。
(1)「祭り」は番組のために用意されたものであったが、制作スタッフはそのことを把握していなかった。
(2)視聴者の「了解」の範囲を見誤り、ナレーションによって地元に根差した「祭り」への体当たり挑戦と思わせた。
(3)挑戦の舞台である「祭り」そのものへの関心が希薄化し、安易なナレーションを生んだ。
これについて、2つの問題を指摘したうえで、放送倫理違反と結論付けた理由を記した。
(1)現地コーディネーターによる、2つの「祭り」のリサーチからロケの実施までの過程を、制作スタッフがほとんど把握していなかったこと。
(2)用意した「祭り」
であることを隠蔽する意図はなかったものの、このコーナーが始まったかなり初期の段階から、それぞれの「祭り」について十分な確認をしないままに「年に一度の」「前年王者」「今年も優勝の呼び声高い強豪」などと、実際とは異なるナレーションやスーパーをかぶせていたこと。
制作過程の重要な部分を制作者側が把握していなかった点で、その過程が適正に保たれていなかったと言うべきであり、ナレーションとスーパーで出演者がもともとある祭りに参加しているように視聴者を誘導した点で、多くの視聴者が番組に求める約束に反したものだったと言われても仕方がない。
3社間に「構造的な問題はない」
会見での発表によると、2つの「祭り」に関与していたのは、タイのコーディネート会社の社長を務める70代の日本人男性だったという。
この男性は、日テレではなく、番組の制作会社と契約。制作会社のアシスタントディレクターとやりとりをしていたという。
ただし、BPOは、日テレと制作会社、コーディネート会社との間に、「構造的な問題はない」との考えを示した。
「番組は多くの制作会社が関わり、たくさんのコーナーを組み合わせてできあがっている。制作したコーナーを放送しない、という選択も実際にされています」
「『祭り』を無理矢理にでも何か作っちゃえというようなものではないようでした」
ただし、日テレに対して、こう意見を述べた。
「日本テレビの放送した責任は局で、倫理上問題があると指摘されているのだから、放送した責任は日本テレビにあります」
意見書では、「おわりに」として、こう番組への期待を綴った。
「祭り企画」について日本テレビは、視聴者に自信を持って提供できる態勢を整え
たのち再開したい意志があると聞く。再開の折には、視聴者はより敏感な目を持って
画面の前に座るだろう。その視線を取り込み、さらにはその視線にツッコミを入れる
くらいに完成度の高い「祭り」に出会えることを期待する。
日テレ「今後の番組制作にいかす」
BPOによる報告書を受け、日テレはHPに「本日のBPOの意見を真摯に受け止め、今後の番組制作にいかしてまいります」とするコメントを発表した。